’84年に初代が登場したハーレーダビッドソンの「FXST」は、ラインナップに欠かせぬモデルとして根強い支持を集めた。’10年式をもって姿を消していたが、10年ぶりの復活で原点回帰。大排気量Vツインならではのトルクフルなエンジンフィーリングや加速力が堪能でき、ワインディングでもたつくこともない。アグレッシブになって帰ってきた!
[◯] 無骨でシンプルがウリ標準仕様のソフテイル
’20年モデルで登場したニューモデル「FXST」は、その名が示すとおりソフテイル系のベーシックモデル。’18年式で刷新されたソフテイルシリーズは、カンチレバー式のモノサスペンションをシート下に隠し、排気量1745ccの空冷OHV4バルブ45度Vツインをスチール製ダブルクレードルフレームにリジッドマウントする。FXSTの加入で全11機種という大所帯になり、その中でスタンダードが最後発というカタチだ。
車体色を黒のみとし、エンブレムなど装飾も持たない。伝統的なスポークホイールやシンプルなソロシート、チョップドフェンダーなど人気の定番パーツを組み合わせ、無駄を削ぎ落とした無骨なスタイルと言えるが、ミニエイプハンドルバーがアクセントとなって、標準仕様と言えどもしっかりと個性を主張しているのはお見事。このまま乗ってもいいし、カスタムベースとしても最適だ。
フロント19インチ、リヤ16インチの足まわりは細身のタイヤがセットされ、おおらかでクセのないハンドリングを生み出している。イン側へ荷重を意識すると、セルフステアで初期旋回を始め、自然に舵角がつく。駆動輪にどっしりとトラクションがかかり、高いグリップ位置からヒラヒラと操れる感覚は、同じディメンションのストリートボブとよく似ている。
操作に対しクイックに車体が反応してくれるのはソフテイルの持ち味だが、これはエンジンを剛性メンバーとするリジッドマウントのシャシーがもたらすところが大きい。入力に対しシャキッとレスポンシブで、車体がシンプルでハンドリングも素直なFXSTでは俊敏性が特に際立つ。
Vツインの鼓動はもちろん、前後輪の接地感やサスのストロークも乗り手はダイレクトに感じ取ることができ、ソフテイルの高い運動性能を存分に発揮している。
ここまでスポーティさを称賛したが、もちろん「クルーザーにしては」という前置きを忘れてはならない。6速100km/h巡航をわずか2200rpmでこなし、快適な高速クルージング力を持つ現行ハーレーの実力を知る指標となる機種だ。
[△] 完成度の高いエンジンが”らしさ”に欠けてしまう
低速トルクが太く、ストリートも扱いやすい心臓部だが、中高回転域で弾けるようなヒット感が乏しく、優等生なVツインエンジンに仕上がっているのは、オールドファンにとっては物足りないと感じそうだ。
[こんな人におすすめ] 豪快に、スポーティーに走りたい
最新クルーザーで、スポーティーで豪快な走りを楽しみたい人にうってつけ。大排気量Vツインならではのトルクフルなエンジンフィーリングや加速力が堪能でき、ワインディングももたつくことなくアグレッシブに。高速道路を使って長距離も走れる。
●まとめ:青木タカオ ●写真:磯部孝夫 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
※'20年7月上旬現在、国内で購入できる現行ラインナップかつ公道市販車のカタログ数値(公式HPに記載されているスペック)を比較。 地球すべてを走破する王者GSがブッチギリ ツーリングで気になるのが燃料[…]
遊び心あふれるディテールと、バイク好きも納得の程好いマニアックさ 重低音とどろく迫力の排気サウンド、ちょっとクセのあるライディングポジション、意外にも素直なハンドリング、そしてド迫力の体躯とトルクフル[…]
今般の新型コロナウイルスの影響により中止となったが、BMWは米国テキサス州オースティンのハンドビルトショーで「R18」を初公開する予定だった。クルーザーの本場でいち早く披露し、その市場に殴り込みをかけ[…]
従来型の2294ccから一気に2458ccへと拡大されたビッグトリプルは、ボアを拡大しつつストロークを縮小(101.6×94.3mm→110.2×85.9mm)。ギヤボックスの5→6段化など内部パーツ[…]
1897年に自転車メーカーとして創設されたインディアン。そのクルーザーシリーズはスカウト系の999cc/1133cc、チャレンジャー用の最強ユニット「パワープラス108(1768cc)」という3種の水[…]
最新の記事
- 【2024年12月版】20万円台! コスパで選ぶ 国内メーカー原付二種スクーター5選!
- 価格差11万円の「CT125ハンターカブ」と「クロスカブ110」は何が違う? 最新型スペック比較&ざっくりインプレ【2024年版】
- 「2スト×4ストのハイブリッド!?」EICMAで話題のホンダV型3気筒エンジンはMotoGPマシンとしても噂があった
- カワサキ「Z900RS」歴代カラー大図鑑【ゼファー再降臨・2021年モデル】
- 「カワサキ初の水冷マシンになるはずだった」〈幻名車〉2ストローク モンスター・SQUAREーFOUR 750(タルタルステーキ)
- 1
- 2