
スポーツバイクの多くは、ステップの下にツノのような棒が付いている。なかには妙に長くて、正直なところ「ちょっとカッコが……」と思うコトも。そもそもこのツノ、なんのために付いているんですか?
●文:伊藤康司 ●写真:山内潤也、長谷川徹、柴田直行
バンクした時に真っ先に路面に触れる「バンクセンサー」
写真のステップはホンダCBR1000RR-R。下面に生えたツノはかなり長めだ。
多くのスポーツバイクのステップに付いている棒状のパーツ。なかには妙に長くてちょっとカッコ悪く感じたり、乗り降りする際にパンツの裾が引っかかって、思わず立ちゴケしそうになって焦った方もいるのではないだろうか?
このツノというか棒の正体は「バンクセンサー」。カーブを曲がるため車体をバンクさせていったときに真っ先に路面に接地して、ライダーに「ここがバンク角の限界」と知らせるためのモノだ。
どんどん深くバンクさせていくと、いずれ車体のどこかが路面に接地する。それがエンジン(クランクケースカバーなど)やフレームなど車体を構成する部分だと、接地した場所を支点にしてタイヤが路面から浮いて転倒してしまう危険がある。
そのため公道を走行する市販バイクの多くは、路面に接地すると折れ曲がる「可倒式ステップ」を装備し、さらにステップの下面に棒状のバンクセンサーを備えているのだ。バンクしていくと真っ先にバンクセンサーが路面に触れるので、その振動や音でライダーはバンク角の限界がわかる。そしてステップが折れ曲がることで接地した衝撃を逃がし、タイヤが路面から浮くのを防ぐ。この時点でバンクを深めるのを止めて車体を起こすなどすれば良いわけだ。
装備の有無や長さはバイクによって異なる
たとえばホンダのCBR1000RR-Rのバンクセンサーはかなり長さがある。これはコーナリング性能を追求して深いバンク角を持っているのと、ステップの位置も高いので、真っ先に接地させるために長さが必要だからだ。フレームの幅の狭さ(ステップが装備されるスイングアームピボット付近の幅)も影響しているだろう。
反対にクルーザー(いわゆるアメリカン)のレブル250などはバンクセンサーが短い。スーパースポーツのような深いバンク角を設定していないし、ステップ位置も低いからだ。
ちなみに国産モデルでもCRF250Lのような本格的なオフロード車はバンクセンサーを装備していない。ステップ位置が猛烈に高いし、舗装路で深くバンクする車種ではないので、付ける必要が無いからだろう。
海外メーカーも装備している?
BMWはGS等のアドベンチャー系は非装備だが、他のロードモデルは基本的に装備している。ドゥカティはクルーザータイプのディアベルは小さな突起状のバンクセンサーが備わるが、他モデルは非装備だ。
KTMはアドベンチャーやトラベル、エンデューロ系は非装備で、ロードスポーツのRC390やネイキッドの390デュークは装備する。しかし790デューク~1290スーパーデュークなど大排気量ネイキッドは非装備なので、車格で決めているのだろうか?
海外メーカーのロードスポーツ車でバンクセンサー非装備の車両は、総じてバンク角が深いモデルが多いようだ。これはスポーツ度の高さでもあるが、傾け過ぎには要注意だ。
ツノがあっても無くても傾け過ぎに注意!
公道走行でステップをガリガリ擦るほどバンクするのは考えモノだが、傾け過ぎの警告装置としてバンクセンサーは有用だ。なので前述したように、長くて少々カッコ悪いからとか、パンツの裾が引っかかって邪魔だからと、バンクセンサーを外してしまうのは止めた方が良いだろう。
またアフターパーツのステップキットに交換すると、バンク角が増えるように思うかもしれない。しかしそれはステップやバンクセンサーが接地しなくなっただけで、車両本来のバンク角が増えるわけではないことをお忘れなく!
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