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今も絶大な人気を誇る名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は、ゼファーシリーズ旗艦モデル「カワサキ ゼファー1100」について、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:バグース! モーターサイクル
【取材協力:バグース! モーターサイクル】「Bagus!」とはインドネシア語で“最高!”という意味。その言葉が示す通り、同店ではお客さんに最高のバイクライフを提供することをモットーとしている。取材当日の店内にはZ1/GPZ900R/ZRX1200ダエグ/GSX-R1100なども並んでいたが、同店の主力機種はゼファー400/750/1100シリーズで、全国から数多くのユーザーが来店。●住所:神奈川県横浜市都筑区早淵1-25-28 B棟 ●TEL:045-534-9246
- 1 細かな問題はあるものの、基本的にはかなり丈夫
- 2 カワサキ ゼファー1100 メンテナンスポイント
- 3 バグース! オリジナルパーツ:ゼファーを知り尽くすゆえの品揃え
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細かな問題はあるものの、基本的にはかなり丈夫
エンジンも車体も電装系も、基本的には丈夫と言われているゼファー1100。ただしユーザーの間では、ヘッドガスケットからのオイル漏れ/2速ギヤの抜け/点火不良/エンジンの発熱量の多さなどが、問題点として話題になることが多いようだ。これらに関して、土屋さんの見解を聞いてみたい。
「まずヘッドガスケットは、構造的に抜けやすいのは事実ですが、ヘッドカバーかシリンダーヘッドが歪んでいるケースもあります。2速ギヤの抜けは初期型の問題で、対策が施された後期型ではめったに起こりません。点火不良については、パルシングコイル付近への水分の侵入や、速度計かイグナイターを輸出仕様に変更したことが、ネックになっているケースが少なくないですね。発熱量は確かに多いですが、オイルポンプが正常に機能して、良質なオイルを使っていれば、オーバーヒートに至ることはないと思いますよ」
なお一昔前のゼファーの中古車は、エンジンは点検だけでOKという個体が多かったものの、最近は分解整備がごく普通になりつつあるようだ。
「どこまで手を入れるかは状況次第ですが、シリンダーヘッドのバルブガイドはかなりの確率でガタが出ています。また、工具が入れにくい中央2本のプラグホールの雌ネジがナメていることは珍しくないですし、最近になって新規で整備依頼を受けた中古車の中には、転倒が原因でクランクケース右側に入ったクラックを、アルミパテで補修している車両が何台かありました」
カワサキ ゼファー1100 メンテナンスポイント
シリンダーヘッド:吸排気バルブのガタとガスケットの劣化
シリンダーヘッドは、全体の歪みや吸排気バルブガイドのガタが発生している個体が多い。ラバー製ガスケットは、“カエシ”が存在しない端部が抜けやすい。なおカムシャフトを交換する場合、同店ではヨシムラST-1が一番人気。
キャブレター:ボディの選択で、異なるフィーリングが味わえる
【3兄弟に共通する負圧式のCVK】純正のケーヒンCVKキャブレターは、現在でもほとんどの補修部品が入手可能。写真のCVKはフロート下部にバグース! のチョーク移設キット(7920円)を装備している。
【抜群のレスポンスを誇るFCR】純正キャブレターのボディが磨耗限界に達した場合、あるいは、レスポンスの向上を求めるライダー用として、同店ではフラットバルブのケーヒンFCRを推奨している。
【フロートパッキンは再利用不可】一昔前のキャブレターのフロートパッキンは、その気になれば再利用できたが…。最近の純正部品は硬化が早いようなので、いったん分解したら新品への交換がマスト。
パルシングコイルカバー:点火系を守るためガスケットは必須
オイルが回っていないためか、クランクケース右側カバーのガスケットは、入れ忘れている個体が目立つ。その結果としてパルシングコイル/ローターに水分が付着すると、点火系のトラブルが発生。
トランスミッション:アウトプット側はギヤの損傷が目立つ
ミッションはアウトプットシャフト側のギヤにダメージが出ていることが多い。すでに一部のパーツが欠品で、現在の同店は良質な中古で対応しているが、将来を見据えてオリジナルの開発も検討中。
リーフスプリング:破損の可能性が高いBTLの主要部品
減速時のフィーリングに違和感があるなら、クラッチ内部に備わるバックトルクリミッター用のリーフスプリングが破損している可能性が濃厚。’94年型で対策品に変更されたものの、以降のモデルでも破損は少なくないようだ。
エンジンマウント:ラバーの劣化によってエンジンが傾く
フロントのマウントラバー×2が劣化すると、エンジンは正規の位置を保てなくなる。なおダイレクトなフィーリングを重視するライダーのために、バグース! ではリジッド式強化マウントを準備。2万7280円。
オイル&オイルポンプ:上質なオイルをきっちり循環させる
トロコイド式オイルポンプ(写真は750用)も、長い目で見れば消耗部品。内部にキズや磨耗がある場合は要交換だ。同店の推奨オイルは100%化学合成のA.S.H.で、用途に応じてFSEEスペックレーシングとFSを使い分けている。
オイルクーラー:チューニングエンジンは大容量化がマスト
パワーユニットがノーマルなら、冷却系は純正でOKという姿勢の同店だが、チューニングエンジン用として、ホースが上出しの11インチ16段オイルクーラーを準備している。カラーはブラックで、価格は7万7000円。
フューエルコック:分解整備よりASSY交換が得策
燃料コックは負圧式。経年変化で内部のダイヤフラムやシールが劣化すると、オーバーフローやガソリン漏れが発生する。分解整備は出来るものの、費用対効果を考えて、同店は新品への交換を推奨。
スプロケット&ドライブチェーン/リヤショック:レースで実績を積んだ社外品を推奨
前後スプロケット+ドライブチェーンはサンスター+EK ThreeDがバグース! の定番。リヤショックは純正をオーバーホールする態勢を整えているものの、1ランク上の走りを求める人には、オーリンズやハイパープロをオススメしている。
フロントブレーキ:純正OHは可能だが社外品も考慮したい
足まわりの補修部品はすべて入手可能。ただしブレーキは、アフターマーケット製のサンスター+ブレンボに交換する人が少なくない。ホイールを変更する場合は、前後17インチのマルケジーニM10Sが定番。
アクスルシャフト:クロモリ素材でフィーリングが激変
車体のチューニングパーツとして、バグース! ではクロモリSCM-440素材を用いたシャフトを開発。左はスイングアームピボット用(3万8280円)で、中央はフロント用(3万4320円)。右はZRX/ZZR系のフロント用だ。
タイヤ:ラジアル化という選択肢もアリ
純正バイアスタイヤのブリヂストンG601/602とダンロップK505は、現在でも新品の入手が可能。ノーマルホイールでラジアル化を図る場合は、T31/32やロードスマート4などが選択肢になる。
スパークユニット:強力な火花を実現するASウオタニが定番
日本仕様はすでに欠品だが、輸出仕様のイグナイターは現在でも入手可能。ただしバグース! では、ASウオタニ製を選択する人が少なくない。写真は同店が独自に点火マップを設定した750用のキットで、価格は7万9200円。
メーター:安易に交換すると中高回転域が不調に
日本仕様のゼファー1100に、輸出仕様の240km/hメーター、あるいは速度リミッターが存在しない輸出仕様のイグナイターを使用する場合は、配線の組み換えが必要。それを行わないと、中回転以上がまともに吹けなくなるそうだ。
バグース! オリジナルパーツ:ゼファーを知り尽くすゆえの品揃え
バグース! の人気商品となっているフェンダーレスキットは、単にリヤまわりがスッキリするだけではなく、シート下を整然とし、収納スペースとして使いやすくなるという美点を備えている。写真左はゼファーχ用で、価格は3万7180円。写真右はゼファー1100用で、その他にゼファー750用/ZRX1200ダエグ用/GPZ900R用などが存在。いずれの製品もアルマイトは黒と銀の2種。
アルミ削り出しのステアリングステムキット。ゼファー1100用はフロント18→17インチ化を前提とした設計で、フロントフォークオフセットは30mm。価格は16万7200円。
ノーマルからチューニング仕様まで、幅広いエンジンに対応するオールチタンマフラー。単品価格は21万7800円で、フラットオイルパンとのセットは28万6000円。
バグース! では数年前にレーザー加工機を導入。ピストン+コンロッドをイメージしたアルミ製のヘルメットホルダー(1650円)/ライセンスプレート/ナンバーホルダー(4400/5280円)、ステンレス製のヘッドライト光軸調整用ステー(4180円)など、さまざまなアイテムを製作している。
オイルキャッチタンク+小物入れ+ブリーザープレートのセット。ゼファー1100用は3万6300円で、750/400χ用は3万9600円。各部品は単品販売も行う。
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