![[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/attachmentfile-file-22579.webp)
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:藤原らんか
1980年代のレプリカ時代に主役だった2ストロークエンジン
かつての1980年代は、ヤマハRZ250に始まり、ホンダNS250R/スズキRG250Γ/ヤマハTZR250、そしてホンダNSR250R…、価格が手頃な250ccクラスが、ビッグバイクを凌ぐ加速やコーナリング性能を楽しめるパフォーマンスで大人気に。世界GP頂点の500ccGPマシンに至るまで、2ストロークエンジン全盛の時代が存在していた。
4ストロークが吸気/圧縮/爆発/排気の4行程を、ピストンが2往復、その上下動を回転に変換するクランクシャフトが2回転するのを必要とするのに対し、この2ストロークはピストン1往復/クランクシャフト1回転で済むため、燃焼爆発の回数が2倍となることから、パワーを稼ぎやすいのが特徴だ。
DOHCなど機械的にバルブを開け閉めしない複雑なメカニズムを必要としないため、シンプルな構造が小排気量エンジンに向いていて、1960年代以前は2ストバイクのほうが多かったほど。
ただ、マフラーからオイルを燃やした煙が出るなど、厳しくなる排気ガス規制の下で、現在はほぼ姿を消してしまっている。
この2ストエンジン、なぜバルブがないのに吸気と排気を入れ替えられるのかなど、あらためてその仕組みを説明しよう。
ピストン1往復の毎回爆発でパワーを稼ぎやすい2スト
下図のように、2ストロークは毎回爆発で、その行程には1次圧縮とか掃気など、4ストロークにない部分もある。そこで、ピストン1往復、クランクシャフト1回転の間に、どんなことが起きているのか、ひとつひとつを解説すると…。
ピストンが上昇すると、クランクケース内が負圧になって、混合気を吸い込む行程と同時に燃焼室で圧縮される
2ストエンジンは、クランクケースが密閉されているため、ピストンが上昇(燃焼室側では圧縮中)しているとき、ピストンより下側のクランクケース内がマイナスの圧力=負圧となって、クランクケースに取り付けた逆流防止のリードバルブ(ハーモニカのようなリード弁)が開いて、ガソリンと空気の混合気を吸い込む。
それと同時に、ピストンの上側=燃焼室側では、(後で説明する)掃気ポートから送り込まれた混合気が、ピストンの上昇で掃気ポートも閉じられ他状態に成り、燃焼へ向け2次圧縮されていく。
クランクケースにリードバルブが装着されたのは1980年代中盤以降で、その前はシリンダーの吸気ポート手前にリードバルブがあったり、さらに昔は吸気ポートへ何も介さずキャブレターを装着していた時代が長く、吹き返しといって吸気がかなり逆流していた。
また、ロータリーディスクバルブと呼ばれる、クランクケースの真横に切り欠きのある円盤を回転させ、吸気ポートの開け閉めをするレーサーに多かった方式もあるが、説明もややこしくなるので今回は省いて、次の行程に移ろう。
燃焼爆発でピストンが下降すると、ピストンより下のクランクケース側では吸気の1次圧縮が始まる
次が燃焼室側の爆発によって、ピストンを下へ押し下げている初期の状態でパワーを発生している行程。このピストンが下降することで、ピストンより下のクランクケース側では逆流防止のリードバルブが閉じているため、クランクケース内は吸い込んだ混合気が圧縮されることに。
この圧縮を1次圧縮と言って、シリンダーに開いている掃気ポートからシリンダー内の燃焼室へ混合気を送り込むために加圧されていく。
ピストンのさらなる下降で、燃焼室側では排気ポートから排気ガスが排出され、クランクケース内の1次圧縮が最大となる
押し下げられ下降しているピストンが、シリンダーに開けられた排気ポートの位置を過ぎると、排気ガスの排出が始まる。ピストンより下のクランクケース側は、ピストンが下がるほどに1次圧縮が高まり、掃気ポートから燃焼室へ混合気を送り込む寸前の状態となる。
ピストンの下死点で掃気ポートが開き、混合気が燃焼室へ送り込まれ、排出されている排気ガスと入れ替わる行程となる。
さらにピストンがもっとも低い位置の下死点に近くなると、シリンダーに開いた掃気ポートが顔を出し、1次圧縮された混合気が勢いよく燃焼室へ流入してくる。
ただ、排気ポートも開いているため、燃焼室には入ってきた混合気と燃焼を終えた排気ガスとが一瞬同居する状態になる。
ここで新しい混合気が排気ポートから排出されないよう、2ストロークエンジン特有の排気管が極端に膨らんだ部分を持つ、エキスパンションチャンバーという構造によって、排気ガスの半ば反発しようとする弾力を利用して、新しい混合気を燃焼室へ留めておく効果を生じているのだ……
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ライドハイの最新記事
ヤマハの社内2stファンが復活させたかったあの熱きキレの鋭さ! 「ナイフのにおい」R1-Z の広告キャッチは、ヤマハでは例のない危うさを漂わせていた。 しかし、このキャッチこそR1-Zの発想というかコ[…]
空冷ビッグネイキッドをヤマハらしく時間を費やす! 1998年、ヤマハは空冷ビッグネイキッドで好調だったXJR1200に、ライバルのホンダCB1000(Big1)が対抗措置としてCB1300を投入した直[…]
400で初のV4でもホンダ・ファンは躊躇なく殺到! 1982年12月にリリースされたVF400Fは、このクラスでは12,500rpmの未経験な超高回転域と0-400mを13.1secという俊足ぶりもさ[…]
マイノリティ好きにはたまらない2スト250で3気筒、走りに刺激はなかったけれど海外でもファンが少なくなかった! カワサキが世界進出の勝負球として、500ccで2ストローク3気筒のマッハIIIをリリース[…]
Zを知り尽くしたエンジニアならではの勘ドコロを押えた絶品設計! 1989年のゼファー(400)が巻き起こしたネイキッド・ブーム。 カワサキはこの勢いをビッグバイクでもと、1990年にゼファー750と1[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
3気筒と変わらない幅を実現した5気筒エンジンは単体重量60kg未満! MVアグスタはEICMAでいくつかの2026年モデルを発表したが、何の予告もなく新型5気筒エンジンを電撃発表した。その名も「クアド[…]
出力調整を極限まで最適化&他技術との連携で相乗効果 キャブやFIスロットルボディの吸気量を決めるバタフライの開閉をワイヤーで繋がったスロットルグリップで人間が直接調整していたのが旧来の方式。これに対し[…]
Eクラッチと電子制御スロットルが初めて連携する750シリーズ ホンダが欧州2026年モデルの5車にEクラッチを新搭載。これまでにミドル4気筒の「CBR650R」「CB650R」、250cc単気筒の「レ[…]
第一世代登場は20年も前! まず最初に言っておこう。”喰わず嫌いしていると時代に取り残されてしまうぞ。いずれほとんど自動クラッチに置き換わっても不思議ではないのだ”と。なぜそこまで断言できるかというと[…]
“レールのないジェットコースター”のコンセプトはまさに二輪車のFUNを体現 ホンダは、昨年のEICMA 2024で世界初公開したV型3気筒コンセプトモデルに続き、「V3R 900 E-Compress[…]
人気記事ランキング(全体)
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
伝統の「火の玉/玉虫」系統 Z900RSのアイコンとも言える、Z1/Z2(900 SUPER 4 / 750RS)をオマージュしたキャンディ系カラーリングの系統だ。 キャンディトーンブラウン×キャン[…]
ヤマハの社内2stファンが復活させたかったあの熱きキレの鋭さ! 「ナイフのにおい」R1-Z の広告キャッチは、ヤマハでは例のない危うさを漂わせていた。 しかし、このキャッチこそR1-Zの発想というかコ[…]
高機能なウィンタージャケットを手に! 今だけ34%OFF コミネの「JK-603」は、どんなバイクにも合わせやすいシンプルなデザインのショート丈ウィンタージャケットである。 見た目の汎用性の高さに加え[…]
電子制御CVTがもたらすワンランク上の加速性能 ヤマハ軽二輪スクーターのNMAX155は、ʼ25年型で大幅進化。パワーユニットの熟成、リヤのストローク5mm延長を含む前後サスペンションのセッティング最[…]
最新の投稿記事(全体)
Amazonランキング1位! カエディア USBチャージャー「KDR-M3C」を選択 携帯電話所有者のスマートフォン比率が2024年現在で97%というデータがあるなど、もはや日常生活に切っても切り離せ[…]
カード型デバイスで情報資産を瞬時に構築する! Notta Memoは、AI議事録サービスで知られるNottaがハードウェア市場に参入して開発した新デバイスだ。その最大の魅力は、名刺入れサイズを謳う薄型[…]
ヤングマシン電子版2026年1月号[Vol.638] 【特集】◆電動セロー!?で旅に出よう 漫画/アニメ『終末ツーリング』 ◆岡崎静夏のいつもバイクで! Honda CUV e:◆Honda CB10[…]
フィジカルの土台作りから本気の肉体改造まで ホームフィットネス製品を展開し、日本においてトップクラスのEC販売実績を誇るステディジャパン株式会社(STEADY)が、年末を達成感で締めくくり、「なりたい[…]
ツーリング中の悩みを解消する360度回転 スマホをナビとして使用する際、最も重要なのは「見やすさ」だ。直射日光の当たり方や、ライダーの視線、バイクのメーターやインジケーターとの干渉など、走行状況によっ[…]
- 1
- 2


![2ストロークエンジンの仕組み|[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_161_01-768x432.jpg)
![2ストロークエンジンの仕組み|[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_161_02_01-768x432.jpg)
![2ストロークエンジンの仕組み|[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_161_03_02-768x432.jpg)
![2ストロークエンジンの仕組み|[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_161_04-768x432.jpg)
![2ストロークエンジンの仕組み|[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_161_05-768x432.jpg)
![2ストロークエンジンの仕組み|[バイクのメカニズム] 2ストロークエンジンが毎回爆発できる仕組みって?〈ネモケンのライドナレッジ〉](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_161_05_01-768x432.jpg)



































