GPZ900R生誕40周年は、ニンジャ生誕40周年でもある。現代のカワサキの多くの車名に使われるようになった元祖ニンジャは、今も現役。40周年の節目に、まだまだ盛り上がろうとしている!
初代ニンジャ=カワサキGPZ900Rが登場した1984年って?
1984年はロサンゼルスオリンピックが開催され、15年ぶりに新札(福沢諭吉/新渡戸稲造/夏目漱石)が発行された。ロス疑惑やグリコ森永事件などが起き、日経平均株価は初めて1万円台を突破。三菱ミラージュのTVCMでエリマキトカゲが走り回った。
それはバイク&レースブームが加熱していく時代でもあり、1982年には328万5000台のバイクを販売。1984年の全日本ロードレース選手権500ccクラスでは、平忠彦選手が2年連続チャンピオンを獲得。世界GP500ccクラスは、エディ・ローソン選手がタイトルを獲得。この後、ホンダ/ヤマハ/スズキは2ストレプリカに力を入れていくが、カワサキのアプローチは少し違った。
カワサキは1978〜1981年まで世界GP250ccクラスを連覇するが、1983年に世界GPを撤退。1984年に、世界GPマシンであるKR250&350のノウハウを注ぎ込んだ、2ストロークタンデムツインエンジンを搭載した市販車のKR250を発表。後にKR-1を発表し、2ストロークに力を入れるが、世界GPを撤退してしまっていたため、レーサーレプリカのレプリカがない代償は大きかった。
一方で、カワサキは水冷4気筒エンジンに注力し、1984年にGPZ900R(A1)を発売。「Ninja」のペットネームが付けられ、初のニンジャが誕生した。そして、GPZ900Rは1986年に公開された映画トップガンで世界的に有名に。その後、GPZ900Rは数々のマイナーチェンジをしながら、2003年のA16まで生産されるロングセラーとなったのだ。そんなGPZ900Rは、2024年に生誕40周年を迎える。
今回は長年GPZ900Rを手がけてきたMC.ジェンマの石田道彦さん、元カワサキのテストライダーである齋藤昇司さんと、40周年を迎えるGPZ900Rを今シーズンどのように楽しんでいくかを考えていきたいと思う。
GPZ900Rのエンジンは本当に生まれが良かった
「まさかまさかA16までやるとは。『こんなに引っ張るんかいって(笑)』。10年目くらいにそろそろ十分って思ったけど、異例ですよね。
GPZ900Rは、カワサキ初の大型水冷4気筒として登場。このエンジンは、その後のフラッグシップに使われて、最終的はZRX1200DAEGまで使いました。GPZ900Rは直接テストに関わってはいませんが、隣りで見ていました。Z1系に変わるエンジンとして気合いが入っていましたね。本当に生まれの良いエンジンでした。
エンジンはモデルチェンジのたびに少しずつ変えながら、最高速は1996年のGPZ1000RXが260km/h、1988年のZX-10が270km/h、1990年のZZR1100(C)が280km/hと、新型になるタイミングで10km/hずつ伸びていったんです。ZZR1100(C)はテストでは290km/hを超えていて、ZZR1100(D)で『300km/hいくぞー』となったけれど、この頃から過激なことができない時代に。『惜しかった(笑)』ですね。
その後もZRX1100&1200系やZZR1200に採用。だから、GPZ900Rのカスタムでは色々なエンジンを使えるんだと思います。面白いですよね」と齋藤さん。
齋藤さんは当時、フラッグシップの開発で谷田部や富士スピードウエイを走り回っていた。上記のフラッグシップ系だけでなく、開発を担当したバイクは多岐にわたる。齋藤さんが最後に担当したバイクは、2000年に登場したZX-12R。齋藤さんがひたすらパフォーマンスを追求し続けている時も、GPZ900Rは大きくスペックを変えずに販売を続けた。いま考えても、なんて稀有な存在なのだろう…と思う。
そんなGPZ900Rを支え続けたのは、ユーザーである。何にも似ていないGPZ900Rは、世界中で人気だった。カスタムも盛り上がり、人気漫画にも登場。たびたびブームが訪れたのである。
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GPZ900Rも部品供給を考える時代に
MC.ジェンマは、GPZ900Rのプロショップとして、2023年に広島の福山から東大阪に移転。ケイファクトリーの近所を拠点とすることで、パーツ開発やマシンの熟成速度が飛躍的に向上。代表の石田さんはGPZ900Rのカスタムやメンテナンスを手がける一方で、GPZ900Rの可能性を追求。現在は筑波サーキットで開催されるテイスト・オブ・ツクバにも参戦し、さまざまなチャレンジを続けている。
「暗い話になってしまいますが、GPZ900Rもそろそろ部品が枯渇してきています。そこはZの先輩達を見習いながらなんとかしていきたい。やはり、長く安心して楽しんでいただきたいんです。消耗部品の確保や乗り続けるための整備や修理が大切。特にミッションやセルまわりは課題ですね」と石田さん。
40周年を迎えるということは、こういうことでもあるのだ。GPZ900RのエンジンはZRX1200DAEGまで基本ベースが同じであるため、ZRX系やZZR系の部品を使ってメンテナンスやチューニングをすることができた。これが40年間走り続けられた理由でもあるのだが、いよいよ部品供給が深刻になってきた。
「今、色々な方に相談しています。部品供給をなんとかするのが僕の役目。最近は若いGPZ900R乗りも増えてきました。お父さんの影響や、職場の先輩に勧められてという方もいます。そんな彼らに安心して乗ってほしい。GPZ900Rを継承していきたいんです」と石田さん。
2024年、MC.ジェンマは齋藤さんの監修で2台のGPZ900Rを制作!
今、GPZ900Rに乗るコアな年齢層は50〜60歳代。1980年代のバイクブームをリアルに感じていた方、そしてその時代にGPZ900Rに憧れた方が多いのである。そこで石田さんは、2024年に2台のGPZ900Rの制作を考えている。1台は現代のパーツとノウハウでスペックを追求したスポーツ仕様。もう1台は、年齢を重ねたライダーがもっと気軽に楽に乗れるツーリングニンジャだ。
スペックを追求したスポーツ仕様は、石田さんが培ってきたGPZ900Rの集大成ともいえる1台。シングルシート仕様で、サーキットでも速さをアピールできる性能を与える。ツーリング仕様は、ベテランがもう少しリラックスして乗れる仕様にしたいという。
「楽に走れる、ゆったり走れるGPZ900Rを作りたいですね。リヤの車高を上げていったりすると、どうしても乗り味が忙しくなります。そういったのもアリですが、クルーザーの提案もあり。近年、ノーマルに近い仕様にも乗りましたが、良いんですよ。サスペンションやブレーキを少し触って、今風にオシャレな1台がいいかもしれません」と齋藤さん。
「齋藤さんに監修していただきながら、2台を提案したいですね。リヤを上げすぎたり、サスペンションを硬くすると、齋藤さんにダメ出しされます。そういったプロの目はとても貴重です。カスタムだから…そんな妥協点が自分の中にあったのかもしれませんが、齋藤さんは許してくれません。カスタムの視点でなく、市販車の視点で色々とダメ出しをしてくれるんです。それをお客様にフィードバックしつつ、これまで培ったノウハウを入れた2台を提案したいと思っています。
たとえば、年齢が上がっていったお客様はポジションがきつくなります。そういった方にはステップを低くする提案が必要なのかもしれません。GPZ900R本来の良さである、スポーツ性のあるツーリングバイクらしさを追求したいですね。パニアケースをつけても良いと思います。カスタムといっても、スポーツに特化するつもりはないんです。こう乗りたいなって思った時に、スポーツもツーリングも選択できる柔軟性がMC.ジェンマのウリです」と石田さん。
齋藤さんのアドバイスと石田さんのノウハウが注ぎ込まれたカスタムは、どんな仕様になるのだろう? また、石田さんはGPZ900Rファンのためのイベントも計画中だ。
GPZ900R生誕40周年となる2024年。多くのファンやさまざまなショップが色々な思いを持ちながらGPZ900Rとともに歩んできた40年がそこにはある。GPZ900Rの40周年を多くの方と共有しながら、僕も楽しみたい!
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