カワサキレーシングチームおよびヤマハモーターヨーロッパは、2015年から6年連続でスーパーバイク世界選手権の王座を獲得してきたジョナサン・レイ選手がカワサキを離れ、ヤマハに加入することをそれぞれ発表した。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:Kawasaki
キャリア勝利数119は史上最高記録
ジョナサン・レイ選手がヤマハに移籍する?! そんな噂が出回り始めたのは最近のことだったが、シーズン途中にして正式発表に至った。2024年末までだったカワサキレーシングチーム(KRT)との契約を途中で終了し、2024年から『Pata Yamaha Prometeon WorldSBK Official Team』でスーパーバイク世界選手権を戦うことを、カワサキレーシングチームとヤマハモーターヨーロッパが正式に発表したのだ。
2015年から6年連続で2020年まで同選手権のチャンピオンを獲得してきたレイ選手だったが、2021年は大接戦の末にヤマハのトプラック・ラズガットリオグル選手にタイトルを譲り、2022年はドゥカティのアルバロ・バウティスタ選手が圧勝したうえでレイ選手はランキング3位に終わっていた。
そして2023年は差がより顕著になり、2シーズン(2023-2024)にわたる契約の途中ではあるがレイ選手も来季から何かを変えなければと判断したのだろう。
また、ヤマハとしてもラズガットリオグル選手のBMWへの移籍を受け、有力な後任ライダーを探していたことから、今回の合意に至ったとみられる。
KRTのチームマネージャー、ギム・ロダ氏のコメント
「人生においても、レースにおいても、優先順位によって進むべき道が決まります。この9年間、ジョニーがKRTに見せた献身により、私たちに多くの成功をもたらしてくれたことをとてもうれしく誇りに思います。私自身、チーム、カワサキ、そして世界中のファン全員がこの旅に参加できたことを光栄に思います。彼が今後どのような未来に進むとしても、ライダーとして成長を続けてほしいと願っています。
私たちに残されたタスクは、ともに鍛え上げたツールを最大限に活用して2023年シーズンを最高の形で終えること。いつものように私たちは改善し続け、アドバンテージを追求していきます。KRTは、ジョニーの代名詞となったNinja ZX-10RRで、彼の最後の4レースに全力で取り組んでいきます」
ジョナサン・レイ選手のコメント
「私を信じ、最高レベルで自分を証明する機会を与えてくれたKMCとKRTの皆さんに感謝しています。ファクトリーマシンのNinja ZX-10Rに跨った最初の日から、私は人として、ライダーとして多くのことを学び、成長してきました。
スーパーバイク世界選手権で6年連続優勝したことは、私がカワサキで過ごした時間のハイライトなだけでなく、人生にわたって素晴らしい思い出になるでしょう。そしてもちろん、これまでと同じくらい力強く、そして同様のコミットメントを持って2023年シーズンを終えることが私たちの使命です。
今、私たちの旅を振り返ると、私たちが世界中のカワサキファンとカワサキオーナーに喜びと幸福をもたらしたことを誇りに思います。でも、さよならは言いません。家族に対して別れを告げる必要はないでしょう。これは別れでなく、単にこの素晴らしい章の終わりにすぎません。KRTの皆さんの今後の章の幸運を祈っています。レーストラックでお会いしましょう」
ヤマハモーターヨーロッパCEO、エリック・ド・セーヌ氏のコメント
「私たちはジョナサンをヤマハファミリーに迎えることができてとても嬉しく、将来に向けて彼と協力していきたいと強く思っています。私たちは勝利に対する同じモチベーションと、WorldSBKに対する同じ情熱を持っています。彼と同じように、私たちは近年世界チャンピオンになっており、もう一度このレースの頂点に戻りたいと思っています。ジョナサンの成功への意欲、決意、渇望はキャリアを通じて一貫しており、これらの資質は将来の私たちの共通の成功に貢献するでしょう。私たちはジョナサンが世界選手権の記録をさらに伸ばし、歴史書にその名をさらに大きく刻むことができると心から信じており、彼が私たちと一緒にこれを達成できると同様に確信しています。私たちは、ジョナサンが2024年と2025年に彼とヤマハの目標を達成するために必要なものを確実に提供できるように、レースで証明されたヤマハR1をさらに改良するために懸命に取り組んでいます」
スーパーバイク世界選手権におけるジョナサン・レイ選手のこれまでの記録
- チャンピオン:2015、2016、2017、2018、2019、2020(全てカワサキ) ※歴代最高記録
- レース勝利数:119勝(カワサキで104勝) ※歴代最高記録
- 表彰台:256回(カワサキで214回) ※歴代最高記録
- ポールポジション:41回(カワサキで37回)
- フロントロウスタート:112回(カワサキで79回) ※歴代最高記録
- 最速ラップ:102回(カワサキで92回) ※歴代最高記録
- レーススタート数:401回(カワサキで261回) ※歴代最高記録
- チャンピオンシップ合計ポイント:6053.5 ※歴代最高記録
ジョナサン・レイ選手×KRTのこれまでをプレイバック
北アイルランド出身の英国人、ジョナサン・レイ選手は1987年2月2日生まれの36歳。チャンピオンナンバー“1”を付けているとき以外のゼッケンは65を愛用している。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
34歳ジョナサン・レイ選手、バイクの運転免許を取得す カワサキZ650のメーター前方に大きく掲げられた、赤い文字で「L」が入った標識プレート。これが示すのは、イギリスなどの免許取得時に必要になるラーナ[…]
6連覇のスーパーバイク絶対王者、Z900RS(2021年モデル)をゲットす 納車を前に、子供のようにウキウキが押さえられないジョナサン・レイ選手。グリーンの差し色が入ったメタリックブラックは特にお気に[…]
毎週金曜日の恒例となっている、カワサキ「Ninja ZX-25R」のティーザー映像がまたしても公開された。以前の記事でもお知らせしていた、ヘレスサーキットにおけるファクトリーライダーの走行シーンが、い[…]
'93年以来、26年ぶりに鈴鹿8耐優勝を遂げたカワサキ。そのクライマックスは、劇的と呼ぶにもあまりに劇的だった。ファイナルラップでカワサキは転倒。赤旗のまま終わった決勝レース。いったんはヤマハの勝利と[…]
手作業で組み立てられる、可能な限り世界選手権に近い使用 トップライダーのトプラック・ラズガットリオグル選手と同じプロセスで個々のライディングスタイルに合わせたセットアップをしてくれるという、幸運な25[…]
最新の関連記事(レース)
機密事項が満載のレーシングマシンたち バイクムック”RACERS(レーサーズ)”は、「いま振り返る往年のレーシングマシン」がコンセプト。それぞれの時代を彩った、レーシングマシンを取り上げている。 現在[…]
ポイントを取りこぼしたバニャイアと、シーズンを通して安定していたマルティン MotoGPの2024シーズンが終わりました。1番のサプライズは、ドゥカティ・ファクトリーのフランチェスコ・バニャイアが決勝[…]
プロジェクトの苦しさに相反する“優しい雰囲気” 全日本ロードレース最終戦・鈴鹿、金曜日の午前のセッション、私はサーキットに到着するとまず長島哲太のピットの姿を撮りに行った。プレスルームで初日のスポーツ[…]
2024年は鈴鹿8耐3位そしてEWCで二度目の王座に ポップが切り拓き、不二雄が繋いできたヨシムラのレース活動はいま、主戦場をFIM世界耐久選手権(EWC)へと移し、陽平がヨシムラSERT Motul[…]
ポップ吉村は優しくて冗談好きのおじいちゃんだった ヨシムラの新社長に今年の3月に就任した加藤陽平は、ポップ吉村(以下ポップ)の次女の由美子(故人)と加藤昇平(レーシングライダーでテスト中の事故で死去)[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
全ての個体にシリアルナンバー入り カワサキドイツの設立50周年を記念した特別モデルが登場した。1975年にカワサキドイツが設立されてから間もなく50周年を迎えるが、すでに2025年モデルとして登場して[…]
“ヨシムラ”がまだ世間で知られていない1970年代初頭のお話 世界初となる二輪用の集合マフラーが登場したのは、1971年のアメリカAMAオンタリオでのレース。当時のバイク用マフラーは1気筒につき1本出[…]
復活の軽二輪レトロは足着き性抜群、エンジンは大部分が専用設計だ 現在の国内メーカー軽二輪クラスでは唯一となるネオクラシック/レトロスタイルのモデルが待望の登場を果たした。 カワサキが以前ラインナップし[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
欧州で登場していたメタリックディアブロブラック×キャンディライムグリーンが国内にも! カワサキモータースジャパンが2025年モデルの「Z900RS」を追加発表した。すでに2024年9月1日に2025年[…]
人気記事ランキング(全体)
110ccベースの4kW制限モデル=新基準原付か 2025年11月の新排出ガス規制導入によって現行モデルの継続生産が困難になり、新たに110~125ccのモデルをベースとした車両に4kW(5.4ps)[…]
※タイトル写真は欧州仕様 デイタイムランニングライトにウインカーを統合 ホンダが新型「X-ADV」を国内でも正式発表。EICMA 2024で初公開されたもので、ヘッドライトまわりを含むフェイスリフトに[…]
“ヨシムラ”がまだ世間で知られていない1970年代初頭のお話 世界初となる二輪用の集合マフラーが登場したのは、1971年のアメリカAMAオンタリオでのレース。当時のバイク用マフラーは1気筒につき1本出[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
復活の軽二輪レトロは足着き性抜群、エンジンは大部分が専用設計だ 現在の国内メーカー軽二輪クラスでは唯一となるネオクラシック/レトロスタイルのモデルが待望の登場を果たした。 カワサキが以前ラインナップし[…]
最新の投稿記事(全体)
全ての個体にシリアルナンバー入り カワサキドイツの設立50周年を記念した特別モデルが登場した。1975年にカワサキドイツが設立されてから間もなく50周年を迎えるが、すでに2025年モデルとして登場して[…]
[ホンダ] X-ADVをモデルチェンジ(12/5) ホンダは「X-ADV」の外観/装備に改良を加え、全国各地のドリームホンダ店で発売すると発表した。 X-ADVは世界で唯一、DCTを搭載するスクーター[…]
緑×金、銀×青、黒×黒の3バリエーション スズキは北米で2025年モデルを一挙発表した。全モデルともカラーチェンジであり、「GSX-S1000」「GSX-8S」「GSX250R」「SV650」「GSX[…]
ひと昔のバイクは一年中暖機運転が必須でした 昔のバイク…と行かないまでも、1990年代末ぐらいまでのバイクは、一年中エンジンの暖気が必要不可欠でした。とくに2サイクルエンジン車は、冬はなかなかエンジン[…]
旅館の一室でFRP製ヘルメットを手探りで作り始めた 東京・新橋で経営していた旅館の一室で、創業者の鎌田栄太郎がFRP製ヘルメットの製作をはじめたのが今日のSHOEIのはじまりだ。 その旅館はホンダの社[…]
- 1
- 2