
●記事提供:モーサイ
実燃費の計測でおなじみだった「満タン法」だが……
エンジンを使った乗り物における経済性を示す指標のひとつが燃費(燃料消費率)だ。
「km/L」という単位は、「1リットルの燃料で何キロメートル走行できるか(走行したか)」を表すもので、この数字が大きいほど同じ距離を走るのに必要な燃料が少量で済むということであり、燃費が良いことは経済性に優れていると理解できるわけだ。
そんな燃費について、カタログ値を信じている人は少なかろう。四輪でいえばWLTCモード(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)、二輪ではWMTCモード(World Motorcycle Test Cycle)が最新の燃費測定モードとなっているが、いずれにも特定の条件下における燃費を示すものであって、どんな条件でも燃料消費量が一定のわけではない。
考えてみれば当然で、四輪でいえばエアコンを使えば燃費の悪化要因となるし、二輪でもWMTCモードは基本的に一名乗車で計測するためにタンデムライドするとモード値より燃費が悪くなることが多いのは容易に想像できる。
というわけで、現実の使用シーンでの「実燃費」を気にするときに役立つのが、メーター内に表示される燃費計のデータだ。
カワサキ ニンジャZX-25Rのメーター。速度計下に燃費計がある(写真は平均燃費の表示だが、瞬間燃費も表示できる)。
そうはいっても、燃費といえば燃料タンクを満タンにしてから走り出し、次に満タンにしたときに入った燃料とそこまでの走行距離から計算する方法(通称:満タン法)で導き出すことに慣れている世代からすると、メーターの燃費表示は信用できないという声もある。
実際、満タン法で計算した数値とメーター表示の燃費表示にズレがあるという主張を目にすることもある。しかし、メーターの燃費表示の仕組みを知れば、満タン法を信じるという前提が間違っていることに気付くはずだ。
メーター表示の燃費はインジェクションの様々なデータから算出されている
シンプルに整理するとメーターの燃費表示は、インジェクションを採用しているエンジンにおいては、インジェクターの噴射量と速度×時間(走行距離)から計算されている。
ご存知のように、インジェクター制御の仕組みというのはエンジン回転数やスロットル開度、変速比や負荷などを基本に、外気温や吸気温などを補正値として用いつつ、排ガス浄化装置に関するフィードバックを含めて、極めて短い時間ごとに燃料噴射量(開弁率)を演算している。
排ガス規制が厳しい現代において、燃料噴射量が厳密に管理されているのは言うまでなく、かなり高い精度が期待できる仕組みといえる。そうしてリアルタイムに消費した燃料と走行距離をベースに瞬間燃費を表示している。その数値を積み上げることで区間燃費を導き出すというのが大まかな計算方法だ。
ただし、メーター表示の燃費が完全に正確とは言い難い部分もある。そもそも速度表示が大きめに表示されるような設計になっている場合や、タイヤの消耗や管理によって外径が変わるっている場合など、速度(距離)についての数値にズレはあり得るからだ。
ホンダ NT1100のメーター。写真の状態では平均燃費、平均速度、燃料消費量が表示されているが、瞬間燃費、航続距離も表示できる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
仕事を通じてわかった、足を保護すること、足で確実に操作すること 今回は、乗車ブーツの話をします。バイクに乗る上で、重要な装備の一つとなるのが乗車ブーツです。バイクの装備といえばヘルメットやジャケット、[…]
【燃料タンク容量考察】大きければ良いってもんではないが、頻繁な給油は面倒だ 当たり前の話ではあるけれど、燃費性能とともに、バイクの航続距離(無給油で連続して走れる距離)に関係してくるのが、燃料タンクの[…]
バイクいじりで手が真っ黒、そんな時どうしてる? バイクいじりにつきものの、手の汚れ。 特に、チェーンのメンテナンスやオイル交換など、油を使った作業となるとタチが悪い。 ニトリル手袋やメカニックグローブ[…]
松戸市〜成田市を結ぶ国道464号の発展 かつて、千葉県の北総地区は高速道路のアクセスが今ひとつ芳しくなかった。 常磐自動車道・柏インターや京葉道路・原木インターからもちょっとばかり離れているため、例[…]
創業100年を迎えた青島文化教材社「草創期から異端派だった?」 中西英登さん●服飾の専門学校を卒業するも、全く畑違い(!?)の青島文化教材社に2000年に入社。現在に至るまで企画一筋。最初に手がけたの[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
バイクバッテリー上がりの原因とは? エンジン始動時のセルモーター駆動やヘッドライトの常時点灯、ABS制御、デジタルメーターなど、バイクは高性能化するにつれてバッテリーの負担がどんどん増加していきます。[…]
ハンドルまわりだけでも用語はたくさん 「いつかは旧車に乗り、自分専用のカスタムをしたい」と、憧れを抱いている筆者。その夢を叶えるためには、ひとつの大きなハードルがあったりする。そもそも、各部の名称や役[…]
芦ノ湖スカイラインとは? バイク乗りに人気の理由 富士山の麓に点在する富士五湖のひとつ、芦ノ湖は箱根の人気観光地ですが、湖の西側の尾根に沿って通じているのが芦ノ湖スカイラインです。 全長約10.7km[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
原付でエンジンがかからない主な原因 「原付 エンジン かからない 原因」とネット検索する方が多いように、バッテリー上がりやプラグの劣化、燃料不足など、複数の原因によってエンジンを始動できなくなるケース[…]
人気記事ランキング(全体)
RZ250を上回る新テクノロジー満載! 1979年にホンダがリリースした、まさかの2ストローク50ccスポーツのMB50(広告なでの名称はMB-5)。 250ccやビッグバイクのスケールダウン・デザイ[…]
エンジニアもバイクに乗る、それがボッシュの面白さ ボッシュが二輪車向けABSを世に出してから今年で30周年を迎えた。ボッシュといえばドイツのメーカーだが、バイク部門の開発拠点が日本の横浜にあることはご[…]
コンパクトで取り付けが簡単なスマートモニター タナックス(TANAX)の「スマートライドモニター AIO‑5 Play (SRS‑015)」は、本体サイズ78.8(H)×136.2(W)×26.8(D[…]
KATANAというバイク 一昨年のこと、キリンと同じ年齢になったことをキッカケにKATANA乗りになったYです。 ノーマルでも十分乗り易いKATANAですが、各部をカスタムすることで、よりカタナ(GS[…]
X-ADVの兄弟車として欧州で販売される「フォルツァ750」 ホンダは欧州でフォルツァ750(FORZA 750)の2026年モデルを発表した。主要諸元に変更はなくカラーバリエーションの一部変更でイリ[…]
最新の投稿記事(全体)
火の玉「SE」と「ブラックボールエディション」、ビキニカウルの「カフェ」が登場 ジャパンモビリティショー2025でカワサキが新型「Z900RS」シリーズを世界初公開した。主軸となる変更はエンジンまわり[…]
外観をスタイリッシュにリニューアルしたトリシティ125 前回のトリシティ300に続き、今回試乗を行うのも前2輪を持つLMWシリーズのトリシティ125。ちなみにLMWとは、リーニング・マルチ・ホイールの[…]
父とB+COM SB6XRで会話しながらプチツーリング すっかり秋模様。なんなら執筆している今日は、最高気温が15度。朝から冷え切っていて、冬気分です。 自宅近くを走っているスクーターの方を見て、「わ[…]
KATANAというバイク 一昨年のこと、キリンと同じ年齢になったことをキッカケにKATANA乗りになったYです。 ノーマルでも十分乗り易いKATANAですが、各部をカスタムすることで、よりカタナ(GS[…]
エンジニアもバイクに乗る、それがボッシュの面白さ ボッシュが二輪車向けABSを世に出してから今年で30周年を迎えた。ボッシュといえばドイツのメーカーだが、バイク部門の開発拠点が日本の横浜にあることはご[…]
- 1
- 2







































