
ジクサー250/ジクサーSF250の登場で、2008年に生産終了したGSX1400以来の復活を遂げた、スズキ伝統の“油冷エンジン”。エンジンの冷却に潤滑用エンジンオイルを使うこの方式は、1985年に発売されたGSX-R750以来、スズキのスポーツバイクに数多く採用されている。本記事では、それら油冷車の中でも1990年代にブームとなったビッグネイキッドモデルにおいて、他メーカーにはない個性を放っていた「GSF1200/S」について紹介する。
●文:モーサイ編集部(小川恭範)
1995年に伝家の宝刀を満を持して投入
1990年に、排気量750ccを超えるバイク=“オーバーナナハン”が解禁。それを受けて国内各メーカーは、排気量が1000ccを超える4気筒エンジンを搭載したリッターネイキッドモデルを続々と発売した。
ホンダはCB1000SF(SC30)、ヤマハがXJR1200(4KG)、カワサキもゼファー1100(ZRT10A)などを投入。当時流行し始めていた、カウルレスのクラシカルな“ネイキッド”スタイルと大排気量エンジンの組み合わせは、国内市場で高い人気を集めた。
一方、同年スズキは800ccの2気筒エンジンで対抗。それまで海外専売モデルだったVツインエンジンを搭載したVX800(VS51A)の国内仕様モデルを投入し、一部マニアの喝采を浴びた。
スズキが大排気量の4気筒エンジン搭載車を投入したのは、1994年から。まず手始めに、同じく海外専売だった空冷4気筒エンジンの名車・GSX1100Sカタナ(GU76A)を国内投入する。
そして翌1995年、満を持してスズキ“伝家の宝刀”ともいえる、油冷エンジンを搭載した新型リッタービッグネイキッドを国内投入。それが初代の「GSF1200(GV75A)」だ。
ここに4メーカーのビッグネイキッドが揃ったことで、同ジャンルは過熱の一途を辿っていった。
馬力は抑えたがトルクは強大に
GSF1200は、GSX-R1100(GV73A)をベースに排気量アップ(ボアを拡大)を施し、元の1127ccを1156ccにした油冷4気筒エンジンを搭載。143馬力を絞り出すGSX-R1100用エンジンをさらに排気量アップしたとなれば、本来は150馬力を超える潜在的な能力を有していたはずだ。
だが、当時の国内市場には100馬力の自主規制が存在していたため、97馬力/8500rpmという実に奥ゆかしい最高出力に抑えられていた。
馬力こそ本来の能力を発揮させなかったが、排気量が大きいためトルクは強大。しかも、カムシャフトのプロフィールなどで出力特性を徹底的に低中速寄りへ振った結果、スロットルを軽くひねっただけで9.8kg-mもの最大トルクが発生する4000回転に一気に到達するという、恐るべきエンジンが完成した。
そのエンジンをリッターネイキッドとしては軽量な車重208kgに抑えられた車体(ホイールベースも異例の短さと言える1435mm!)に搭載したため、発進からの加速はかなり強烈なものに。アクセルをラフに開けると、パワーで簡単に前輪が浮いてしまう“ウイリー上等マシン”が誕生したのだ……
※本記事は2021年3月10日公開記事を再編集したものです。※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
歩行者が消える?超危険な「蒸発現象」による事故を防ぐ方法 2024年10月、岡山県内の道路である現象が原因となる交通事故が起きました。横断歩道を渡っていた高齢の女性をクルマがはねた、という事故です。ク[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
レーダーでの速度取締の現場 赤切符と青切符の違いとは? 冬から春にかけては卒業や就職をひかえて新たに運転免許を取得する人が増えてくる時期です。自動車学校・教習所で習ったとおりの運転を心がけているつもり[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
ホンダ・スズキと同じく、浜松で創業した丸正自動車製造 中京地区と同様に、戦後間もなくからオートバイメーカーが乱立した浜松とその周辺。世界的メーカーに飛躍して今に続くホンダ、スズキ、ヤマハの3社が生まれ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
カワサキZ1系:1973~1978 1973 900super4 (Z1) 初期型となる’73年型。北米向けは橙×茶の「火の玉」のみだが、欧州仕様は黄×緑の通称 「イエローボール」も設定。長いリヤフェ[…]
FLHRロードキング[2002年式] ハーレーダビッドソンが1999年に満を持してリリースしたツインカムエンジン。従来(エボリューション)までのワンカム構造を改め、カムシャフトを2本配置。伝統のOHV[…]
Vmaxと同時期にアメリカンカルチャーから発想したマッチョスポーツ! 1985年、ヤマハがアメリカはカリフォルニアの現地でデザインしたVmaxは、アメリカならではのクルーザーやチョッパーのバイクカルチ[…]
ガレージで眠っているマシンを引っ張りだそう! 今後の展開も期待されるポテンシャルの高さが魅力 コンストラクターの手によるオリジナルフレームを用いたシングル&ツインレースが流行した1990年代、オーヴァ[…]
北米市場の要請を受け2スト専業から脱却 ’50年代中盤に4スト単気筒車を手がけたことはあるものの、’52年から2輪事業への参入を開始したスズキは、’70年代初頭までは、基本的に2スト専業メーカーだった[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI])
北米市場の要請を受け2スト専業から脱却 ’50年代中盤に4スト単気筒車を手がけたことはあるものの、’52年から2輪事業への参入を開始したスズキは、’70年代初頭までは、基本的に2スト専業メーカーだった[…]
スズキ ジクサー150試乗インプレッション 全日本ロードレースを走るレーシングライダー、岡崎静夏選手がスズキ「ジクサー150」の2025年モデルを試乗。彼女は想像以上にスポーティーな乗り味に驚いたと語[…]
大幅改良で復活のGSX-R1000R、ネオクラツインGSX-8T/8TT、モタードのDR-Z4SMにも触ってまたがれる! 開催中の鈴鹿8耐、GPスクエアのブースからスズキを紹介しよう! ヨシムラブース[…]
WMTCモード燃費×タンク容量から航続距離を算出してランキング化 この記事では、国内4代バイクメーカーが公表しているWMTCモード燃費と燃料タンク容量から算出した1給油あたりの航続可能距離を元に、12[…]
誕生から40年を迎えたナナハン・スーパースポーツと、兄弟車のR600 1985年当時、ナナハンと呼ばれていた750ccクラスに油冷エンジン搭載のGSX-R750でレーサーレプリカの概念を持ち込んだのが[…]
人気記事ランキング(全体)
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
昭和レトロの世界が広がる神奈川県『中古タイヤ市場 相模原店』 昭和の夏休みって、どんなでしたっけ? 朝はラジオ体操に行って、午前10時頃からは仮面ライダーやウルトラマンの再放送。昼は学校や地域のプール[…]
2025年6月16日に83歳になったアゴスティーニのスペシャル仕様 MVアグスタは欧州で、同ブランドが2025年で創立80周年を迎えるとともに、Agoことジャコモ・アゴスティーニ氏が83歳の誕生日を迎[…]
ガレージで眠っているマシンを引っ張りだそう! 今後の展開も期待されるポテンシャルの高さが魅力 コンストラクターの手によるオリジナルフレームを用いたシングル&ツインレースが流行した1990年代、オーヴァ[…]
初心者からベテランまで、老若男女だれもが一日中楽しめる オフロードバイクさえあれば、初心者だろうとベテランだろうと、老若男女だれもが一日中楽しめるフリーライドイベントとして企画されたのがエンジョイライ[…]
最新の投稿記事(全体)
冷たさが最大16時間続く、ピーコックの持ち運べる氷のう 炎天下の休憩で火照った体を一気にクールダウンさせたい。そんな時におすすめしたいのがピーコックの「アイスパックシリーズ」だ。 アイスパックは、創業[…]
初心者向けの溶接機は? 「初心者ですが、溶接機は何を買えばいいでしょうか?」そんな質問をいただくことが、最近増えています。折れたステーの修理から始まり、フレーム補強やスイングアーム自作、極めつけがフレ[…]
8月上旬発売:Kabuto「AEROBLADE-6 ADACT」 軽量コンパクトなフルフェイスヘルメットで、99%の紫外線と74%赤外線を軽減する「UV&IRカットシールド」を装備する。これによってヘ[…]
カワサキZ1系:1973~1978 1973 900super4 (Z1) 初期型となる’73年型。北米向けは橙×茶の「火の玉」のみだが、欧州仕様は黄×緑の通称 「イエローボール」も設定。長いリヤフェ[…]
FLHRロードキング[2002年式] ハーレーダビッドソンが1999年に満を持してリリースしたツインカムエンジン。従来(エボリューション)までのワンカム構造を改め、カムシャフトを2本配置。伝統のOHV[…]