’18年末のホットロッドショーで最初にカスタムモデルとして姿を見せ、翌’19年5月に「コンセプトR18」として発表。’20年4月に正式発表され、ついに日本上陸を果たしたBMWの完全新作クルーザー「R18ファーストエディション」を試乗した。
【TESTER:青木タカオ】ハーレー専門誌『ウィズハーレー』の編集長も務める、クルーザーに精通するフリージャーナリスト。BMW R80を愛車としていた時期もあり、フラットツインにも一家言アリ。
長旅に出たくなる、味わい深い乗り味
低く長い大きな車体は、誰の目にもハイエンドであることがわかるだろう。艷やかな黒に塗装され、2本のピンストライプが手書きで引かれている。塗装の仕上げの良さはBMWでは当たり前のことだが、フェアリングもウインドプロテクションもないシンプル極まりない車体は、ペイントを見せる面積が絶対的に大きく、特にこのファーストエディションは、各所に施されるクロームの深い光沢といい高級感漂う細部の作り込みといい、ひときわ丁寧かつ美しい。これだけで首ったけになってしまうライダーも少なくないだろう。
しかし、魅了されるのはまだ早い。ライディングすれば、見せかけだけでないことがよくわかる。エンジンは目覚めるとともに、縦置きクランク&シャフトドライブならではのトルクリアクションで大きく揺さぶられ、あらかじめ知っていないと面食らうかもしれない。アイドリングは900回転で落ち着き、左右出しのマフラーが乾いた音を奏でる。ブリッピングすればその度にグラっときて、排気音もブオンッと力強い。
大きなシリンダーが左右に突き出た水平対向2気筒エンジンは、ボア107.1×ストローク100mmで1802cc。BMW史上最大で、排気量を示すプレートのなんと誇らしいこ
とか。ホイールベースも1725mmと長く、圧倒されるほどに車格もデカイ。ダウンサイジングが叫ばれる昨今だが、時代がどうあろうと大きいことはクルーザーにとって見逃せない魅力となる。大排気量車ならではのゆったりとしたトルク特性や、巨体でしか味わえないおおらかなライドフィールがロングライドには欠かせないからで、キャパシティが余裕をもたらしてくれるのだ。
街乗りは2000回転前後で悠然とこなし、6速100km/h巡航も2200回転で事足りてしまう。トルクフルだが荒々しさはなく、フラットツインらしく回転フィールはスムーズそのもの。最大トルクを発揮する3000回転を超えても滑らかに回り、4750回転で最高出力91psに達する。メーターの目盛りは200km/hを刻むが、ワイドバーで上半身を起こして乗る堂々たるライポジがゆえ、乗り手は風圧をまともに受け止めなければならない。音を上げるのは、エンジンや車体よりライダーが先なのは言うまでもない。
水平対向エンジン特有の低重心な車体は抜群の直進安定性を見せ、前後サスペンションもしっかりと仕事をする。ダンパー重視でありながらしなやかに動き、乗り心地がいい。クラシックなスタイルを優先し、操作性や走りを犠牲にするなんてことはなく、長い車体にしては旋回性も申し分ない。リヤ荷重でトラクションを感じながら、安心してアクセルを開け曲がっていける。
駆動力をダイレクトに後輪へ伝えるシャフトドライブが押し出しの強さを強調し、ライドモードを最もスポーティな”ROCK”にすれば、スロットルレスポンスがシャープになってパワフルさも増す。345kgの巨体がもたつくことなく猛然とダッシュし痛快極まりないが、ノンビリと流したいなら、潤沢なトルクに包まれるようトコトコと味わい深い”ROLL”に設定したくなる。長旅を前提とした本格派クルーザーとして、このモードの味付けが徹底追求されたことは想像にたやすい。いつまでも走り続けたい、そう思わせる角の取れた鷹揚な乗り味がロングライドへ誘い、相棒として長く付き合えそうだ。
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