モデル/シューシャイナーの伊藤由里絵さん。旅立ちの理由が明かされる後編もエピソード盛りだくさん。
[伊藤由里絵]白バイ乗りから靴磨き職人に転身した私がヤマハのクルーザー、ボルトで日本一周を始めたワケ【後編】

●文:[クリエイターチャンネル] 伊藤由里絵
前回は、これから始まる連載のスタートとして自己紹介を交えつつ、警察官になったキッカケ、白バイを経てモデルへ転身したキッカケをたくさん語ってみました。今回はその続編として、出演したドラマ『教場』のお話や、なぜ靴磨き職人になったのか? なぜ日本一周を始めたのか? についてお届けしていきたいと思います。
前職の経験を生かした芸能活動:木村拓哉さん主演のドラマ『教場』
芸能事務所に所属にしてからほどなくして、木村拓哉さん主演のフジテレビドラマ『教場』の警察監修のアシスタントを経験する機会をいただきました。警察監修とは、警察官役の俳優さんの演技にリアリティを持たせるために本物の警察官の所作などを出演俳優さんに教える役割です。警察は退職したけれど、何らかの形でその職歴を活かせる仕事ができればと思っていた矢先のことでした。
撮影が始まって数日経ったある日、ふと監督さんが一言。
「君も警察学校の生徒役で出ちゃえば?」
まだモデルや役者としての実績も無いのに、まさかこんなに早くチャンスをもらえるなんて…! 驚いたけれど、こんな機会はない!! と、二つ返事で参加させていただくことになりました。
長かった髪の毛もバッサリと切って、見た目はほぼ警察学校生徒です(本物の警察学校生徒はこれよりもさらに髪の毛が短いです・・・笑)。5年ぶりに警察学校生徒を味わいました。
長かった髪の毛もバッサリと切って、見た目はほぼ警察学校生徒です(本物の警察学校生徒はこれよりもさらに髪の毛が短いです・・・笑)。5年ぶりに警察学校生徒を味わいました。
初めての映像出演が警察ドラマ、こんなに嬉しいことはありません。警察を辞めてから芸能界という全く違ったジャンルの世界に足を踏み入れましたが、こうした形で前職の経験が活きることは自分でも想像することができませんでした。
初めて経験するドラマの撮影現場は想像以上の緊張感で、警察官時代に何度もやっていた所作でさえ、いざ撮影が始まるとドキドキしてしまって間違えないようにととにかく必死でした。ひとつの作品が作り上げられていくことの大変さも初めて目の当たりにして、そこに自分が少しでも関われたことがとても嬉しかったです。
バイクを”運転する”モデル
前職が活きたことは他にもあります。嬉しいことに、得意のバイクの運転を活かした撮影のご依頼をいただくことが多いことです。
白バイの訓練を思えば、どの場所でも心配なく運転できます。取り回しのほか、公道・高速道路などでの撮影も緊張せずに挑めるというのは私の強みかと思います。ただ唯一、畑のボコボコしたわだちをインディアンの大型バイクで走行した時は、車体の重さと道の悪さにちょっと苦労して、「転んだら修理にいくらかかるんだろう…」とさすがにヒヤヒヤしました(笑)。
なぜ靴磨きを始めたの?
芸能活動も継続しているのですが、現在メインとしている仕事は『靴磨き』です。私が靴磨きに出会ったのは、実は警察学校時代。入校して一番最初に教わったことが靴磨きと制服のアイロンがけでした。働く前にまずは自分の身なりを整えることの大切さを叩き込まれたんです。
今思い返すと自己流の靴磨きでしたが、それでも人前に出る際には、必ず靴を綺麗にしておくという習慣はすっかり身について、警察を退職した後も自分の靴を磨くことは続いていました。
そんなある日、本当にたまたまなのですが友人の靴が少し汚れていたのが気になって、「ちょっと磨かせて! 」とササっと仕上げてみたところ、友人の反応が想像を越えるほど良かったんです。「こんなに綺麗になるんだ!! もう捨てようと思ってたんだよ。本当にありがとう!」と表情から喜びが見て取れるほどで、そのリアクションが私にはとても衝撃的でした。
それは、今までただ手慣れでやっていた靴磨きが、人にここまで喜んでもらえるものだということに驚きを隠せなかったからです。素人に近い出来栄えだったと思うのですが、それでも”ただの靴磨き”でここまで喜んでもらえたことがとにかく嬉しかったんです。
そして、その靴を履いた友人が一言「これ、仕事にしたら?」とぽつり。
当時は新型コロナ禍における一回目の緊急事態宣言の時期だったこともあり、気分も沈んでいた中。友人の言葉を聞いて、心から「これだ!」と感じられる閃きみたいなものを感じました。そして思い立ったその足で税務署へ靴磨き屋の開業届を出しに行きました。それくらい、私にとって靴磨きを仕事にするということがとにかく魅力的に映り、私の靴磨き人生のスタートとなりました。
早速『いとの靴磨き屋さん』と名付けてInstagramを開設し、靴とレザーの勉強をゼロから始めました(普通は順番が逆・・・笑)。
やりながら上手くなっていこう! と思った私は、まずは路上に出て靴磨きをしてみました。とりあえずの靴磨きセットを片手に気合い十分で家を飛び出したのに、いざ外に立ってみたら行き交う人の視線がとにかく怖い…。靴磨きセットを広げられずに2時間も突っ立っていたのは、今思い返してみても苦い思い出です(笑)。どんな場所でも自分の表現を貫いている路上シンガーやパフォーマーの方の強いメンタルには尊敬の念しかありません。
広場で初めて靴磨きセットを広げてみました
そして恐る恐る靴磨きセットを広げてみると、お客さんはすぐに来てくれました。「今時、靴磨きだなんて珍しいね」と言ってくれたサラリーマンの方の靴を一生懸命に磨かせていただきました。磨き終えると、その方もやっぱり笑顔になってくれて。
当時の価格設定は1回500円。終わったあとに「ありがとう」と渡してくれた500円玉には、何倍もの価値があるように思えました。靴磨きってやっぱり素敵な仕事だと確信できた瞬間でした。
靴が綺麗になるだけでなく、その持ち主の心さえも明るくさせてくれる! そして磨いている私も幸せな気持ちになる。今この空間、幸せしか生まれてないじゃん! と。
”日本中に足元からHappyを届ける”をモットーに掲げた活動を続けていくうち、嬉しいことに活動を知ってくださる方が増え、半年後には百貨店さんからも靴磨きイベントのオファーをいただけるようになりました。
靴磨きの師匠と出会って一から職人としての知識と技術を叩き込んでいただいたのも、ちょうどこの時期です。初めて目にしたその道のプロの技は言葉にできないほどの雲泥の差で、いかに自分が素人同然かを思い知らされました。師匠の磨いた靴はあまりにもツヤツヤで、仕上がった後もずーっと眺めていたくなるんです。そのとき、「人にHappyを届ける靴磨きって、こういうことを言うんだな。もっと上手くなりたい!」と心から思って、中古のお店で古くなった革靴を買っては毎日毎日練習しました。
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