ベテランほど素晴らしさがわかるはず

スズキ Vストローム1050XT試乗インプレ【円熟ツイン&電脳の総合力に感動】

スズキのスポーツアドベンチャーツアラー、Vストローム1000が’20モデルで刷新され、車名の数字を1050に。今回試乗したのは装備充実&電脳度の高い上位モデルのXTだ。

新しいVストローム1050XTに乗りながら、ふと20年以上も前に発売されたバイクに思いを馳せていた。スズキ初のリッターVツインスポーツであるTL1000Sと、SBK向けに開発されたTL1000Rは、それはもう過度にパワフルで主張の強いモデルだった。この2台に搭載されていた水冷90度Vツインを、’02年に登場した初代Vストローム1000が採用したわけだが、’14年に排気量が996→1036㏄となり、さらに今回は電子制御スロットルなどを新採用。同じエンジンが20年以上も熟成されると、こんなにも扱いやすく、味わい深くなるなんて……。 

【’20 SUZUKI V-STROM 1050/XT】主要諸元([ ] 内は1050) ■全長2265 全幅940[870] 全高1465[1515] 軸距1555 シート高850[855] 車重247[236]kg ■水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ 1036cc 106ps(78kW)/8500rpm 10.1kg-m(99Nm)/6000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=110/80R19 R=150/70R17

クチバシデザインの元祖であるDR750S。先代もこれをモチーフとしていたが、新型は当時のデザイナーを起用し、さらに雰囲気を近付けてきた。なお、アルミツインスパーフレームをはじめとする基本骨格は先代から変更はない。

車名は1000から1050に変更されたが、排気量は1036ccのまま。ユーロ5対応に伴いカムや触媒を変更し、最新の電子制御スロットルを導入した。3段階の走行モードやスズキ初のクルーズコントロールなども大きなトピックだが、何より驚いたのはエンジンフィールだ。スロットル微開域での優しい反応や、3000〜4000rpm付近で振動がフワッと収斂するフィーリング、さらに高回転域まで回したときの高揚感。全てが味わい深く、それをより賢く進化したトラクションコントロールがさりげなくサポートしている。これなら飽きることなく安全に長旅を楽しめるだろう。 

’97年登場のTL1000Sに端を発する、セミカムギヤトレイン採用の1036㏄水冷90度V型2気筒。電子制御スロットルや水冷式オイルクーラーなどを新採用し、さらに上位モデルのXTはスズキ初のクルーズコントロールも導入する。

乗り心地もいい。KYB製のφ43mm倒立式フォークと、同じくKYB製のリンク式モノショックは、先代よりもソフト方向にリセッティングされている。ギャップ通過時の突き上げがほぼ皆無なほど衝撃を柔らかく吸収しながら、強いブレーキングでも過度に前のめりにならない。これはXTが採用する6軸IMUとABSユニットによるモーショントラックブレーキシステムが、うまくリヤにも制動力を配分しているからだろう。さらに、下り坂や積載状態に応じて前後の制動力を補正する機能も備わっており、その介入度はライダーが気付かないほどに自然だ。 

高さを11段階に調整できるスクリーンやナックルカバーによる防風効果は、アドベンチャーモデルの中において平均点以上。スタイリングだけでなく性能でも語れる秀作だ。