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コロナ禍が影響して新車の入荷数が増えない一方で、密を避けられる遊びとしてバイクの人気がちょい復活。結果、大量のバックオーダーを抱えている車種も多い。では、注文が殺到する車種はどこに魅力があるのか? 丸山浩があらためて試乗して、売れてる理由を再検証! ここで解説するのは’18年型でのデビュー以来、3年連続クラスNo.1と絶大な支持を集めているZ900RSだ。たしかにカッコいいバイクだけど、なんでそんなに売れるのか?!
●まとめ:田宮徹 ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキ
懐古カラーのネオクラ大本命!!
3年連続で、小型2輪クラスの新車販売台数ナンバーワンに君臨してきたのが、カワサキのZ900RS。丸型ヘッドライトに砲弾型メーター、ティアドロップ燃料タンク…と往年のZ1を思わせるルックスが、まずは人気の要因となっている。
スタイリングだけでなく、実際にまたがったときにも昔のZフィーリングがちゃんとあるのが見事なところ。丸みを帯びたシートの縁の感じも昔っぽいし、燃料タンクは昔より前後長が短く、横方向はワイドになったけど、ここにもかつての雰囲気がよく表現されている。高めにセットされたワイドなハンドルも、”いかにも”な感じだ。
エンジンは水冷だから、さすがに…と思いきや、948cc水冷並列4気筒で最高出力111psなのでそれほど絞り出しているわけではなく、低中回転域のトルクを楽しむことを重視したような味つけ。その領域で、まるで空冷エンジンのようなゴリゴリとしたフィーリングがある。しかし、それらはZ900RSの全てではなくて、むしろ演出によって生み出された”雰囲気”のひとつ。昔のビッグバイクみたいに車体が本当にデカくて持て余してしまうわけでも、高回転域で力がないわけでもない。
だからZ900RSは、昔ながらのスタイルなのに軽快な走りを楽しめる。エンジンのレッドゾーンは10000rpmからだが、おいしいのは4000〜7000rpmあたり。トルクを存分に味わえるが、昔のエンジンと違ってピックアップもよいから、軽快に流すような走りがじつに気持ちいい。頻繁にギヤチェンジして高回転をキープするよりも、ワンギヤで低中回転を多用して走るほうが楽しめる。
【’21 KAWASAKI Z900RS】主要諸元 ■全長2100 全幅865 全高1150 軸距1470 シート高800(各mm) 車重215kg (装備) ■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 948cc 111ps/8500rpm 10.0kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L ■タイヤサイズ F=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:135万3000円
例えば足着き性は、シートこそ昔風のデザインだがサイドカバーの張り出しを抑えるなどして、水冷4気筒ビッグネイキッドとしては標準的なレベルにまとめている。車格も、デザインやハンドル幅などで大きさを表現しているが、実際にはそこまで大きいわけではない。エンジンは空冷風のテイストもあるが、やっぱり現代の水冷だから、ちゃんと回る。多くの人が普通に扱えるという大前提をクリアしたうえで、Zが持つ世界観、あるいはビッグネイキッドの雰囲気が演出されているのだ。
ビッグネイキッドらしいボリューム感はあるけど、シート前方を絞るなどの工夫で足着き性を向上。身長168cm、体重61kgの丸山浩氏だと、両足の裏が半分ほど接地する。ハンドルはやや幅広で、これもまた大きさの演出につながっている。
車体も、外装デザインこそレトロを狙っているが、倒立フロントフォークにラジアルマウントモノブロックのフロントキャリパー、フロントラジアルマスターシリンダーなど現代的なパーツのオンパレードで、曲がる/止まるもちゃんとしている。ただし、フィーリングにはフレンドリーさもある。カッチリしすぎておらず、これも幅広いユーザーが扱いやすいと感じる要素になるだろう。アシストスリッパークラッチも採用しているので、クラッチレバーの操作荷重も軽めだ。
’70年代名車のZ1(=900SUPER FOUR)をデザインモチーフとした、いわゆるヘリテージスポーツモデル。Z900が開発ベースで、前後ホイールは現代的な17インチ径。灯火類はフルLEDで、2段階+オフのトラコンも装備する。
売れてる理由その1:足まわりはしっかりした最新版
このバイクがデビューしたとき、国内試乗会が実施されたのはオートポリスサーキット。というわけでそれなりに攻め込んだのだけど、足まわりやブレーキに関して「ここまでやらなくていいんじゃないの?」と思ったのを覚えている。これも、現代の”売れてるバイク”になるための必須項目で、昔のままを貫くならリヤツインショックや前後19/18インチタイヤなんかでもいいわけだけど、それじゃあイマドキの走りにならないしタイヤも選べない。”雰囲気”は昔風でも、走りは退化させない。これが、現代のライダーに受け入れられるためにはとても大切だ。
サーキットの話が出たので、逆に旅の話もしておくと、やはりこのバイクも他の”売れてるバイク”と同様、ロングツーリングを楽しむイメージがとても湧きやすい。カウルレスだから高速をバビュンという感じではないだろうが、このニュートラルなハンドリング特性なら思いっきり長い距離を走ったときにも疲労感は少ない。旅での使いやすさが容易に想像できる。多くのライダーにとって、バイク遊びの基本はツーリング。やっぱり、ツーリングシーンを思い浮かべやすいバイクのほうが売れるのではないだろうか?
レトロな外観だが開発ベースはスポーツネイキッドのZ900で、フルアジャスタブルの倒立フロントフォークを採用!!
売れてる理由その2:伝統カラーのタンク!
そもそもルックスという面でアドバンテージがありそうなZ900RSだが、それ以外に”売れてるバイク”になっている大きな要因は、大きなバイクに対する憧れを満たしてくれることだと思う。実際には、Z900RSより大排気量で性能や装備がスゴい車種もたくさんある。そこまでのレベルは必要ないけど、大きなバイクに乗っているという所有欲を満たしたい人に、このバイクの演出はまさにぴったり。乗りやすく、でもスタイリングは堂々。
もちろん、往年のZに対する憧れから入ってくる人たちもいるだろう。Z1なんて、いま買おうと思っても金額的にトンデモナイし、よほど好きでなければいまの時代に乗るのは…。でもZ900RSなら、その”雰囲気”に浸りながら、ごく普通に扱えて不自由なくバイクライフを楽しめるのだ。
燃料タンクやテールカウルなどのデザインを’70年代名車のZ1やZ2に近づけるだけでなく、当時を思わせるカラー&グラフィックも採用。かつてのゼファーシリーズでも使われた、ある種のレプリカ商法なのだが、実際のところカッコいいし、売れているのである。
【砲弾メーター&丸形ミラーもレトロ】Z2ミラーを彷彿とさせる丸形バックミラーや、砲弾型のメーターケース(メーターは指針式の速度計と回転計にモノクロ液晶パネルの組み合わせ)も、’70年代の再現に欠かせない!
売れてる理由その3:アンコ抜き風でちゃんと乗れるシート
昔のアンコ抜きシートはろくでもなかったけど、メーカーがアンコ抜き風に設計すればポジションを決めて快適に乗れる。安易にフラットシートにしなかったことも高評価!
分析結果:カワサキZ900RSが売れているのは「絶妙なパッケージング」だから!
この類のバイクを所有するなら、「ビッグバイクに乗っている」という満足感は欲しいが、かといって大きくなりすぎてしまったら乗りづらい。エンジンにも、かつてのバイクみたいな低~中回転域でのゴリゴリした味わいが欲しいけど、かつてのバイクみたいに回して走らないのではイマドキ受け入れられない。”雰囲気”はたっぷり欲しいけど、行き過ぎたらやっぱりダメ。Z900RSは、そのちょうどいいところを突いている。往年の”Zらしさ”、あるいは”ビッグネイキッドらしさ”は随所にあるけど、誰にでも乗れる秀逸なパッケージなのだ。
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