水平対向2気筒エンジン=ボクサーツインは、テクノロジーの面でも、特徴的な見た目でも90年以上の長きにわたってBMWの象徴となってきた。そんなBMWが電動モーターサイクルをつくるならば、どのようなルックスを与えるべきなのか? そのひとつの答えが示された。コンセプトモデルの名は『BMW Motorrad Vision DC Roadster』という。
まずは動画を御覧あれ!
BMWの心臓=逞しきボクサーツイン
BMWが突如発表したゼロエミッションモーターサイクルは、「もしも象徴的なボクサーツインを電気モーター&バッテリーに置き換えたら?」というコンセプトでつくられている。この新しいコンセプトモデルは、BMWの象徴的な外観を電動モーターサイクルにも反映することができ、同時に今までとは異なるライディングプレジャー(走る喜び)を提供できると示唆するものだ。
BMWモトラッドのデザイン責任者であるエドガー・ハインリッヒ氏は「これを開発してみてよく分かったのは、電動パワーを得た2輪車を走らせることはとてもエキサイティングということ。ハイレベルなトルクは息を呑むような加速を見せてくれるからだ。荒々しいパワーデリバリーは、今までにないダイナミックなパフォーマンスをもたらしてくれる。この『BMW Motorrad Vision DC Roadster』は、まったく新しい経験を私たちに突きつけたのだ」と語っている。
新しい走りと、親しみをもって受け入れられる外観
モーターサイクルにとって、原動機(大半はエンジン)はその核となるもの。パフォーマンス面だけではなく、バイクの構造においても非常に大きな要素だ。ところが、電気モーターはまったく異なる搭載スペースを要求してくる。従来のエンジンであれば、そのサイズはおおよそ排気量によって決まるが、電動モーターサイクルの場合はバッテリーがもっとも大きな要素を占めるのだ。それに対し、電気モーターはかなりコンパクトと言っていい。
BMWは、電動モーターサイクルならではのこうした新しい車両構成要素を、BMWの象徴的な外観のなかに落とし込むというチャレンジを行った。それゆえにこの『BMW Motorrad Vision DC Roadster』は、ひと目でBMWのモーターサイクルだと理解できるのだ。
エンジンの代わりに嵌め込まれたのは、縦に搭載された縦長のバッテリー。そしてこれを冷却する目的で、2つの冷却リブと換気装置が左右に突き出ることになった。これこそが、1923年にマックス・フリッツが開発したBMW R32のボクサーエンジンと同じように、最適な気流のある場所に冷却システムを置くという、BMWならではの伝統の再現なのである。
原動機であるモーターは筒状の形とされ、バッテリーの下に配置。駆動用のユニバーサルシャフトはモーターに直接連結されている。『BMW Motorrad Vision DC Roadster』は、BMWの歴史を視覚的に反映しながら、新しくスマートなドライブアーキテクチャ(駆動構造)を実現したのだ。
パフォーマンスはスタイリングに表現される
マシンを横から観察すると、フロントホイールの向きによって車両の動きがダイナミックに視覚化されることがわかる。低く短いフロントセクションは、アグレッシブに高く持ち上がったリヤセクションとの対比で運動性を表現。通常の燃料タンクがある場所には、パイプをハブに集約して左右のアルミ製フレームを連結した構造体があり、これがシートフレームにまでつながって、モダンかつスポーティな外観をもたらしている。
横に突き出した冷却システムを備える大型のバッテリーは、このアルミフレームの中央にマウントされる。バッテリートリムの表面は3次元に削り込まれ、モダンな美しさを表現。冷却システムはバッテリーのシルエットを前寄りに見せつつ、動感を表現することにも役立った。ちなみにこの冷却システム、電源をオンにすると外側に開き、走る準備ができていることを表現するというから面白い。
ハイテクマテリアルが実現する軽さとパフォーマンス
『BMW Motorrad Vision DC Roadster』のアピアランスは、軽さと躍動感を表現している。そして実際に軽い。
シートや冷却システムはバッテリーの周囲に浮かぶように配置され、フレームに刻まれた多数の縦溝は縦方向のダイナミックな視覚的効果をもたらす。この視覚効果は、左右のフレーム間に配置されたパイプ連結による開口部により、さらに強調されている。そしてアルミニウムやカーボンといったハイテクノロジーな素材は実際に車重を削り取り、また外観からも最新技術をアピールする。その一方で、赤と黒でコントラストを表現したバッテリーやフレーム、冷却システムなどは、視覚的にその革新性を表現したものだ。
高品質なディテールを見よ!
車両全体の高品質な仕上げも、『BMW Motorrad Vision DC Roadster』の見所のひとつだろう。ダークカラーをコンセプトとし、ユニバーサルシャフトやデュオレバーなどが機能美を表現。これら2つのBMWならではのメカニズムも、未来に向けて再解釈したものだ。同じくフレームも、初期のBMWのモーターサイクルの典型的な特徴を反映している。
一方、ミニマルデザインの前後ライトはモダンスタイルとした。ヘッドライトはLEDによるDRL(BMWはデイタイムライディングライトを呼称)はフラットのUの字になっており、小さな2つのレンズがハービームとロービームの機能を持っている。この特徴的なライトデザインにより、昼夜を問わずBMWのモーターサイクルをアピールできるわけだ。そしてテールランプは、2つのCの文字を組み合わせたような形で、もちろんLED。アルミ製のリヤキャリアにインテグレートされる。
タイヤはこのコンセプトバイクのためにメッツラーが製作したものだ。タイヤの側面には、切手ほどの大きさの5つの蛍光エレメントが配されている。
走っていても停まっていても、BMWのまったく新しいモーターサイクルであることを常にアピールし続けられる外観は、まさに新世代のビジョンにふさわしいと言えるだろう。
ライダーの装備にも新機軸
同時に発表されたライディング用の2ピーススーツは、パッと見ではそれほどプロテクション機能を備えていないように見えるが、実際にはプロテクターが見えないように配置された機能的なウエアとなっている。さらに、非対称デザインのリュックサックを磁石で固定できるという斬新なつくりとなる模様だ(写真では詳細なし)。
『BMW Motorrad Vision DC Roadster』は、BMWの新世代のシンボルとして、先進的な電動ドライブシステムと伝統に根ざした美しさを備え、将来のビジョンを表現している。
※記事末に写真ギャラリー[大量]あり
情報提供:BMW Motorrad
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