大型スクーター「TMAX560」「X-ADV」にベストマッチ! ミシュラン待望の「パワーシフト」試乗インプレッション

ビッグスクーター用のタイヤとして、近年のミシュランはパイロットパワー3とパイロットロード4を販売していた。当記事で紹介するパワーシフトはそれらの後継だが、ビッグスクーター界で定番サイズの前後15インチに加えて、リプレイス品の選択肢がわずかしか存在しないホンダX-ADVのために、フロント17インチを設定している。
●文:中村友彦(ヤングマシン編集部) ●写真:真弓悟史 ●取材協力:SP忠男 浅草店 ●BRAND POST提供:ミシュラン
オンロードに的を絞って新規開発
MICHELIN POWER SHIFT
2025年のミシュランは、特殊なサイズのタイヤに注力している……ようである。と言うのも、少し前に当サイトで紹介した、2001年以降のホンダ・ゴールドウイング1800専用のロードW GTと同じ日に、クロスオーバーモデルのホンダX-ADVに適合するパワーシフトを発売しているのだ。もちろんミシュランの場合は、幅広い車両に対応するラインアップも超が付くほど豊富なのだけれど、他メーカーとは一線を画する、レアなサイズに前向きな姿勢に、好感を抱くライダーは少なくないだろう。
ただし、当記事で紹介するパワーシフトと、ロードW GTの素性は同じではない。ロードW GTがゴールドウイング1800専用品であるのに対して、パワーシフトにはX-ADV用のフロント120/70R17・リア160/R15だけではなく、2008年以降のヤマハT-MAXシリーズやキムコAK550を視野に入れたフロント用の120/70R15も存在するのだから。
なお既存のリプレイスタイヤ市場を振り返ると、X-ADVに前後セットで履ける製品はごくわずかで、しかも純正と同様のオン・オフ兼用のブロックパターンが大半だったのだが、パワーシフトはオンロードに的を絞って新規開発。その背景には、オンロード用からアドベンチャーツアラーの世界に手を広げたスポーツツーリングタイヤ、ロードシリーズの大成功があるのかもしれない。
ハイグリップ? ツーリング?
テスト当日の朝、編集部でX-ADVに装着されたパワーシフトと初めて対面した僕は、ん?と思った。事前に読んだプレスリリースには、スポーツツーリングタイヤと記されていたものの、トレッドパターンはどことなくハイグリップスポーツタイヤのパワー6に通じる雰囲気で、ロードシリーズと比べると明らかに溝の量が少ない。もしかするとパワーシフトは、既存のパイロットパワー3スクーター路線を継承しているのだろうか……?
その答えを先に言ってしまうと、必ずしもそうではなさそうだ。もっとも僕はパワー3スクーターを体験していないのだが、押し引きや直進時に感じる転がり抵抗の少なさ、路面の凹凸を柔軟にいなしていく上質な乗り心地、速く走ることを強要しない優しくてしっとりとしたハンドリングは、紛れもなくスポーツツーリングタイヤだ。
かなりスポーツ寄りなのか!? と思いきや、直進するだけで上質な乗り心地が伝わってきた。
今回は雨天でテストできなかったものの、ロードシリーズで培った技術のシリカコンパウンドやサイプを導入していることを考えると、おそらく、ウェット路面でも十分な安心感が得られるのだろう。
ただし、パワーシフトの魅力はそれだけではなかった。ひとたびワインディングロードに足を踏み入れれば、十分以上のスポーツライディングが堪能できるのだ。中でも僕が感心したのは、コーナー進入時にブレーキングを行った際の明確な減速感、車体を深く傾けたときの安定感、立ち上がりで尻に伝わる濃厚なトラクションなどで、純正を含めたオン・オフ兼用のブロックパターンタイヤでは、そういったフィーリングはなかなか得られないものだと思う。
ワインディングロードで万能性に舌を巻く。
なおミシュランのパワーシリーズと言ったら、従来はスポーツタイヤとほぼ同義語だったのだけれど、今回テストした製品の場合は、ライダーの心を積極的に“ハンドリング・走りの愉しみにシフトする”という意味で、パワーシフトという名称が与えられたのではないだろうか。
いずれにしてもパワーシフトは、オンロードに的を絞った万能スポーツタイヤだから、一部のオフロード好きは不満を感じるかもしれない。とはいえ、X-ADVやT-MAXシリーズ、AK550などのオーナーのほとんどは、オンロード用と割り切ったからこそ実現できた万能性に、かなりの好感を抱くことになるだろう。
【TESTER 中村友彦】新旧タイヤ事情に詳しい、業界29年目の2輪ジャーナリスト。近年のミシュランのラインアップでは、スポーツツーリングラジアルのロード6と新世代バイアスのロードクラシックがお気に入り。
MICHELIN POWER SHIFT のディテール
トレッドパターンは、どことなく同社製ハイグリップスポーツタイヤのパワー6を思わせる雰囲気。ただしショルダーに配置されるサイプは、スポーツツーリング系のロードシリーズで培った技術の転用だ。
近年のミシュランは、サイドウォールで各製品の個性を演出している。パワーシフトの社名と製品名は、深みのある陰影を構築するベルベット調のプレミアムタッチデザインで、この手法はロード6やロードW GTも共通。
ウェット性能に優れるシリカを採用したコンパウンドは、耐久性とグリップ力を高次元で両立する3分割構造(2CT+)。図内に記されたレインフォースドラジアルXは、Xラジアルカーカスと補強プライの組み合わせで、上質な乗り心地を実現する技術。
ロード5/6と同じく、サイプは内部に進むほど幅が広くなる逆三角形構造。ミシュランがウォーターエバーグリップと命名したこの技術は、タイヤが摩耗した際の排水性の維持に貢献する。
WER SHIFT 発売サイズ
フロント | 120/70R15 M/C 56H | 2月発売 |
フロント | 120/70R17 M/C 58H | 2月発売 |
リヤ | 160/60R15 M/C 67H | 2月発売 |
※価格はオープン
※本記事はミシュランが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。