1980年代の愛車を手放すべきか、否か。

[とても気に入ったが購入を躊躇する理由もある]英国人から見たハーレーダビッドソンの電動バイク『LiveWire』

  • 2019/7/31

ミルウォーキーの工場から送り出される最初の電動バイク、それがLiveWire(ライブワイヤー)だ。LiveWireの価格は英国で2万8995ポンドと、けっして安くはない。そこで読者が知りたいのは、以下に尽きるだろう。140マイル(約225km)のシティライディング、そしてストップ&ゴーと自動車専用道を混合したものを88マイル(約142km)をそれぞれ走って感じたこと。わずか40分で80%の充電、1時間で完全充電となること。0-60mph(約96km/h)加速を3秒でやってのけたことだ。

TEXT:Tony Carter(MoreBikes/UK)

豆乳なんて好きじゃない

いや、分かっている。好きになるべきなんだと。

牛乳の変わりにそれを飲んでいれば、1000歳まで生きることができるんだろう?

豆乳を愛することが、この地球のためになるだろうってことも知っている。それを一口飲むごとに、北極熊のベイビーが無事に大人になっていくはずなんだ。

うーむ。

「それ」はあんまり美味いものじゃない。料理に使いやすくもない。ただ、なんだか私のために、地球のために良いものらしいのだ。淡く、聖人のような良いもの。だから私は、脂っこいクリーミーな牛乳に固執し続けるだろう。誰かが牛乳とまったく同じ味わいの豆乳をつくるまで。

……もしも本当に誰かがつくり出したなら、私は再び豆乳に近づいてみるだろうか?

そんな思いを抱えながら、私はハーレーダビッドソンから届いた招待状に飛びつき、アメリカ、オレゴン州はポートランドで行われるLiveWireの試乗会へと向かっていた。だが、その完全電動式の乗り物に近づいていくのを感じながら、私の心は沈む一方だった。

なぜ私の心は萎んでいったのかって? それは249kgの車両重量に105馬力という動力性能、街乗りで146マイル(約234km)の航続距離、70mph(約113km/h)で走ると70マイル(約113km)になる航続距離……。いやはや……。

じっさい、ポートランドに到着してマシンを目の前にしたときでさえ、私の心は晴れていなかった。

【HARLEY-DAVIDSON LiveWire 2020】主要諸元■軸距1490 シート高780(各mm) 車重249kg■水冷 永久磁石電動モーター 105bhp 11.89kg-m 無段変速 リチウムイオンバッテリー 12.8V, 24 Wh, 120A 15.5kWh total, 13.6kWh min usable■ブレーキF=φ300mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ260mmディスク+2ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:2万8995ポンド(英国)

我ながら驚くほどの変節ぶり

数時間後。……私は、私自身がこれほど見事に手のひら返しを行うとは思っていなかった。

私は衝撃を受けた。おそらくあなたがこれを読みながら感じているように。

あなたが英国の田舎訛りで「一体全体どうしたってんだい?」と私に尋ねるのが聞こえてくるようだ。

スロットルとダイレクトにつながったかのようなパワーデリバリーがトニーを虜にした。

まず最初に何がよかったかというと、エンジンである。いや、モーター? タービン? なんとでも好きに呼べばいい。そのパワーユニットとスロットルのコネクションが完璧なのだ。私はこれまでに、これほど瞬間的にパワーが湧き出るバイクに乗ったことがない。右手をグルリとひねるたびに笑ってしまう。これは中毒になってしまいそうだ。

まるで引っ張られた巨大なゴムバンドの上に座っているかのようで、抑圧された力が解放された途端にすべてのエネルギーが可能な限りスムーズな方法で放出される。LiveWireのパワーユニットは“たった”86ft-lb(11.89kg-m)のトルクしかないかもしれない(これは1000ccの高性能スポーツバイクに等しい)が、その最大トルクは1rpmから100%使うことができ、1万5000rpmまで同等の加速が続くのだ。

馴染みやすく快適なライディング空間

そしてライディングポジションである。身長173cmのろくでなし(私のことだ)にとって、じつに素晴らしい。ステップ位置は高くスポーティで、ハンドルバーは少し狭すぎると当初は感じたが、ランチタイムを迎える頃には完璧だと思うようになった。燃料タンクに相当するモノは狭く、私の視界にほとんど入ってこない。総じていえば、LiveWireを走らせるのに快適な空間となっている。

そうだ、バックミラーが見事に機能していたことにも触れねばなるまい。大きさはそれほどでもなく、やや低すぎる位置に取り付けられていたのが不満ではあるが、それはさておき、すべての回転数とすべての速度で明瞭な視界が保たれた。燃焼機関がない、つまり振動がないということで、これは素敵だった。

通常であればエキゾーストパイプが通っている位置にモーターが配置される。

もうひとつ、このバイクで大きなプラスに感じたことは……鼓動を持っていることだ。そう、鼓動のようなものを。それは電源をオンにした状態で、停止して跨っているときに感じることができるトリックである。というのも、停止している状態では完全に沈黙してしまうので、電源が入っていてスロットルを回せば走り出す状態にあることを思い出させるために、2、3秒ごとにライダーの下で音を鳴らしているのだ。最初は奇妙に感じるが、すぐに慣れてしまった。最後にはそれがハートビートのように思えてしまい、バイクが生きているかのようにさえ感じてしまった。

車体に関してのフィーリングは、249kgという車重による部分もあるかもしれない。

SHOWAのフロントフォークとリヤサスペンションはまともだが、ちょっと硬すぎる。もう少し時間があればセッティングを試みることもできただろう。フロントブレーキは十分と言えるレベルまではもう少しで、レバーからのフィードバックもそれほど大きくない。通常、ブレンボ製のラジアルマウント・モノブロックキャリパーは私のお気に入りなのだが、今回はなぜか寛ぎを感じられなかった。

4.3インチのTFTカラーディスプレイは気に入った。タッチスクリーンになっていて、画面上のスライドバーを利用することで望むものに素早くアクセスすることができる。また、ライダーの乗車位置に合わせて太陽の反射光がまぶしくないよう、角度を変えることができるのが気に入った。ホンダの開発者諸君、ここはメモを取っておいてくれたまえ。

太陽が真上に来たとき、メーターの角度を変えられる機構のありがたみがわかる。

2万8995ポンド(約385万円)を出す価値はあるのだろうか?

ちょっと良く言いすぎに聞こえるって? そうかもしれない。いくつかの理由から、私はこのバイクに2万8995ポンドで買うことに躊躇を感じている。

ひとつは『充電』だ。ハーレーダビッドソンは、このバイクをスマートフォンに例えたが、たしかにスマートフォンを使うのと同じように日中はバイクを使い、一晩かけて充電することはできるだろう。

だが、私は発表会場から70マイル(約113km)の道のりの95%をスポーツモードで走ったおかげで、目的地まで8マイルとなったとき、バイクが走れる距離は「あと13マイル」と表示されていたのだ。ホテルに戻るために何か抜本的な解決法を探さなければと思ったのは、初めての経験だった。

充電ステーションのインフラも不足している。ハーレーは各ディーラーに2台まで同時に充電できるケーブルを備えている(これは良いことだ)が、エコシティであるポートランドで自信を持って発表会を行った割には、私の乗ったLiveWireが電力不足の警告を発するまでに間に充電ステーションを見かけることは一度もなかった。

充電ステーションがガソリンスタンドと同じくらい一般的にどこでも見かけるようになるまで、私たちは電動バイクをどのように扱えばいいのだろうか? 取り外しできる交換式バッテリーを採用する? この大きな問題が、実際に所有することをためらわせている。

日常の使い方に合致するなら、こんなに面白いバイクはない

私はこの電動バイクをすっかり気に入ってしまったからこそ、まだ解決しなければならないことがあるのを残念に思っている。

バイクにリンクしたアプリは、バイクが指定された範囲の外に移動したことを検知すると、自動的に警察にリポートする。これは素晴らしい機能だ。また、ライディングモードを操作して電力の回生をどの程度行うかも簡単に選ぶことができる。これらはよく考え抜かれており、業界標準になってもいいくらいだと思った。

ノイズは、ある。電動だからといってまるっきり静かなわけではなく、速く走らせるほどにギヤからの騒音は大きくなっていく。

さあ、最初に言ったことに戻るとしよう。私はこのバイクに乗るのが大好きになってしまったことに驚いている。しかし、充電ステーションの問題と、一回の充電で走行可能な距離は、まだ私を説得するのに十分とは言えない。当分の間、私のお金は白煙を吐き出す2ストロークや1980年代のスーパーバイクに費やされるだろう。だが、少なくとも一度はLiveWireに乗ってみてほしい。このバイクがあなたの古い価値観を吹き飛ばすことを約束しよう。そして、あなたが日常的にあまり遠くまで走らないのならば、ただ素晴らしい楽しみだけが待っている。

※日本への導入時期と価格は未定

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ヨ

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)