クチバシ付きになって国内販売されたVストローム1000から6年、Vストロームは1050と車名を変えて2回目のモデルチェンジを行った。中身は熟成路線・ルックスはデザートレーサー、はたしてその走りは? モーターサイクルジャーナリスト・ノア セレンが風光明媚なスペイン南部・マラガへ飛んだ。
【TESTER:ノア セレン】『ミスターバイクBG』誌などで活躍中のジャーナリスト。プライベートでも長らくVストを愛用(酷使!?)しており、その魅力のすべてを知り尽くす。『ヤングマシン』本誌初登場!
●文:ノア セレン ●写真:スズキ ●ウェア協力:アライヘルメット/アルパインスターズ ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
「凄くない」ことの本当の「凄さ」
自分でも長らくVストロームの650に乗ってきて、かつ他社含めて最新モデルもすべて乗り尽くせる立場にいるのに、新型1050に乗ったら改めて「大排気量アドベンチャーって何が求められているんだろう」と考え込んでしまったというか、ハッとさせられたというか……。コンセプトの中に「シンプリー・モア・Vストローム」、要は単純によりVストロームらしくというのがあるのだが、この「らしく」の部分をVストロームブランドは大切にしてるんだなぁ、と感じさせられたのだ。
というのも、250/650/リッターと3機種展開するVストロームブランドにおいて1050は頂点モデル。すると「凄さ」が求められているような気がしてしまうし、事実他社はこのような頂点モデルはみな「ドウダスゴイダロウ!」感が確かにある。乗っても確かに「スゴ!」となる。
しかし、1050はいい意味で「凄くない」のだ。構えて乗るとちょっと拍子抜けするというか、リッタークラスのVツイン、しかもルーツは過激と評判だったTL1000Sのエンジンということを考えれば、「こんな従順な味付けにできるの!?」と思えるほど。前モデルもそんな性格だったからキープコンセプトではあるのだが、新型ではパワーアップしつつも口当たりのまろやかさが加わった感があり、改めて感じ入ったのであった。
さて、今回のモデルチェンジ、車名が1050となったことでエンジンも大きく変わったように思いそうだが、パワーアップはしているものの、排気量は変わらずの1037ccで、フレームや足まわりも特筆すべき変更はない。もっとも力を入れたのはデザインだろう。DRシリーズを担当したデザイナー本人を迎えることで、かつてのデザートレーサーのイメージをこれまで以上に追求、スズキが元祖となるクチバシデザインもアップデートさせた。
しかしこれには「見た目が変わった」で片づけられない副産物も付いてきた。これまでの有機的なデザインから直線的な、スポーティとも言えるデザインになったことでかなり車体がコンパクトに感じられるのだ。寸法はほぼ変わらないのだが、ルックス的に明らかにスリム、そして跨ると650とあまり変わらないんじゃないかという手の内感がある。特にアクセサリーなどが純正装備されないSTDはスリム&スタイリッシュで、リッタークラスの威圧感のようなものはほぼゼロ。これは親しみやすさや乗りやすさに大きく貢献しており、より多くのライダーに喜ばれることだろう。
もうひとつのアップデート項目は電子制御の充実。車体姿勢を把握するIMUのアップデートにより、坂道発進のサポートや下り坂でのリヤブレーキアシストなど細かな機能が追加されたほか、ライドバイワイヤーになったことでドライブモードセレクタも追加。主にXTに装備される各種電子制御は安全装備として良きサポート役というイメージだが、電子制御スロットルボディを採用したおかげで、ユーロ5対応と同時にパワーアップを果たせたというのも事実だ。
とはいえ、Vストロームの本質は変わっておらず、「凄くない」ことが逆に「凄いツアラーモデル」を作り上げている。さらに進められたVストロームイズムである。
国内発売をまもなく控えているスズキVストローム1050/XTの海外試乗レポート。次ページではハンドリングのインプレと装備まわりについて解説する。
(前ページより続く) エンジンの接しやすさや唐突さがないゆえの長距離性能はもちろん好印象なのだが、それは前モデルから基本的に引き継ぐもの。一方で前モデルから「これは変わったな」と強く感じたのはハンドリ[…]
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