【元警察官が解説】自転車で「青切符」を貰う前に。違反にあたる行動や正しい乗り方って?
自転車事故の増加
交通事故の件数自体は年々減少していますが、自転車による交通事故の割合が近年増加傾向にあります。新型コロナウイルスの感染拡大などにより、自転車人口の増加が大きな理由であると言われています。
通学や通勤だけでなく、近所への買い物や習い事、遠方へのサイクリング等、気軽に乗ることができる、便利な乗り物とはいえ、道路交通法上においては軽車両扱い。交通事故を起こそうものなら、死亡事故もありえる非常に危険な乗り物でもあります。
そういった背景から、道交法違反が改正されたり、警察による取締りが強化されたりしています。みなさんご存知のとおり、令和5年4月からすべての自転車利用者に対し、乗車用ヘルメット着用の努力義務が課されました。
努力義務化され、1年が経過しましたが、着用率は非常に低いというのが現状です。将来的には完全に義務化されるのではないかと言われています。ヘルメット着用率は地域差が激しく、都道府県別の上位、下位5府県は警察庁によると下記のようになっています。
ベスト5
- 1位:愛媛59.9%
- 2位:大分 46.3%
- 3位:群馬 43.8%
- 4位:鳥取 30.9%
- 5位:三重 26.5%
ワースト5
- 43位:福島 4.3%
- 44位:大阪 4.2%
- 45位:秋田 3.5%
- 46位:青森 2.5%
- 47位:新潟 2.4%
道路交通法の厳罰化
前述したように、自転車は身近で非常に便利な交通手段であります。ですが近年、悪質な違反や交通事故が増加しており、それらを減少させるために様々な措置がとられています。
道路交通法の改正だけでなく、地域によっては条例が制定されたり、といろんな取り組みが行われています。
車両やオートバイと同じように、反則金を科す青切符の導入を視野に入れた道路交通法の改正案が閣議されました。その内容は、青切符による自転車の取締りは16歳以上に適用され、112もの違反行為が対象となります。
こういった青切符による反則金制度を導入する背景には、自転車が関係している事故の増加が大きなわけですが、この中で、死亡事故、重傷事故となった事故の7割以上が自転車側に前方不注意や信号無視、一時不停止といった交通違反が確認されています。
反則金は原付バイクと同等にするといった方針となっていますが、悪質性の高い酒酔い運転や妨害運転などはこれまで通り、赤切符の対象となります。ただ検察に送致されても起訴されることはほとんどなく、制裁の実効性の低さに議論なされている、というのが現状です。
取り締まる際は、警察官の指導警告に従わず、違反行為を続けたり、悪質で危険な違反が対象になると言われています。警察庁では、公平な取締りを行うために、今後、青切符にあたる違反行為なのか、指導警告すべき違反行為なのか、取締り時の具体的な留意点や運用指針を定める方針とのことです。その指針を基に各都道府県警がより具体的な基準を定め、取締りにあたるとされています。
青切符の対象となる主な違反とその反則金
下記のような感じですが、これらはほんの一部。原付バイクと同等の違反扱いとなり、反則金が科されることになります。
- 信号無視:6000円
- 指定場所一時不停止:5000円
- 通行区分違反:6000円
- 遮断踏切立ち入り:7000円
- 横断歩行者妨害:6000円
- 制動装置不良車両運転:6000円
- 携帯電話等の使用:12000円
- 緊急車妨害:5000円
- 公安委員会遵守事項違反:5000円
- 無灯火:5000円
- 泥はね運転:5000円
- 二人乗り:5000円
うっかりやりがち⁉ 意外な違反も
前述した青切符対象のものに重複するものもありますが、下記はついうっかりやりがちな違反です。
- 歩行者への警鐘(いわゆるベル鳴らし)
- 安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態でのイヤホンの使用
- 自転車に乗っての犬等ペットの散歩
- 傘さし運転
- 泥はね運転
- 無灯火運転
- 2台並走
- 右側通行
- 歩道走行
日常的にやっているものがあれば、これを機にご自身の運転を見直していただきたいな、と思います。
上記の運転はすべて危険でやってはいけない乗り方ですが、私が個人的に一番危険だと思うのは、夜間の無灯火運転です。みなさんも夜間、車やオートバイを運転しているとき、無灯火の自転車を見かけたことがあることでしょう。
街灯や信号のない夜道では、直近まで見えなかった、とか危うくぶつかるところだった、ということが何度かあります。本当に危険な違反行為です。ちょっとそこまでだから、と安易な気持ちで乗ることは避け、自転車のライトだけでなく、反射材等の活用もしていただきたいですね。
最低限のマナーを守って優しい運転を
自転車は原則として、車道の左側端もしくは自転車道を通行しないといけません。路側帯がある場合は通行可能ではありますが、歩行車が優先となります。ただし例外もあります。下記5つの場合です。
- 標識や標示により自転車の歩道通行を許可しているとき
- 13歳未満、70歳以上の方又は身体の不自由な方が自転車を運転するとき
- 自転車の通行の安全を確保するため歩道通行することがやむを得ないと認められるとき
- 道路工事や連続した駐車車両などのために、車道の左側部分を通行することが困難な場合
- 著しく自動車の交通量が多く、かつ、車道の幅員が狭いなどのために、追い越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合
青切符の対象となる違反行為について述べた際に二人乗りも違反行為である、といていますが、これにも例外があります。それは次のような場合です。
- 幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者一人を乗車させ、16歳以上の者が運転する場合
- 幼児一人をひも等で確実に背負って16歳以上の者が運転する場合
- 幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者一人を乗車させ、幼児一人をひも等で確実に背負って16歳以上の者が運転する場合
- 幼児二人同乗用自転車の幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者二人を乗車させ、16歳以上の者が運転する場合
以上のとおり、自転車乗車時のマナーや違反行為について記載してきましたが、定期的な点検や整備も大切です。車やオートバイとは違うから必要ないと思われがちですが、最低限の以下の点検を行っていただきたいです。
- ブレーキ:前輪と後輪別々に、ブレーキの効き具合を確かめる
- タイヤ:空気が入っているか、すりへっていないか確かめる
- ライト:反射器材や前照灯がつくか確かめる
- サドル:またがってハンドルを持ったときに両足先が軽く地面に届くか調整する
- ベル(警鐘器):きちんと鳴るか確かめる
また、地域によっては保険加入が義務付けられるようになりました。現状では自転車保険に入らないことによる罰則はありませんが、事故やトラブル、盗難等のリスクが生じた際に、自分自身で費用や負傷に対するすべての責任を負うことになります。万が一のためにも加入するようにしましょう。
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