バイクの利用環境には課題が多い。今回は、原付一種の販売台数減など、さまざまな課題の根本ともなっている「駐車できない」という問題について考えたい。
●文:田中淳磨(輪)
放置車両の取締りが激化、都内だけでも102万台!
【概 要】原付一種が右肩下がりに売れなくなっている。最も大きな要因は「停められなくなった」ことだ。[1]クルマと同じようにバイク(自動二輪車)も組み込まれた駐車場法改正、[2]道交法改正による駐車違反取締りの民間委託、2006年から始まったこの2つの法改正によって大型バイクから原付一種まで放置車両として数多くのバイクが取り締まられている。これにより、生活の足、仕事の足として使われていた原付一種までが、すっかり使えないモビリティとなってしまったのだ。
なお、近年販売されている自転車ベースの電動モペッドや電動キックボードなど、定格出力600w以下の自走できるモビリティは全て原付一種カテゴリーとなる。もはや原付スクーターだけの問題ではなく、自走可能なパーソナルモビリティ全般にのしかかっている問題なのだ。また、東京都が普及を推進している電動バイク(ゼロエミバイク)も停められなければ絵に描いた餅。購入助成金を個人にまで拡大しても、原付一種・二種くらいは気軽に停められる街づく
りをしないとならないだろう。
今後の人口減少下の街づくり、SDGs(※1)の重要性、MaaS(※2)を用いたシェアリングなどを考えると、原付一種はIoT化、電動化を急ぐべきなのは明らかだ。2020年排出ガス規制は迫っており、継続生産車でも2025年11月がリミット。行政×モビリティメーカー×ICT企業といった官民、さらには公共交通との役割分担をも考慮したモビリティ・マネジメントという視点による産官学連携によるパーソナルモビリティの活用整備、復権が求められている。
【現 状】50cc超の自動二輪車はともかく、原付一種は自転車法(自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律)により自転車用駐輪場に停められるのだが、自動二輪車用駐車スペースに誘導されることも多い。この辺の認知不足が原付一種の駐輪場不足につながっていることは容易に予測できる。2006年の法改正から2018年までの12年間で東京都内だけでも102万台が取り締まられている。「5分だったら大丈夫」「配達だから大丈夫」など、かつての暗黙の了解はもう通用しない。
【課 題】国交省や自治体などから駐車場法に基づく「附置義務」という言葉がよく出てくる。附置義務条例が制定された自治体では、ある程度の大きさの施設には必ず二輪車用駐車場を作らなければならない。そうした自治体は全国に200弱ある。ただし、こうした箱もの駐車場にどれだけ期待すべきかは疑問だ。なぜなら、パーソナルモビリティの特性を考えれば、これが理想的だとは思えないからだ。自転車とさして変わらぬサイズでありながら、本当に停める場所がないのか? これが理想的な街づくりなのか? この連載ではモビリティ・マネジメントの視点からも考察していきたい。
※1 SDGs/Sustainable Development Goalsの略。2030年までの国連における「持続可能な開発目標」。機関投資家が国や企業を計る際の指標となったことから重要視されている。
※2 MaaS/Mobility as a Serviceの略。車を所有せず使いたい時だけ利用するサービス。広義ではバスやタクシーも含まれるがカーシェアリングのほか将来的なロボット・AIによる自動運転を見越したサービス構想が有力。
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