今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は2ストローク車の歴史を変えたヤマハRZシリーズの最高峰・RZV500Rについて、モトプラン・川原末男氏のインタビューをお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:モトプラン
どんな依頼も引き受けるRZVのエキスパート
取材協力を仰いだから言うわけではないが、おそらくモトプランは、世界でもっともRZVを熟知したショップだと言える。なんと言っても同店では、’80年代中盤の現役時代から、このバイクの整備とカスタムを手がけているのだから。そしてそんな同店の知識と技術力を頼って、昨今では全国各地からRZVオーナーが来店している。
「確かに、当社には多くのRZVオーナーがいらっしゃいますが、その一番の理由は2ストに対応できないショップが増えたからだと思いますよ。でもそれは技術力の問題ではなくて、最近の4ストしか接したことがないメカニックが2ストの整備を行うのは難しいんです。できるとしても、2ストに関する基本的な知識がなければ、膨大な時間がかかるでしょう。しかもRZVの場合は、RZ/RZ-RやTZRなどと比べると構造が複雑で、特殊なノウハウが必要ですからね」
約40年に渡ってRZVと接して来た川原さんの視点で見て、最近になって何か変わったことはあるだろうか。
「中古車価格がかなりの勢いで高騰する一方で、車両のコンディションは年を経るごとに悪くなっています。それに加えて、最近のお客さんは2スト未経験の人が増えました。もちろんそういうお客さんには4ストとは異なる扱い方/始動や暖気の手順/好調を維持するコツなどをレクチャーします」
近年のモトプランでは、他のショップやネットオークションで購入したRZVの修理依頼が多く、そういうお客さんの中には、「とりあえず動くレベルでいい」というケースもあるそうだ。
「お客さんの依頼に応えることが当社のモットーなので、そういう依頼も引き受けますが、”とりあえず”では本来の資質が味わえないうえに、他の部品が壊れる可能性があることや、完調を目指す場合にどんな作業が必要になるかをきちんと説明します。なお他店やネットオークションで購入したRZVオーナーからは、部品に関する問い合わせがよくありますが、当社のストックも余裕があるわけではないので、エンジンや電装系に関しては、部品単体での販売は行っていません」
修理の話が先行したものの、モトプランでは在庫をベースにした車両販売も行っている。価格は200万円~で、RZVのエキスパートが仕上げたレストア車かつ機関の不安がないことを考えれば、かなりのお買い得だ。
「そうかもしれません(笑)。最近は持ち込み車両の整備で非常に忙しいので、納車にはある程度の時間がかかりますが、当社が仕上げたRZVなら、購入後に悩んだり後悔したりすることはないと思いますよ。もっとも、以前は20台前後を準備していた当社の在庫は、最近ではその半分になっているので、好調のRZVを楽しみたい方は、なるべく早めに相談してほしいですね」
メンテナンスコスト[モトプランの場合]
- エンジン腰上オーバーホール:40万円~
- キャブレターオーバーホール:4万円~
- フロントフォークオーバーホール:2万円~
- フルパワー化:5万円
1はキャブレターのオーバーホールと燃料/潤滑系の点検/整備を含んでの価格。エンジンオーバーホールだけでは本来の資質が回復できないことがあるため、同店では周辺部品もきっちり確認する。キャブセッティングの変更とマフラーの内部加工を行うフルパワー化の価格は、なんと’80年代中盤から変わっていない。※価格は税抜き
〈参考〉次点候補:おすすめは気軽に楽しめる250ccパラレルツイン
せっかくなら最高峰。旧車を購入するとなったら、ついそんなことを考えてしまうものだが、単純に往年の2ストスポーツを味わうのであれば、RZV500Rにこだわる必要はないのかもしれない。
「ウチはヤマハ2スト全車を扱っていますが、その中からオススメしやすいオンロードスポーツと言えば、やっぱりRZ250Rと1KT(初代TZR250)、R1-Zでしょう。生産台数が多かったこの3機種は、まず中古車価格がそれほど高騰していませんし、純正部品の供給状況も決して悪くない。さらに中古部品も豊富ですから、RZVや初代後期(2XT)以降のTZRシリーズを購入するのと比べると、金銭的/心理的な負担は、かなり少なくて済むと思いますよ」
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