二輪車利用環境改善部会レポート#04

埼玉が三ない後進国から先進国へ【二輪車利用環境改善を考える】

二輪車の利用環境には課題が多い。今回は、さまざまな課題の根本ともなっている「三ない運動」の問題について考える。「高校生にバイクは不要」と強硬な姿勢だった埼玉県がいま、大きく変化してきている。


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三ない運動の精神を受け継ぎ、新指導要項を制定!

【概 要】三ない運動は、2012年全国高等学校PTA連合会において全国一律的な活動としては終了した。しかし、その後は教育現場に丸投げされ、方針を示した県、方針を示さず各校の判断にまかせた県などまばらな状態が続いている。

埼玉県は、入学時に「高校生にバイクは不要」と書かれた書面を配布するなど、県を挙げて三ない運動を強固に推進してきたが、この春、38年も続いた三ない運動を撤廃した。2016年12月に「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」を設置し、1年2か月の間、計9回に渡る議論の末に決定された。この検討委員会では県立高校や私立学校の生徒1640名へのアンケート「埼玉県 高校生の原付・自動二輪車に関する意識調査」も行われ、生徒の認識や関心について調べるなど決してクローズドな場で頭でっかちに下された決断ではない。

検討委員会の様子。日本大学の稲垣具志助教授を会長とし、PTA連合会長、校長協会、学校協会、交通安全協会、教習所協会等のほかバイク業界からは自工会や日本二普協がアドバイザーとして参加。

その後、2018年2月に検討結果を取りまとめた報告書が教育長に提出され、9月に「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する指導要項」が制定された。こうして埼玉県の三ない運動は「子供を守りたい」というPTAの精神を継承しながらも新しい指導要項を制定し“乗せて教える”交通安全教育へと舵を切った。

【現 状】新指導要項は2019年の4月1日から施行されている。これにより埼玉県は県教委の方針を「原則として免許取得禁止」から「一定の条件付きで許可」に転換、隠れて免許を取得していた生徒も堂々と学校に届け出て、県教委主催の安全運転講習も受けられるようになった。

その第2回となる大宮南部地区講習会では、トップ写真のようにやんちゃな子も多数参加した。茶髪に金のネックレス、“族車”のようなバイク、1980年代ならば“不良”と呼ばれたような子供らだ。彼らをアウトロー扱いすれば「バイク=悪」の概念はますます増長するだろう。彼らに歩み寄り、手を差し伸べられた埼玉県は、いまや交通安全教育の先進国だ。これこそ、文科省の意にも沿う、理想的な教育現場の姿と言えるだろう。

高校生の自動二輪車等の交通安全に関する指導要項

2018年9月25日、こうした内容で新指導要項が発表され、2019年4月1日から施行された。それまでは1981年2月に制定された「自動二輪車等による事故・暴走行為等防止指導要項」に基づき、三ない運動を強固に推進していた。

●新指導要項により埼玉県は「届出制」へ

保護者同意のもと[1]運転免許取得の学校への届出[2]バイク通学は原付に限る(許可条件は変更なし)[3]任意保険への加入[4]安全運転講習の受講 など。

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