ツーリングで前を走ってくれている熟練ライダーが、信号待ちから発進加速するたびに、1~2秒ごとにシフトアップして瞬く間に4速とか5速まで入れてしまうのに気づきました。ゆっくり加速しているのに、なぜそんなに忙しい操作をしているのですか?
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:藤原らんか
どうして不必要に思えるほどシフトアップを繰り返すのか?
A. 4,000rpm以上の中速域でパーシャルスロットル(加速も減速もしないスロットル開度)を嫌うからです。他にも常に少し駆動している状態をキープしたほうがスムーズでバイクに負担をかけないなど、忙しく操作してもメリットがあるからです。
確かにキャリアのあるライダーほど、発進から短い間隔でサッサとシフトアップを繰り返します。まだ慣れていないライダーからすれば、クラッチを切ってギヤチェンジしてからクラッチを繋ぐ操作は、たまにうまくギヤが変わらなかったり、そのたびにギクシャクするので、できたらやりたくないことのひとつでしょう。
発進して変えなくて済むなら、さすがにローギヤで40km/hとかは落ち着かないので、セカンドにはシフトアップするけれど、まァ変えても3速までなら自分からすれば???な操作でしかない、そう思われているかもしれません。
まずバイクを乗り続けてくると、エンジンの回転を中速域・4000~6000rpmあたりの回転域で一定の速度で走り続けるのは避けたくなります。
40km/hとか、一定の速度で交通の流れに合わせると、スロットル開度は加速も減速もしない、ハーフスロットル(専門用語でパーシャルスロットルとも言います)で走ると、エンジンに負荷がかかっていないため、必要のない振動を誘発しやすくなるからです。
オートバイはエンジン内部のギヤをいくつか介して、ドライブチェーンで後輪を駆動しています。見えてる部分のほうが感覚的にわかりやすいと思うので、このドライブチェーンを例に説明しましょう。
先ほど説明したパーシャルスロットルで一定の速度をキープする走りだと、ドライブチェーンは加速のときのようなピンと張った状態にならず、何となくジャラジャラと少し上下に振れながら動作しています。
実はエンジンは燃焼爆発を繰り返しながら回転しているので、常にグイッと回そうとするトルクが働いている時間と、何もチカラが加わっていない時間とが必然的にあって、いわば脈動しながら回転しています。
だからパーシャルスロットルだと、ドライブチェーンがジャラジャラと上下に小さく振動してしまうのです。電気のモーターのように、どの回転域でも振動がないというわけにはいきません。
このドライブチェーンと同じ状態がエンジンの中でも起きていて、いくつものギヤで繋がっているギヤの歯が噛み合っているわずかな隙間のガタ(バックラッシュと言います)や、クランクシャフトを支えているベアリングなどにも、この脈動を原因とする振動が伝わってしまいます。
これが不快なのと、厳密には摩耗を早める可能性もあります。
低い回転域で常に少し駆動している状態にしておく
それよりは、少しの駆動力で良いので、低い回転域のわずかに加速してる状態のほうが振動も出ません。振動がないほうがスムーズで快適なだけでなく……
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