
トライクは乗っていて楽しい。だけど「コーナリングで転ぶんじゃないの?」という不安もある。たしかに古き良き昭和の時代には、トライクがよく転んでいたらしいけど、実際のところはどうなのか、APトライク125を使って試してみることにした。挑む峠道は「箱根七曲り」だっ!!
●文:[クリエイターチャンネル] DIY道楽テツ
トライクは転ぶ? 素朴な疑問
二輪(バイク)に乗っている方や、四輪(クルマ)に乗っている方から聞かれる質問のひとつが、「トライクって転倒しないの?」というものです。
トライクには3つのタイヤがあり、二輪と違って自立します。足を離しても倒れません。これだけ見ると「倒れることがない」と思いがちですが、それはあくまで停車時のハナシ。走行中は事情が変わってくるのです。
逆な車種もありますが、一般的には、後ろ二輪で前一輪。走行中、とくにコーナリングでの安定性については気になるところ。実際のところ、トライクは転倒する危険性があるのでしょうか?
昭和のオート三輪はよく転んでいた? あの頃の話
「トライクが転ぶ」という話を聞くと、1950年代に登場した三輪バイク「ダイハツ・ミゼット」を思い浮かべている方も、いるかもしれません。
当時のトライクは、現在のマシンほど安定性がなく、とくに急カーブや速度を出した際に転倒することがありました。そのたびに、みんなで車体を起こした…なんて(今となっては)微笑ましいエピソードがあったほどです。
そもそもなぜトライクは転倒するのか?
ではなぜトライクは転倒するのかというと、二輪とは異なり、独特の重心移動やバランスの取り方が必要だからです。
とくに「車体が真横に傾く力が加わる」のは二輪とは異質のもので、感覚としてはカートに近いもの。なんたって前輪はひとつだけなので、曲がる方向の反対側へ放り出されるような荷重がかかるのです(これがけっこう怖い)。
二輪だったら車体をバンクさせることで横Gと縦Gをバランスさせて曲がっていけますし、四輪であれば外側の前後タイヤが踏ん張ってくれるので、そのままコーナリングが可能ですが、トライクの場合はそこで転倒リスクが生じやすくなります。
そんわけで、横から車体に加わる力をうまく分散できるような構造が備わっていなかった、過去のトライクにとっては、コーナリングが最大の難所だったというわけです。
トライクで実際にコーナリング!箱根峠にて
では、現代のトライクも同じようにコーナリングでたやすく転んでしまうのか? この疑問を解消すべく、実際にトライクで峠道を走ってみることにします。使用したのは、チョイ乗り系として売り出している、APトライク125。「どうせ行くならここでしょ!」ってことで、やってきたは箱根峠の七曲り!!
七曲りのような急なコーナーが続く場所ならば、トライクの安定性が試すには絶好のステージではないでしょうか?
ちなみに、こんなコーナーが連続します。高低差もあるから下りになるとちょっとしたジェットコースター。それではさっそく行ってみましょう(ドキドキ)。
(道には枯葉が降り積もってかなりヤバそうな状態・・・)
「いくぜ!」
行くぜ、コーナリング!! コーナー、ひとつ目 2つ目 3つ目・・・そしてついでに下りも走ってみました。
「走れる。転ばずに走れるぞっ!!」
結果として、トライクは峠道でも転ばないことがわかりました。現代のトライクの三輪構造が安定しているのか、それともサスペンションの性能なのか? 通常の速度でカーブを走行する分にはほとんど転倒の心配はありませんでした。
普通に走ってきて、普通にブレーキかければ、普通にコーナリングできます。下りにおいては普通の車と一緒に走っても問題ありませんでした。
いやむしろ、後ろのタイヤが滑ります。もしくは「キョッ キョッ キョッ」とホッピングします。クルマのように「ギュ~~」っと荷重かけることができないので、速度の限界はタイヤがすぐに教えてくれたので、それにさえ慣れれば恐怖心はまったくありませんでした~。
むしろヤバいのは低速の交差点
峠道では大丈夫でしたが意外なところにレンジャーゾーンがありました。交差点です
曲がる瞬間がヤバかった
交差点を曲がる時、とくに小さい交差点ほどヤバいことがありました。
ゆっくり走れば何の問題もないのですが、信号が切り替わる時や対向車がいる時などに急いで曲がろうとした時に後輪が「フッと浮き上がる」感覚が。また、Uターンの時などにも「フワッと浮き上がる」ことがありました。
つまり旋回半径が小さければ小さいほど、危険ということみたいです。峠道のコーナーなら緊張感もありますが、街中の駐車場のちょっとしたUターンなどはハンドルも大きく切ってるので、ちょっとアクセルを開けただけで、いきなり不安定になったりします。マジでご注意ください!!!
トライクの特性まとめ
- 停車時の安定性:三輪で支えられているため、停車時には倒れる心配がほとんどない。
- 峠道は意外と走れる:普通の速度なら普通に走れた。最初に後輪が跳ね始めるので限界がつかみやすい。
- 低速時の注意:一番危険なのは交差点などの低速カーブ。片輪が浮くことがあった。
- カーブの半径が重要:大きなカーブよりも急な小回りをする際に転倒リスクが上がる。マジで気を付けるべし!
トライクは、二輪とも四輪とも異なる運転感覚が求められますが、それさえ注意すればとても楽しい乗り物でした。とはいえ、かなり癖のある走行フィーリングなので、慣れないうちは安全な道などで十分練習してから遠出をするようにしましょう!
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
最新の関連記事(DIY道楽テツ)
アクセルワイヤーが長すぎた!というトラブル ハンドルを交換して長さが合わなくなってしまったり、はたまたケーブルそのものが痛んでしまったり。こうしたアクセルワイヤー(スロットルケーブル)を交換する際、「[…]
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
新品タイヤが滑るその理由 新しいタイヤは滑ります。 滑りたくないから新しいタイヤに交換したというのに、なぜか新しいタイヤはマジで滑るんです(経験者は語る)。 なぜ滑るかというと、それはタイヤの製造過程[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
燃料コックにも涙? それはある日の出来事。バイクで走り出そうとガソリンタンクの燃料コックをオンにした時、指先に冷たいものを感じました。 何があるのかと覗き込んでみると・・・燃料コックが泣いているぅ~![…]
最新の関連記事(自動車/クルマ)
1903年以降、ナンバーはずっと使い続けることができる英国 ナンバープレートがオークションなどの売り物になること、じつはイギリスではさほど珍しいものではありません。 イギリスでは一度登録したナンバーを[…]
7.3リッターとなる心臓部はコスワースがカスタマイズ 今でこそアストンマーティンの限定車はさほど珍しくもありませんが、2000年代初頭、すなわちフォード傘下から放り出された頃の彼らにとってスペシャルモ[…]
目論見が大成功、ギネス級の生産台数を誇る初代 フォルクスワーゲンの初代ビートルはご承知の通り、ドイツの「国民車」として第二次大戦中にフェルディナンド・ポルシェ博士が設計したクルマ。 戦後は国内のみなら[…]
【フェラーリ F40】?! スペチアーレといいながら、400台限定が最終的には1352台(諸説あります)もロールアウトしたF40。ですが、最強で最速の棺桶とあだ名されたほど事故が多いクルマで、現存台数[…]
注目RCブランドが名車を忠実に再現 「WPL JAPAN」は、森林や岩場などの悪路を走破できるスケールクローラーRCを展開するRCカーブランド。 通常は高額なスケールクローラーを、すぐに遊べるRTRセ[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
芦ノ湖スカイラインとは? バイク乗りに人気の理由 富士山の麓に点在する富士五湖のひとつ、芦ノ湖は箱根の人気観光地ですが、湖の西側の尾根に沿って通じているのが芦ノ湖スカイラインです。 全長約10.7km[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
原付でエンジンがかからない主な原因 「原付 エンジン かからない 原因」とネット検索する方が多いように、バッテリー上がりやプラグの劣化、燃料不足など、複数の原因によってエンジンを始動できなくなるケース[…]
原付バイクのオイル交換目安とは? 交換頻度のポイント 内燃エンジンにとって、潤滑/冷却/密封/清浄分散/防錆を担うエンジンオイルは、まさに血液とも言うべき重要なパーツです。 常に高温にさらされてエンジ[…]
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
人気記事ランキング(全体)
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
古いゴムは硬化するのが自然の節理、だが・・・ ゴム部品は古くなると硬くなります。これは熱・酸素・紫外線などによる化学変化(酸化劣化)で、柔軟性の元である分子の網目構造が変化したり、柔らかくする成分(可[…]
初の電動スクーターが「C evolution」 2017年、BMWモトラッドは初の電動スクーター「C evolution(Cエボリューション)」を発売。それまでのガソリンエンジンを搭載したC650に通[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
多くのカラーパターンを採用するCB350C、特別な2色のスペシャルエディション ホンダはインドでCB350C(日本名:GB350C)を発表した。これは前年に登場したCB350を名称変更したもので、従来[…]
最新の投稿記事(全体)
3Way仕様で秋から春まで使える高機能モデル:RY2003 ウィンターロングジャケット ワイズギアの2025-2026秋冬モデルとして登場した「RY2003 ウィンターロングジャケット」は、一着で秋か[…]
多岐にわたる仕様変更が行われた9年間 9年に及んだ生産期間中の仕様変更は多岐に及んでいる。ただしそのおもな目的は、最高出力や最高速の向上ではなく、扱いやすさや安全性に磨きをかけることだった。 1969[…]
高機能ジャケットから防寒パンツまで多彩なラインナップ 朝晩の冷え込みに、本格的なツーリングシーズンの到来を感じるこの頃。バイクウェアの老舗ブランド「クシタニ」より、2025-26年秋冬モデルの新作テキ[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]