トライアル世界選手権で7度チャンピオンを獲得したジョルディ・タレス。そのタレス氏が開発しているトライアルマシンが TRRSだ。そのTRRSにセルを装備したニューモデルX TRACK RR-E250が登場。その走りを徹底チェック!
小林直樹がインプレ! セル装備で70kg! どこでも行ける超軽量オフロードマシン
車重の軽いトライアルマシンの中でも、超軽量マシンとして知られているTRRS。世界選手権でアダム・ラガ選 手が使用するモデル「TRRSラガ レーシング」に、ビッグタンク、シー ト、セルスターターを搭載しているのが、「XトラックRRE250」だ。
ヨーロッパでは、ルートを移動しな がらセクションに挑む「ツーリングトライアル」が長い歴史を持ち、日本でも「イーハトーブトライアル」が 40年以上開催されている。そうした競技に参加するトライアルマシンには、移動時の快適性を高めるためにシートを装着するが、TRRSはそのシートを独自に開発。セルスターターの搭載について、当初TRRSは重量増を嫌って否定的だったという。しかし、日本正規輸入元であるエトスデザイン近藤会長の熱心なオファーにより採用が決定。しかも単なる後付けではなく、クランクシャフト、フライホイール、クランクケースを新設計することで軽量コンパクトさを実現している。このXトラックRRE250の走りを、小林直樹師範に聞いてみよう。
「TRRSの初期型に乗って全日本トライアルに参戦していたけれど、その時よりもかなり進化しているね。 電気系統が改良されて点火が強くなり、極低回転からトルクが出つつ、高回転までスムーズに回る。そしてクラッチがかなりよくなった。以前は長時間乗っているとタッチが変わってしまったけれど、新型は切れとつながりが変わらず、つねにスパッとつながる。マシンコントロール性が変わらないから、どんな状況でも扱いやすく感じるんだ。
それとやっぱりセルは便利。ボタンを押すだけですぐかかるし、何より重量増が一切感じられない。これはシートとビッグタンクもそう。装着されていることで重量増は感じないし、ライディング時にも一切じゃまに感じなかった。逆にシートがあるおかげで、テールスライドやウイリーはオフロードマシンのようにコントロールしやすくなっているんだ。たとえばウイリーでは、シートのないトライアルマシンだとお尻を安定させにくく、体がズレてしまう。しかしXトラックはシートがあるので、そうしたアクションライディング中にも いい位置に座っていられる。いいポジションが決まるからバランス修正がしやすいんだ。
それとこのシートは角を削ってスリムになっていて、敢えて硬めに仕上げられている。この硬さがお尻の沈み込みを防ぎ、いいポジションをキープしてくれるんだ。シート高も低く、足着き性も抜群にいいから、ガレ場やマディでは足を着きながら走破していきやすいし、軽い車重と太いトルクはヒルクライムでのトラクション性のよさにもなっている。トライアルマシンならではの高い走破性はそのままに、シートが装着されたことでオフロードマシンのような扱いやすさも身につけているのが大きな特徴だね。さらに公道走行も可能なので、林道から林道へと走りつなぐようなツーリングにも使える。
足着き性チェック
抜群の始動性を実現するセルスターター
ただし、ギヤ比とタイヤがトライアル向けなので、高速域では車体に振れが出てくる。シートの硬さもお尻の痛みの原因になるので、長時間の高速道路はなるべく避けたほうがいいと思 う。とはいえ、加速性は申し分ないし、 市街地の交通の流れには乗っていけ る。むしろ、加速の鋭さは、モトクロッサー以上に感じるはずだよ。
トライアルマシンの走破力を持ちつつ、シートを装着したことでエンデューロモデルのようなマシンコントロール性も実現。さらにセルを装備することで、トレールマシン並みの扱いやすさも身に着けた。林道ツーリングからトライアルのようなセク ションがあるハードエンデューロまで、これ1台で楽しめるよ!」
保安部品が付属し公道走行もOK
TRRS XTRACK RR-E250 DETAILS
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