
ブティックと称されるバイクメーカー、つまり少量生産で工芸品かのようなバイクを作るメーカーが少なからず存在することはご承知の通り。アストンマーティンとのコラボで話題となったブラフ・スーペリアや、フランスでハーレーのエンジンを使ったアビントンなど、いずれも個性的でバイクの魅力を至高の域まで高めているようです。そんなブティックメーカーの中でも、アメリカのコンフェデレートは頭ひとつどころか1ダースほどずば抜けたメイクスに違いありません。もはや「最速の芸術品」とも呼ばれる同社の作品をご紹介しましょう。
●文:ヤングマシン編集部(石橋 寛) ●写真:Curtis Motorcycles
ブランド名は「南北戦争」に由来
1991年、成功を収めた弁護士、マシュー・チェンバースが興したバイクメーカー、コンフェデレート。
和訳すると「南軍」を意味する社名は、創業地がルイジアナ州バトンルージュという南北戦争の激戦地だったことに由来する模様。
すると、チェンバースは悪名高き人種差別主義者かと思われがちですが、そうした他意は全くないとのこと。
実際、コンフェデレートの顧客リストにはブラッド・ピットやトム・クルーズといったリベラルで知られるハリウッド俳優たちが名を連ねているほど。
彼らこそ、ネガティブなイメージを極度に嫌いますから、妙な思想信条はないと断言できるでしょう。
最初にコンフェデレートを名乗ったバイクは1994年に完成し、さるコレクターの手に渡ったとされています。
南北戦争の南軍という穏やかならない社名のコンフェデレート。現在はカーチス・モーターサイクルへと名称変更されています。
初のシリーズモデル:G1ヘルキャット
以後、ほとんどワンオフに近いモデルを数台作った後、1999年にシリーズモデルとなるG1ヘルキャットを発売。Vツインエンジンをフレームの担体として設計され、カーボンホイールやアルミ切削パーツなど金に糸目をつけないマシンに仕上がっています。
ほぼ1台ごとに仕様が異なるコンフェデレートですが、ヘルキャットの基本的な仕様はS&Sとの共同開発による45度Vツインは131ci(2147cc)の排気量から145bhpという最大出力が公表されています。
エンジンの上部に背骨のように配置された7インチ径のフレーム内部がガソリンタンク(約15L)となり、スイングアームのピボットはギアボックスの出力シャフトと同心円に配置。
また、フロントフォークはマルゾッキ、リヤショックはペンスキー、ISR製6ポッドキャリパーなど、採用パーツのクオリティにも抜かりがありません。
最初のシリーズモデルとなったヘルキャット。航空宇宙級のアルミ無垢材から切り出されたパーツやカーボンホイールなど金に糸目をつけない仕上がり。
ハーレーのチューナー、S&Sと共同開発した45度Vツイン2147ccの排気量から145bhpを叩き出すというなかなかのじゃじゃ馬っぷり。
ヘルキャットの第2世代はシートの後端をチョップして、よりアグレッシブなスタイルに。お値段は600万円からスタートとのことだった。
“亡霊”の名の通り禍々しいスタイル:レイス
次いで、1999年には第2弾となるレイスのプロトタイプを発表。しかしながら、コンフェデレートが経営難に陥ってしまったため、発売は2003年まで待たされることに。
それでも、ヘルキャットに対して軽量化、より極端なリーンアングル、優れた前後の重量配分、そして低重心を実現したとされ、より過激なモデルとなっての登場でした。
エンジンはより進化して2軸バランサーを装備、1967ccの排気量、後軸出力125bhpとされています。
ひときわ目を引くフロントサスペンションはBMWのテレレバーにインスパイアされたものでしょうか、カーボンのアームは軽量化にも貢献しているとのこと。実際、車重は186kgと2リッタークラスのマシンとしてはありえないほどの軽さを実現しています。
また、レイスの燃料タンクは驚いたことにエンジンの下に吊るされて低重心をアピール。通常のタンク位置に通る背骨のようなフレームはオイルタンクを兼ねる設計となりました。
新車価格は5万~6万ドル(当時のレートなら約600~720万円)で、富裕層向けカタログ雑誌「ロブ・レポート」の表紙を飾るとすぐさま数台の発注がかかったとか。
海外のインプレを見ると「速くて軽い、コーナーワークもひと回り小さいバイクかのよう」などとカッコだけでないことを多くのテスターが証言しています。
レイス(亡霊)のネーミングどおり、スタイリングは禍々しいほど。カーボン素材を多用したことで、1967ccの排気量ながら車重186kgという軽量モデル。
通常のタンクがある場所はオイルタンクとなり、燃料はエンジンの下に吊るしたタンクに、という奇抜な設計。熱問題は大丈夫なのでしょうか。
映画「トランスフォーマー」にも出たP51
そして、2008年にはP51というアルミ削り出しモノコックフレームというインパクトあふれるマシンをリリース。6061-T6という航空宇宙グレードの無垢材から5軸加工マシンを駆使した構造は、コンフェデレートにしかできないこだわりかと。
先代のレイスで採用したテレレバー風サスもアルミに変更されています。が、車重は226.7kgとレイスよりもだいぶ増加してしまいました。
それでも、S&Sと共同制作した57度Vツインは2163ccへとスープアップされ、200bhp/23.5kg-mを発揮。
この頃から同社はソルトレイクの最高速チャレンジを繰り返しているので、240/45 ZR17というリヤタイヤなどは、そこからの経験が活かされていることは明らかでしょう。
また、燃料タンクがヘルキャット同様にエンジン上のフレームに戻されたことも大きなトピックで、さすがにエンジン下に吊るすのは問題があったのかもしれません。
新車価格は13万5000ドル(当時のレートなら1700万円程度)と、さすがブティックメーカーといえるもの。映画「トランスフォーマー/最後の騎士王」に登場するまでもなく、限定66台は即座に完売したとのこと。
このうち31台がアルミ素材色で、35台はアルマイト処理がされたブラック仕様。数は少ないようですが、日本国内にもP51が輸入されています。
映画「トランスフォーマー」にも出演したP51は一度見たら忘れられないスタイル。全身ほぼ削り出しのアルミで、226.7kgの車重。
全体に使用される6061アルミは、優れた強度対重量比、高い耐食性、そして優れた鍛造性が特徴で、T6処理を受ければ引張強度がさらに高まるという素材。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(新型クルーザー)
バイクはお兄さんの影響 メグミさんは昔からバイクに興味があったのだと言います。 「兄が二人いて、どちらもバイクに乗っていたんです。小さいときからその様子を見ていたので、自然に自分も乗りたいと考えるよう[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
共通の仕様変更はわずかだがその効果は想像以上だった 2017年4月に発売され、翌2018年から軽二輪クラスのベストセラー街道をばく進中なのが、ホンダのレブル250だ。今年は一部の仕様変更とともに、待望[…]
QJ LOVER Kayo が感じた ”リアルなQJ MOTORの魅力” を 毎月ここから発信していきます。 —— Let’s MOTOR Talk ! —— モデル・通訳として活動している時任カヨが[…]
気鋭のクルーザー専業ブランドによるカスタムクルーザー 以前に試乗記事などをお届けしたBENDA(ベンダ)がいよいよ本格上陸する。日本での輸入販売を手掛けるウイングフットより取り扱い開始が発表されたのだ[…]
最新の関連記事(新型バイク(外国車/輸入車))
「箱付き」だけじゃない! 旅仕様の全部入りパッケージ まず目を引くのは、その名の通りツーリングに特化した装備群。なんと、車体色に合わせたパニアケースと、トップボックスが最初から標準装備されているのだ。[…]
QJ LOVER Kayo が感じた ”リアルなQJ MOTORの魅力” を 毎月ここから発信していきます。 —— Let’s MOTOR Talk ! —— モデル/通訳として活動している時任カヨが[…]
箱根の賑わいに背を向けて、ハードすぎる箱根外輪山の懐へ 秋の箱根、いいですよね。湯本から宮ノ下や強羅を経由して芦ノ湖で遊覧船とか。箱根の秋といえばこんな観光ルートを思い浮かべるだろう。しかし、ツーリン[…]
オフロードでASAはプラスに感じられる場面が多い! 驚いたのは写真の緑の機体・オートマチックのASAを積んだR1300GS ツーリングASAのオフロード性能。微妙なクラッチ操作を多用するオフロードでA[…]
スポーティなライディングを気軽に楽しむ最初の1台に! 英国にルーツを持ち、現在はインドの二輪メーカーとして活動するロイヤルエンフィールド。このうちハンター350は、ブリットやメテオやクラシックといった[…]
人気記事ランキング(全体)
最強のコスパ防寒着か? 進化した「GIGA PUFF」 まず注目したいのが、「GIGA PUFF フュージョンダウンフーディ」だ。価格は驚異の4900円。このフーディの肝は、中わたの量にある。従来製品[…]
「着る換気扇」サーキュレーターメッシュ 今回紹介するのは、2025年9月の発売からわずか2ヶ月半で累計3万枚を突破したという「サーキュレーターシリーズ」だ。最大の特長は、裏地に採用された「サーキュレー[…]
バイク置き場を有効活用できる。掛けてから移動できるリアスタンド バイクとの接点は、スイングアーム下から支える付属のL形アタッチメントか、スイングアームに取り付けたスプールに引っかける別売りのV形アダプ[…]
「天然のエアコン」が汗冷えを防ぐ 厚着をしてバイクで走り出し、休憩がてら道の駅やコンビニに入った瞬間、暖房の熱気で生じる汗の不快感。そして再び走り出した直後、その汗が冷えて体温を奪っていく不安。ライダ[…]
後輪を軸に旋回する基本通りに乗れる車体のしなやかさと従順かつ繊細なエンジン特性! 2ストロークエンジン・メーカーではなかったホンダが、’60年代に世界GP完全制覇の後に再挑戦した4ストNR500が思わ[…]
最新の投稿記事(全体)
Q:雪道や凍結路は通れるの? チェーンやスタッドレスってある?? 一部の冒険好きバイク乗りと雪国の職業ライダー以外にはあまり知られていないが、バイク用のスノーチェーンやスタッドレスタイヤもある。 スタ[…]
色褪せないヘリテイジ、進化する「Z」の系譜 017年秋の東京モーターショーで世界初公開されて以来、Z900RSは常に我々ライダーの注目の的であり続けている。その最大の魅力は、往年の名車Z1/Z2への敬[…]
2ストGT時代から世界ではツーリングモデルで定評のブランド! 2ストロークエンジンのメーカーだったスズキも、排気ガス規制などに対応できる4ストローク化を急務としていた。 そして1976年、初の4ストロ[…]
THUNDERBIKE|Satin ミニフロアボード サンダーバイクのスタイリングと乗車時の快適性を両立したミニフロアボード。サンダーバイクはドイツのハーレーディーラーでありながら、さまざまなパーツを[…]
オンロードメインで楽しむ扱いやすいツアラーモデル いい意味で、事前の想像とは大きく異なる乗り味だったのが、油冷単気筒エンジンを搭載した軽二輪アドベンチャーのVストローム250SX。このルックスから、個[…]
- 1
- 2


















































