2018年8月8日、都内でPCX HYBRID(PCXハイブリッド)の試乗会が開催された。まずは編集部員が原付二種の125ccで発売されるPCXハイブリッドをエンジンモデルのPCXと比較。また、新たに公開された新情報もお届けしよう。
【インプレッション】圧倒的じゃないか、ハイブリッドは
今回はガソリン車のPCX(125cc)も同時に試乗したのだが、PCXハイブリッドの出足の鋭さは圧倒的だった。アクセルを開けると4秒間エンジンをアシストしてくれる、グッと押し出すようなモーターの威力はもちろんなのだが、ハイブリッドシステムの採用によってアイドリングストップからのエンジン再始動が素早くなり、遠心クラッチのミートタイミングも早められたため、ガソリン車と同タイミングでスロットルを開けて発進しても、PCXハイブリッドはまるでフライングしたかのように先行できるのだ。このスタートダッシュだけでもガソリン車を二車身はリードできてしまう。
そこから先の加速力はほぼ同等だが、じつはPCXハイブリッドには「裏ワザ」がある。前述のとおりモーターアシストは「アクセルを開けてから4秒間」だから、アシストが途切れたら一瞬スロットルを戻し、すぐにまた開けるとモーターアシストが復活するのだ。これを繰り返せば、既にニ車身のリードを付けたガソリン車をさらにジワジワと引き離していける。メーターに表示されるアシストレベルをチラ見しつつ、モーターの力をフル活用しようと工夫して走らせていると、何だか自分の手で潜在能力を引き出せたかのような充実感に浸れるのだ。
とはいえ勘違いして欲しくないのは、PCXハイブリッドは単なるシグナルGP上等のヤンチャスクーターではない、ということ。モーターアシストのオン/オフやリチウムバッテリーを充電するための回生動作は、その介入を全く感じさせないほど滑らかに調律されていて、急なパワーの盛り上がりや唐突な減速感といった不自然さは皆無。こうした違和感のない緻密な制御こそ開発陣が最も注力した部分とのことで、軽二輪版のPCX150同等だという加速力を原付二種の枠内で、とても上質なフィーリングとともに味わうことができるのだ。 ※テスター:マツ(ヤングマシン)
【開発の狙い】コンセプト
PCXハイブリッドが目指したことは、ズバリ走る喜びを体感してもらうこと。初代PCXから受け継がれてきたコンセプト「パーソナルコンフォートサルーン」を継承し、4月に発売されたガソリンエンジンモデルで進化した快適で上質な走りをそのままに、このクラスのコミューターにおいても走りに高揚感をプラスする。この狙いの実現のために量産2輪車初となるハイブリッドシステムが開発され、エンジンとモーターのハイブリッドによるトルクフルな出力特性がライダーの入力に対しスムーズに反応する。
【開発の狙い】ハイブリッドシステムのモーター
今回開発されたハイブリッドシステムの目標には、PCXの車体パッケージに収まる効率的なコンパクトなシステムであること。そして、PCXの上質な走りを受け継ぎながらハイブリッドならではの高い動力性能を発揮することが掲げられた。ガソリンエンジンモデルでは始動、発電用となっているACGスターターに駆動アシスト機能を追加。また、ステーターのコア体にハイブリッド駆動モーター用電磁鋼板を採用することで、高効率な専用モーターとし、基本構造を変えずコンパクトなユニットを実現している。
【開発の狙い】ハイブリッドシステムのバッテリーパック
エンジンへのモーターアシスト出力のエネルギー源には、高出力48Vリチウムイオンバッテリーを採用。リチウムイオンバッテリーとバッテリーマネージメントユニットをリチウムイオンバッテリーバックに収納することにより、コンパクトなバッテリーパックを実現している。これらにより、フルフェイスヘルメットを収納できる容量23Lのラゲッジボックスを確保すると同時に、125ccの限られたスペースに搭載しPCXの車体サイズに収まる車体パッケージを実現した。
【開発の狙い】ハイブリッドシステムの作動
加速する際、ライダーのスロットル操作や角度をスロットルポジションセンサーによって検知し、エンジンとバッテリーの状態からPDU=パワードライブユニットが最適なアシストトルクを算出する。それにより、リチウムイオンバッテリーをエネルギー源とし、ACGスターター&アシストモーターを駆動させ、エンジンをアシストするようになっている。リチウムイオンバッテリーの充電は、クルーズ中、減速時など、加速中以外にACGモーターが発電しPDUを介してリチウムイオンバッテリーを充電する。
【開発の狙い】ハイブリッドならではの動力性能
図のように低中速を中心としたモーターアシストにより、4000rpmで最大約33%、5000rpmで22%トルクが向上。アシスト時間はアシスト開始から最大トルクを約3秒間継続し、その後1秒かけて徐減させていくシステムとしている。エンジンへのアシストはスロットル開度に合わせたセッティングとし、PCXと同等の扱いやすさを維持しながらも俊敏な加速を行うことができるようにした。また、向上したトルクに合わせてドリブンフェイスを専用設計とすることで、PCXガソリンエンジンモデルに対しエンジンの静粛性などの上質感をアップさせている。
【開発の狙い】ハイブリッドが実現した時短
数値性能で現れるタイムだけでなく、モーターアシストを用いることで発進時では従来のガソリンモデルではおよそ4回目の爆発でクラッチミートしていたものが、ハイブリッドではおよそ3回目の爆発でクラッチミート。これまでのこのクラスのスクーターでは実現できなかったダイレクトな加速フィーリングを実現している。また、より早いクラッチミートタイミングは、走行時だけでなく停車時でもアイドリングストップまでの時間の短縮にも貢献しており、燃費、静粛性の向上に寄与している。
【開発の狙い】ハイブリッドのアシスト特性を選べるモード切り替え
PCXハイブリッドは、3つのアシストモードで走行シーンやライダーの好みに合わせてモーターのアシスト特性の切り替えを可能としている。Dモードはリラックスした快適な走行と適度なアシストを両立。Sモードはアシスト力が強まりスポーツ性の高い特性で走る楽しさをより感じられるようにしている。また、アイドリングストップをしないアイドリングモードも設定した。これらのモード切替は左側のハンドルスイッチのモード切替スイッチによって行うようになっている。モードは走行中にでも切り替えることができ、渋滞やワインディングなどのシーンに合わせた走りに対応している。
取材協力:本田技術研究所/ホンダモーターサイクルジャパン
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