
ヤマハは、並列3気筒888ccエンジンを搭載する新型クロスオーバーツアラーモデル「トレーサー9 GT」を2025年4月15日に発売すると発表した。世界で初めてマトリックスLEDヘッドライトを採用し、電子制御サスペンションには取り回し支援機能を新搭載するなど多岐にわたる変更を受けた。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:ヤマハ
“つながる”機能搭載新の7インチTFTディスプレイほか変更多数
ヤマハが新型「トレーサー9 GT」を発表した。これまで上位グレード『GT+』の専用装備だった7インチTFTディスプレイを採用したほか、先行車や対向車など周囲の状況に合わせて部分的に点灯・消灯・照射を自動制御する「マトリクスLEDヘッドランプ」モーターサイクルとして世界初採用。ほかにもメインキーをONにした際、30秒間減衰力を下げて車両を取り回しやすくする電子制御サスペンションなど、ライダーをサポートする新技術を搭載する。
欧州では昨秋、ベースモデルのトレーサー9と最上位グレードのトレーサー9 GT+も発表されているが、日本への導入はGTおよびGT+のみと予告されていた。今回は国内向けGTが先行発表された形だ。
888cc並列3気筒エンジンはこれまで通りリニアな低中速トルクを備え、アシスト&スリッパークラッチや各種ライディングモード、双方向クイックシフターなどで武装。これを軽量なCFアルミダイキャストによるデルタボックススタイルフレームに搭載する。足まわりはリム厚が変更された軽量スピンフォージドホイールと最適化されたKYBサスペンションを備え、タイヤはバトラックススポーツツーリングT32を履く。
なお、欧州仕様のGTはY-AMT仕様も選択できるが、日本仕様ではマニュアルトランスミッション=MTのみ。Y-AMTの投入はGT+からということになりそうだ。
ヘッドライトに世界初のシステムを採用、取り回し支援の電サスや可変スピードリミッターも
吊り目のポジションライトが表情を作り出し、その下にマトリックス配置されたLEDヘッドライトユニットという構成。広い照射範囲を確保しながら、他の道路利用者を幻惑しないように照射エリアをリアルタイムで調整する。
ギョッとするような外観を提供するのは、世界初のマトリックスLEDヘッドランプ。ヘッドライトユニットの上部に統合されたカメラにリンクされた複数のロービーム/ハイビームで構成され、周囲の交通や自然光源、気象条件を自動的に検出し、その情報をもとに明るさと照射範囲の分布を動的に調整する。つまり、可能な限り広い範囲を照らしながらも、他の道路利用者を幻惑しないように照明領域をリアルタイムに調整するというものだ。
また、このマトリックスLEDヘッドランプは6軸IMUと連携することで、7度以上のバンク角を検出するとコーナリングライトのように働き、より快適で安全なライディングを実現する。これらは完全に自動化されているが、ライダーは3つの感度レベルを選択できるほか、走行中にいつでも手動でオーバーライドできるという(欧州発表時のリリースに表記)。
KYBと共同開発の電子制御サスペンション「KADS」には、メインキーをON にした際、30 秒間減衰力を低下させて車両の取り回しを支援する制御を追加。また、街中で不意に速度が出すぎないようエンジン出力を制御するYVSL(Yamaha Variable Speed Limiter:ヤマハバリアブルスピードリミッター)を新採用。システムの作動・調整・解除は、クルーズコントロールの操作スイッチを介して行うほか、スロットルを全閉方向へ押し込むことによってもシステム解除&停止ができる。設定の下限スピードは50km/hだ。
7インチTFTディスプレイと快適さを増したエルゴノミクス
ガーミンのアプリを利用すれば、ターンバイターンではなくフルマップ表示が可能。
従来モデルはGT以下とGT+でメーターサイズと構成が異なっていたが、2025年モデルでは両車ともに7インチTFTディスプレイを装備。さらに専用アプリ「Y-Connect」、「Garmin Motorize」をインストールしたスマートフォンとペアリングすることで、ナビゲーション、オーディオ、メールや電話の着信通知などを表示することが可能になる。
ガーミンのアプリ経由でナビを表示する場合は、簡易的なターンバイターン方式ではなくフルマップ表示になるというのもうれしいポイント。
ディスプレイにはライダーの好みやライディングスタイルに合わせて変えられる3つの異なる表示テーマがあり、シンプルなスポーツデザイン、情報満載のツーリングレイアウト、よりカジュアルでデザイン重視のテーマを選択可能。ナビゲーション、音楽、通話用のレイアウトも用意される。
ライディングポジションなどエルゴノミクスも見直され、ハンドルバー、ステップ、シート位置が変更された。シートレールは150g軽い新作だが、従来よりも50mm長く、パッセンジャーシートの面積拡大を実現。ライダー側のシートはよりフラットかつクッション性が増して快適性が向上。シート高は845mmになったが、シート前半のスリム化などにより実際の足着き性は向上しているという。また、好みに応じて工具不要でシート高を15mm上げることもできる。
純正アクセサリーとしてライダー/パッセンジャー個別にシートヒーター付き「ヒートシート」、また同様にコンフォートも用意されている。
スタイリングも新世代に
ヘッドライトの刷新とともにカウル類も一新された。ライダーとパッセンジャーの快適性を増すために風洞で開発されたフェアリングに加え、100mm幅で無段階に調整可能な電動スクリーンを採用。手元のボタンで操作できる。
また、電動スクリーンは従来よりも防風性能を高めるべく上方の調整幅を25mm増加、そして夏場や低速走行時のために下方の調整幅も25mm増加している。電動スクリーン下部に設けられたスポイラーにより、さらに高い風防効果を発揮する。
見えないところではフォークブラケットも改良され、ハンドル切れ角が32度→35度に増したことで最小回転半径は3.1mから2.9mへと小さくなった。
このほか、ドライブチェーンはDID製の新作とされ、優れた耐久性とフリクションロスの低減を実現するDLCコーティングローラーを採用。これによりチェーンの寿命が延び、調整のインターバルが長く、さらにバイクの取り回しも軽くなっているという。目立たないが重要なところでは、燃料ポンプの改良でより正確な燃料消費量が計測できるようになった。
容量30Lハードパニアのほか、容量34Lまたは45Lのトップボックスも純正アクセサリーで装着可能。燃料タンク右側にある収納コンパートメントも新しくなり、USBソケットを備えるほか小物を収納しておくことができる。
このほか、集中ロックが可能なスマートキーを採用。これによりイグニッション、燃料キャップ、ハンドルロックをキーレス操作可能だ。
トレーサー9 GT の車体色バリエーションとスペック
車名 | TRACER 9 GT |
認定型式/原動機打刻型式 | 8BL-RN99J/N722E |
全長×全幅×全高 | 2175×900 ×1440mm(スクリーン最高位置の全高は1530mm) |
軸距 | 1500mm |
最低地上高 | 135mm |
シート高 | 845/860mm |
キャスター/トレール | 24°25′/106mm |
装備重量 | 227kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ |
総排気量 | 888cc |
内径×行程 | 78.0×62.0mm |
圧縮比 | 11.5:1 |
最高出力 | 120ps/10000rpm |
最大トルク | 9.5kg-m/7000rpm |
始動方式 | セルフスターター |
変速機 | 常時噛合式6段リターン |
燃料タンク容量 | 19L(無鉛プレミアムガソリン指定) |
WMTCモード燃費 | 20.9km/L(クラス3、サブクラス3-2、1名乗車時) |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 |
ブレーキ前 | φ298mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
ブレーキ後 | φ267mmディスク+1ポットキャリパー |
価格 | 159万5000円 |
色 | 艶消し灰、艶消し暗灰 |
発売日 | 2025年4月15日 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
“カスタマイズコンセプト”というわりにはライトカスタムで…… ヤマハは、大阪モーターサイクルショーで「オフロードカスタマイズコンセプト」なる謎のサプライズ展示を敢行。これがさまざまな憶測を呼んでいる。[…]
ヤマハは、新型「テネレ700」の発売に合わせ、シート高が約30mm下がるローシート&ローダウンリンクを装備した「アクセサリーパッケージ Ténéré700 Low」をヤマハモーターサイクル エクスクル[…]
ASEANモデルのプレミアム化を推進するヤマハ 以前からスクープ情報をお届けしているとおり、WR155シリーズやYZF-R15などが200ccに進化して登場することになりそうだ。 国内のヤマハから公道[…]
“The Total Ténéré – Top in Adventure”をコンセプトにツーリング&オフロード性能を高めた MT-07系270度クランクの並列2気筒エンジンを継承しながら、Y-CCT([…]
1位:PG-1/ハンターカブ/クロスカブ比較インプレ ヤマハの125ccクラスレジャーバイク「PG-1」のタイおよびベトナムでの発売に合わせ、CT125ハンターカブ、クロスカブ110との比較試乗をレポ[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 新型大型二輪 [751〜1000cc])
YZF-R1シリーズ直系の4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツネイキッド ヤマハは、同社の最高峰スーパースポーツ「YZF-R1」のエンジンを低中速寄りに仕立て直して搭載した『MTシリーズ』のフラッ[…]
2024年にモデルチェンジ&Y-AMT仕様追加、最新カラーは1色のみ入れ替えで登場 ヤマハは、2024年4月・9月に発売した新型「MT-09」「MT-09 Y-AMT」に新色のマットライトグレーを追加[…]
R1とR1Mで変更内容は異なる ファイナルエディションが登場しそうとか、スーパーバイク世界選手権でのパフォーマンス向上のためモデルチェンジするのではないかなどさまざまな情報(憶測?)が飛び交っていた「[…]
XSR900 GPの登場によりカジュアル寄りに回帰したXSR900 ヤマハは、クロスプレーンコンセプトの888cc並列3気筒を搭載するスポーツヘリテイジ「XSR900」をマイナーチェンジ。ライディング[…]
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
人気記事ランキング(全体)
2007年に「感動創造」をテーマにプレミアムなモーターサイクルを提案! 2007年の東京モーターショーに、ヤマハは異彩を放つショーモデルをローンチ。 その名もXS-V1 Sakuraと、和をアピールす[…]
英国生まれインド育ち:クラシック風味に全振りしたモデル 現存するオートバイブランドでは最古(大元のジョージ・タウンゼンド・アンド・カンパニーの創業は1851年! )と呼ばれ、1901年にオートバイの生[…]
カワサキが提案する、クリーンでファンな未来のパワーユニット=2スト! 世界中から注目を集める大阪万博。この巨大イベントはまさに国家プロジェクトだが、このイベントにカワサキが出展。 そのカワサキブースの[…]
フルフェイスが万能というわけでもない ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。 […]
なんと“MotoGP全サーキット”を100均ハンガーで再現! 筆者はまったく門外漢なのですが、なんでも鉄道ファンには「乗り鉄」「撮り鉄」「模型鉄」など、趣味や嗜好によって、たくさんの棲み分けがあるんだ[…]
最新の投稿記事(全体)
大盛況だったサイン・ハウスブース 今年もモーターサイクルショーに登場した「サイン・ハウス」のブース。 ブースはシンプルで洗練されたデザインながらも、ひと目でギア好きの心をくすぐる雰囲気。 各製品に触れ[…]
初代はスポーツモデル:1975年ゴールドウイング(GL1000) 1970年代当時、巨大なアメリカ市場を独り占めしていた英国車をCB750フォアで一蹴したホンダだったが、Z1とそれに続く競合車の登場で[…]
フルフェイスが万能というわけでもない ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。 […]
特別色と専用ロゴなどを配した『50th ANNIVERSARY』 ホンダは、1833ccの水平対向6気筒エンジンを搭載する大型プレミアムツアラー「ゴールドウイング ツアー(GOLD WING TOUR[…]
1998年モデル:初代1300はとにかく巨大だった ヤマハXJR1200、カワサキZRX1100といった、CB1000SFを超える排気量のライバル出現で、ビッグネイキッド界は重厚長大化していった。そん[…]
- 1
- 2