【2022 Suzuki GSX-RR】慎重な開発姿勢が生んだ究極のバランスマシン
2022 Suzuki Rider’s Result
アレックス・リンス(Alex Rins)予選最高位:5位/決勝最高位:優勝2回(2位1回/3位1回)/ランキング:7位
ジョアン・ミル(Joan Mir)予選最高位:2位/決勝最高位:4位2回/ランキング:15位
「優勝という最高の形で締めくくることができて、素直にうれしく思いました」と、佐原は振り返る。
急きょレストランを予約し、食事会を執り行った。いつもと変わらない、明るくアットホームな雰囲気で、まるで’23年もそのままモトGP活動が続くかのようだった。
だが、そうではなかった。スズキのレース活動を長きにわたって支え続けてきた叩き上げである河内が、’23年2月のマレーシアテストでは、ホンダのシャツを着てホンダのピットにいる。この違和感は、スズキのモトGP活動の終了を改めて印象づけた。
スズキは’11シーズン終了後にも、いったんモトGP活動を休止している。しかしこの時は休止期間が限定されており、’14年の復帰をめざして水面下ではマシン開発が続けられていた。そして当初予定より1年後ろにずれ込んだものの、’15年にはフル参戦復帰を果たし、’16年には復帰後初優勝を遂げている。
だが今回のスズキからの発表には休止ではなく参戦終了と書かれており、復帰については一切言及されていなかった。そのような状況であれば、スズキのスタッフが他メーカーのチームに移籍することは当然と言えば当然だ。しかしスズキの社員であった河内のホンダへの移籍は、参戦終了という言葉の重みと意味を改めて感じさせるものだった。
ひとりのレースファンとして、スズキ・モトGP撤退の報には衝撃を受けたし、残念にも思った。その一方で、これを経営判断と捉えれば、理解できるところもある。
どのメーカーも世界情勢の変化や環境対策への対応に追われているし、各企業が固有に抱えている問題もある。モトGP参戦により年間数十億単位でかかり続けるコストは、決して小さくはないだろう。
とはいえ、スズキという企業が将来を見据えた全体最適化の流れの一環としてモトGP活動を終了するということは、その活動を通して築き上げたブランドの大きさとそれを失うことの影響を考えれば、非常に大きな覚悟を伴う決断だったはずだ。
モトGPは’09年からタイヤをワンメイク化し、’14年にはエンジンパフォーマンスを司るECUも共通化している。開発コスト高騰を抑え、より多くのメーカーの参戦を促す狙いだ。また、タイヤとエンジンの制御ユニットというバイクにとっての主要パーツを同一にすることで、タイム差を抑え、バトルの多い見応えのあるレースが期待できる。
それらの狙いは概ね達成されており、’12年には3メーカーにまで減少していたファクトリー参戦が、
’22年現在で6メーカーになった。しかもここ4年でホンダ、スズキ、ヤマハ、ドゥカティのライダーがタイトルを分けるといった、白熱の混戦が常態化している。
しかし残念なことに、2輪レースは世界的に見てもまだまだマイナースポーツである。サッカーやバスケットボール、テニス、あるいは同じモータースポーツの4輪F1にも、人気や観客動員数は及ばない。
だからこそ、モトGPを主催するドルナや参加メーカーなどの関係団体が、この先モトGPをより魅力的かつ持続的なものとすべく議論を重ねている。その過程でのスズキの撤退は、本当に惜しまれる事態だ。
また、’22シーズンは、「ドゥカティを始めとした欧州メーカーの勢いがすごい」「それに対して日本メーカーの没落ぶりはひどい」という論調が幅を利かせていたように思う。
確かに欧州メーカーの代表格であるドゥカティは、空力パーツや車高調整機構など、今や主流となっている多くの技術で先鞭をつけた。アプリリアも力強いマシンを造っている。
一方の日本メーカーに目をやれば、ヤマハはファビオ・クアルタラロに2年連続の王座を授けることができず、ホンダはコンストラクターズタイトルで不名誉な最下位となった。そして、スズキは撤退だ。
こうした現象だけを取り上げれば、「日本のメーカー」という言葉から期待するような優位性はすっかりなくなってしまったようにも思える。
しかし世界グランプリ最高峰クラスの歴史を遡れば、全72年のうち日本メーカーは46シーズンに及びライダーズタイトルを獲得している。モトGPと称されるようになった’02年以降の21シーズンに限っても、ドゥカティが’07年と’22年に勝利しているだけで、残りの19シーズンで戴冠しているのは日本車なのだ。
実際のところ、スズキは最後の最後までGSX-RRの優れたパッケージを見せつけることに成功したし、ヤマハは最終戦までドゥカティのフランチェスコ・バニャイアの戴冠を許さなかった。
日本メーカーは、本当に苦戦していると言えるのだろうか。今のモトGPマシンには、いったい何が求められているのだろうか──。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
今年はシーズン前テストから快調なバニャイア ポルトガル・ポルティマオサーキットでのMotoGP公式テストが行われました。これで開幕前のテストは終了。昨年末のバレンシア、今年2月のマレーシア、そして今回[…]
いいかい? バイクには慣性モーメントが働くんだ 矢継ぎ早に放たれるフレディ・スペンサーの言葉が、 ライディングの真実を語ろうとする熱意によって華やかに彩られる。 めまぐるしく変わる表情。ノートいっぱい[…]
僕のおばあちゃんでも乗れるよ(笑) シニカルな笑顔を浮かべながら、決して多くはない言葉を放り投げてくる。 偽りのない率直な言葉は柔らかい放物線を描き、心の奥まで染み渡る。 かつて4度世界王者になったエ[…]
すごく簡単だったよ、ダートでの走行に比べればね 恐るべき精神力の持ち主。度重なる大ケガから不死鳥のように復活し、強力なライバルがひしめく中、5連覇の偉業を成し遂げた。タフな男の言葉は、意外なほど平易だ[…]
ひとたびこの乗り物を愛し、ライディングを愛してしまったら、もう戻れない この男が「キング」と称されるのは、世界GPで3連覇を達成したからではない。 ロードレースに革新的なライディングスタイルを持ち込ん[…]
最新の関連記事(モトGP)
なんと“MotoGP全サーキット”を100均ハンガーで再現! 筆者はまったく門外漢なのですが、なんでも鉄道ファンには「乗り鉄」「撮り鉄」「模型鉄」など、趣味や嗜好によって、たくさんの棲み分けがあるんだ[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
マルケスがファクトリーマシンを手に入れたら…… MotoGP開幕戦・タイGPで優勝したマルク・マルケスは、圧巻の強さでしたね。7周目に、タイヤの内圧が下がりすぎないよう弟のアレックス・マルケスを先に行[…]
開幕戦タイGP、日本メーカーはどうだった? ※本記事はタイGP終了後に執筆されたものです 前回はマルク・マルケスを中心としたドゥカティの話題をお届けしたが、ドゥカティ以外ではホンダが意外とよさそうだっ[…]
バニャイアの武器を早くも体得してしまったマルケス兄 恐るべし、マルク・マルケス……。’25MotoGP開幕戦・タイGPを見て、ワタシは唖然としてしまった。マルケスがここまで圧倒的な余裕を見せつけるとは[…]
最新の関連記事(レース)
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
マルケスがファクトリーマシンを手に入れたら…… MotoGP開幕戦・タイGPで優勝したマルク・マルケスは、圧巻の強さでしたね。7周目に、タイヤの内圧が下がりすぎないよう弟のアレックス・マルケスを先に行[…]
ヤンマシ勝手に断言。これでレースに出るハズだ!! 「CB1000Fコンセプト モリワキエンジニアリング(以下モリワキCB)」は、見ての通り、ホンダCB1000Fコンセプトをレーサーに仕立てたカスタムモ[…]
中須賀克行は決定。あとは…誰が乗るのか楽しみすぎる!! ヤマハファクトリーが鈴鹿8耐に帰ってくる。しかもライダーは全日本のエース・中須賀克行はもちろん、MotoGPとSBKのヤマハ系チームから2名を召[…]
開幕戦タイGP、日本メーカーはどうだった? ※本記事はタイGP終了後に執筆されたものです 前回はマルク・マルケスを中心としたドゥカティの話題をお届けしたが、ドゥカティ以外ではホンダが意外とよさそうだっ[…]
人気記事ランキング(全体)
1999年、東京モーターショーに突如CB Fourが出現! CB Four、ホンダファンは憶えているはず。1999年の東京モーターショーに、何の前ぶれもなく展示されたショーモデル。その名も「CB Fo[…]
モンキーFSシリーズの最新作として誕生! ホンダ「CB1000F コンセプト」で往年のフレディ・スペンサーが駆ったレーシングマシンのカラーリングが話題になったばかりだが、憧れの“スペンサーカラー”をま[…]
ダックス125[45万1000円] vs モンキー125[45万1000円]はどう違う? ホンダの原付二種リバイバルシリーズは、先駆けとなったモンキー125に続きスーパーカブC125、CT125ハンタ[…]
イタリアンイメージをネーミングやデザインに注入 これらデザインスケッチ等は、1989年8月にウェルカムプラザ青山で実施された「MOVE」展で公開されたもの。これは本田技術研究所 朝霞研究所が企画して実[…]
1位:60周年記念タイホンダ「モンキー125」登場 特別仕様車の製作に旺盛なカブハウスは、タイホンダの創立60周年を記念した「New Monkey Chrome Legacy Limited Edit[…]
最新の投稿記事(全体)
初代風カラーでSP=白×赤、STD=黒を展開 「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツ」を具現化し、本当に自分たちが乗りたいバイクをつくる――。そんな思いから発足した「プロジェクトBIG-1」の[…]
実燃費の計測でおなじみだった「満タン法」だが…… エンジンを使った乗り物における経済性を示す指標のひとつが燃費(燃料消費率)だ。 「km/L」という単位は、「1リットルの燃料で何キロメートル走行できる[…]
モデル/タレントのダレノガレ明美さんが、ホンダを代表するビッグネイキッドとして長らく愛され続けたCB1300のラストモデル「CB1300スーパーフォアSPファイナルエディション」のオーナーになったこと[…]
実測最高速度は246km/h:ホンダVF1000R 誕生の背景 ホンダが開拓したビッグバイク市場は1970年代から激戦区となり、各社が威信をかけて高度な技術を投入した。 そんな中、ホンダは他社が追随で[…]
白ボディに赤シートの新「スーパーカブC125」が登場【海外】 カブハウスのSNSでスーパーカブC125の新色が公開された。詳細は記されていないが、1958年以来の“Sシェイプ”デザインに新たなカラーデ[…]