600SS激動の18年。市場は欧州からアジアへ
市販車600ccのレースが世界選手権に格上げされたのは、’99年のこと。ヤマハYZF-R6が投入され、欧州で600ccスーパースポーツブームに火が着いた。このカテゴリーは以後、激しい浮き沈みを辿ることになる。
CBR-RRシリーズの次兄として’03年に送り込まれたCBR600RRは、モトGPマシン風のルックスと鋭い走りで人気を獲得。’00年代には4メーカーの600SSがシノギを削り、海外勢も参戦を果たした。リッターSSを上回る勢いを見せたものの、’10年代に入るとスポーツモデル人気の凋落によりブームが下火に。規制強化を機に、一度は600SSの灯が消えることになった。
そして現在。CBR600RR、YZF-R6、ZX-6Rの3車が再び揃ったことは実に歓迎すべきことだ。願わくばこの灯を消さないでほしい。なぜなら、600SSはライダーに必要な存在だからだ。
その理由のひとつは、”若手ライダーの育成”。近年のアジア圏では、スーパースポーツの選択肢が250~300ccかトップエンドの1000ccしかなかった。だが中間の600が投入されたことで、ステップアップが容易に。’20年カワサキからニーゴー直4のニンジャZX-25Rも登場したこともあり、600クラスの需要はさらに高まるハズだ。
一方で現在のリッターSSは、多くの人にはあまり関係のない高みへと進化し、価格帯も200万円超がザラ、という状況。ゆえに中間にある600SSは、ニーゴーを卒業した人の受け皿としてまさにちょうどいい。そう、今回の新型CBR600RRは、未来のスポーツ好きライダーやモトGP選手を育てる投資と言えるのだ。
まだ先の話ではあるが、ユーロ5規制によりせっかく復活した600RRがまたも消え行くのは惜しい。なんとか末永くラインナップしてほしい。
600RRヒストリー’03:600版RC211Vレプリカとして登場[PC37]
万能スポーツのCBR600Fに対し、’03年にレースユースを意識したCBR600RRが投入された。当時のモトGPマシン=RC211Vとウリふたつのスタイルを継承し、フレーム構造やセンターアップマフラーなどの技術も還元した。従来とは逆に、開発初期段階からサーキットテストを行い、研究を重ねた経緯を持つ。新設計の心臓部は、主要3軸を三角配置し、スターターを右に寄せるなどコンパクト化を徹底。横剛性をわずかに抜いたアルミフレーム、ユニットプロリンクなどの新技術も詰め込んだ。
600RRヒストリー’07:”軽さ”にこだわって初のフルモデルチェンジ[PC40]
’05モデルから2年後に初のフルモデルチェンジを敢行。エンジンは前後長を30.5mm短縮し、フレームの構成部品を11→4ピース構造とするなど軽量化を促進し、約8kgの大幅ダイエットに成功した。出力特性の変更やマスの集中で扱いやすさが増し、空力性能を高めたカウルも採用。
600RRヒストリー’13:逆スラントノーズでマイナーチェンジ[PC40]
先代をベースに外装と足まわりをリファイン。アッパーカウルはモトGPで培った空力技術を還元し、通常ポジションでCd値を6.5%減、レースポジションで5%減を果たした。フロントにショーワ製BPFを新採用すると同時に、リヤサスペンションの設定も見直されている。
600RRヒストリー’21:高回転化&フル電脳化でビッグマイナーチェンジ[PC40]
排ガス規制に対応せず、’16年に欧州と国内で生産終了となるも待望の復活。エンジンは動弁系の改良や吸排気効率の向上などでピーク出力発生回転数を底上げ。規制対応しつつ2ps増も果たした。ウイング付きのエアロカウルや電子制御スロットル+5軸IMUの電脳サポートもミソ。車名こそ「RR-R」を名乗らなかったが、’20で生まれ変わったCBR1000RR-Rと共通のDNAを主張する。LED4眼となった顔も同イメージだ。
TOPICS:レプリカ・カラーも名物でした
モトGPマシンのイメージが強い600RRだけに、レプリカカラーとの親和性はバツグン。スペシャルエディションとして数々のモデルが限定販売された。モビスター、コニカミノルタ、レプソル、と兄貴分の1000RRよりバリエーションは豊富。フレーム塗色を黒→銀とし、ホイールカラーを変更するなど手も込んでいた。当然、新型でも期待したい。
●文:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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