つい先日、水冷パラツインを搭載する新型Vストローム800DEが正式発表&発売されたが、水冷VツインのVストローム650/XTも最新の排出ガス規制に対応し、まだまだ継続販売中だ。傑作の名を欲しいままにするスズキのミドルアドベンチャー、あらためてその魅力に迫ってみよう。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:柴田直行 ●外部リンク:スズキ
[◯] 設計の古さは感じるが大柄ゆえの長所が多々
Vストローム1000の車体にSV650のVツインを搭載し、’04年に販売がスタートしたVストローム650。’12年に初のフルチェンジを実施し、翌’13年から国内の正規ラインナップに登場している。ちなみに’14年には、ワイヤースポークホイールを採用するXTが追加された。
私がVストローム650に試乗するのは、このXTが登場したタイミングなのでおよそ8年ぶりだ。最新の排ガス規制に適合した645cc水冷V型2気筒エンジンは、相変わらずスロットル微開領域から従順に反応し、トゥルルルッという軽快な鼓動感が実に心地良い。100km/hでの回転数は、トップ6速でおよそ4500rpm。最高出力69psは決して非力ではないが、何となくそう感じてしまうのはシャーシの剛性や安定性が勝っているからだ。裏を返せば、ヤンチャな開け方をしても車体が許容してくれるので、安心感が高いと表現することもできよう。
ハンドリングは、ホイールベースが1560mmと長く、さらにフロントホイールが19インチゆえにクルクルと積極的に旋回するタイプではないが、前後タイヤが太すぎないので倒し込みや切り返しは軽快だ。高速道路で速度が3ケタに近付くと直進安定性が急に強まるが、これはタンデム+荷物満載という欧州での使われ方を考慮した結果だという。Vストローム1000由来のアルミツインスパーフレームを使い続ける理由の一つがこれなのだろう。なお、リヤショックのプリロードは工具なしで調整することができるので、荷物を積み込んだ状態でのアジャストも容易。これは非常にありがたい。
腰の収まりのいい位置に座るとハンドルが遠くに感じたり、アドベンチャーとしてはやや狭くて絞りの大きいハンドルバーを採用していたりと、設計の古さを感じる部分は少なくない。また、ライダーエイドな電子デバイスはトラクションコントロールやABS、ローRPMアシストぐらいしか導入されていないが、とはいえ距離を稼ぐほどアドベンチャーバイクとしての資質の高さを実感できる。今なお輝きを失っていない稀有な存在だ。
[△] スクリーン調整がネジ。シガーソケットも不満
ウインドスクリーンは高さを3段階に調整できるが、ボルト4本を取り外して固定位置を変える方式なので時間を要する。また、アクセサリー電源はシガーソケットなので使いにくい。今回のモデルチェンジのタイミングでUSBタイプにしてもよかったのでは?
[こんな人におすすめ] 新型800DEとは狙いを異にする、650の魅力不滅
フロント19インチかつ401cc以上のミドルアドベンチャーで、しかも100万円以下となるとこのVストローム650が唯一となる。下半身を含む適度な防風効果と振動の少なさ、ギャップ通過時のショック吸収性など、今もなお旅バイクとして優秀だ。
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