
●レポート:阪本一史 ●写真:ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキ ●記事提供:モーサイ編集部
’80年代、80ccであることのメリットに、金欠ライダーは着目した
高校生が自動二輪中型免許(当時)を取ったはいいけれど、愛車をすぐ手に入れられるかは別問題。資金の問題が立ちはだかるのだ。2年ごとの車検を考えると400ccは難しい。ならば軽二輪(250cc)にしようかと言っても、80年代当時でも250ccは新車で30万円代が相場。
そんな中、仲間内で主に流通するのは当然中古(しかも程度は必ずしも良くない)だが、車両価格やランニングコストを考え、原付二種はどうかという考えが浮かんだ輩は案外と周囲に多かった。クローズアップされたのは、黄色ナンバーの80ccモデルだった。
当然ながら、80年代以前にも黄色ナンバーの51〜90ccモデルは数多く存在した。だが、80年代に焦点を絞る当記事では、最高出力7.2psを標榜する50ccスポーツモデルの兄貴分として、規制も入らずにパワーを絞り出していた80ccモデルに着目したい。筆者は66年生まれだが、自分が16歳を迎えた82年前後の80cc車のメリットは、概して以下のような感じだった。
「50ccモデルをベースに排気量アップし、外装を含めた装備は極力共用し価格を抑えたモデルが多い」
タンデム用後席ステップを付加し、シートはロングタイプへ換装されていたものの、10万円台の50cc対して、価格差1万円高程度の80cc車が多かった。125ccモデルも当然存在したが、当該排気量専用車が多く、価格は80ccより高めの20万円台が大半だった。
「一般道での制限速度は普通車と同じで、性能は十分。また後に導入の50cc対象の2段階右折の面倒もない」
原付二種は高速道を走れないが、制限速度は他の自動車と同じ(厳密には当時中速車という括りだったが)。また性能は2サイクル80ccだと最高出力10ps前後が主流で、50ccのような30km/h速度制限や60km/h速度リミッターのストレスもなく速さが味わえる。7.2ps規制なしの50cc車よりも一段上の最高速度と加速で実質3桁の速度が引き出せ、50ccと大差ない重量でもって加速は十分刺激的だった。
「50ccの兄貴分として、ロード、オフ、アメリカンまでと、意外に車種・モデル数ともに充実していた」
当時から50cc車の多くは日本市場メインの供給だったが、これをベースに上級版80ccも併売する傾向が強かった。それゆえ50ccと80ccともに各カテゴリー車が充実。そして、当時の小排気量スポーツで主流の2サイクル単気筒エンジンを、各社ともロード、オフ、アメリカン車に共用。
悪く言えば安易な派生という側面もなきにしもあらずだが、ユーザーから不満の声は聞こえなかった。それよりも、現実的なステップアップ用としてのニーズが確実にあったのだろう。車種展開には多少の違いはあるが、こうしたモデル派生は国内各社が行なっていた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(モーサイ)
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
キーロック付きタンクキャップ:スズキGT380(1972) バイクの燃料キャップは、そもそもは転倒時の漏れ防止の安全対策からキーロック式が採用されるようになったが、その最初は1972年のスズキGT38[…]
「令和4年改正道路交通法(マイナンバーカードと運転免許証の一体化・オンライン更新時講習)ポスター」から抜粋 免許情報が記載された「マイナ免許証」は便利に使える? 運転免許証とマイナンバーカードが一体化[…]
ベースはCB750Four!新時代のスポーツ車を目指した「ホンダマチック」搭載モデル 1970年代の半ば、今回の主役「ホンダ・エアラ」のベースとなったCB750Aの紹介記事で「アメリカ人はオートマ車し[…]
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる…… ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200[…]
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
キーロック付きタンクキャップ:スズキGT380(1972) バイクの燃料キャップは、そもそもは転倒時の漏れ防止の安全対策からキーロック式が採用されるようになったが、その最初は1972年のスズキGT38[…]
長距離ツーリングがさらに楽しくなる進化 発売は、2021年2月25日。2021年モデルでは、大型二輪AT限定免許でも乗れるDCTのみのラインナップとなった。シリーズ共通で55Wスピーカーを採用。イコラ[…]
人気記事ランキング(全体)
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
エアインパクトレンチ:手のひらに収まるサイズで500Nmを発揮。狭い場所で活躍する力自慢 ガレージにエアコンプレッサーを導入したら、まず揃えておきたいのがエアブローガンとエアゲージ、そしてインパクトレ[…]
カワサキの新世代モビリティが大阪万博で公開 2025年日本国際博覧会、通称「大阪万博」のカワサキブースで、未来のオフロードビークル「CORLEO(コルレオ)」が注目を集めている。バイクのように乗車する[…]
2ストエンジンの新時代を切り開いた名車 1980年代中頃、スズキのガンマ、ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。 この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着し[…]
筑波サーキットにH-D Xたちが集合 H-D Xでのサーキット走行をおすすめしたい。X350はあきらかにXR750をモチーフとしたデザイン。「スポーツライディングを楽しんでほしい」というメーカーからの[…]
最新の投稿記事(全体)
全日本、そしてMotoGPライダーとの違いとは 前回は鈴鹿8耐のお話をしましたが、先日、鈴鹿サーキットで行われた鈴鹿サンデーロードレース第1戦に顔を出してきました。このレースは、鈴鹿8耐の参戦権を懸け[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」、今回は大ヒット街道まっしぐら、女性人気も高いホンダ「レブル250(S[…]
どの製品を選択するべきかで大いに悩む 少し前に当サイトでお伝えした通り、最近の僕はツーリングで重宝する積載系アイテムとして、タナックスがMOTOFIZZブランドとして販売する、ミニフィールドシートバッ[…]
長島哲太×ダンロップ×CBR1000RR-R、2年目の戦いへ 2025年の全日本ロードレースの第1戦が4月20日にモビリティリゾートもてぎで幕を開けた。 ダンロップタイヤを3年計画でチャンピオンの座に[…]
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]