【技術解剖】悪魔の爪痕を消せ!スズキ「RE-5」のロータリーエンジン防振・耐久化メカニズムと車体設計

【技術解剖】悪魔の爪痕を消せ!スズキ「RE-5」のロータリーエンジン防振・耐久化メカニズムと車体設計

ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事ではスズキRE-5の主要構成部品や技術について解説する。


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU

ハウジングのCEMメッキと3分割式アペックスシール

デビュー時には2/4輪界の革命機と呼ばれたロータリーエンジン。ただし開発元のNSU自身も’59年の時点ではロータリーエンジン車を量産した経験はなかった。排気量や発熱対策、耐久性の確保といった難題に立ち向かったメーカーとしては’60年代のマツダが有名だが、’70年代前半のスズキもマツダに匹敵する努力をしていた。

まずロータリーエンジン特有の問題として有名な、回転するローターがハウジング内面につける傷・チャターマーク(マツダは悪魔の爪痕と呼んだ)には、バックアップスプリング付きの3分割アペックスシールと、ハウジング内面に施すCEMメッキで対処。

発熱対策としては、エンジン本体に水冷+油冷機構を導入し、排気管内に走行風を取り入れるラムエアシステムを採用。さらには万全な潤滑を実現するため、通常のエンジンオイルに加えて2ストと同様の分離給油を装備し、扱いやすさに配慮した2バレル式キャブレターを専用設計するなど、スズキの創意工夫は細部にまで及んでいた。

こうして生まれたスズキのロータリーエンジンは、2輪用として堅実な最適化を図られ、既存のレシプロエンジンとは一線を画するスムーズな吹き上がりと振動の少なさを実現。とは言え、問題点の克服と耐久性を重視しすぎた結果として、RE-5のスペック(63ps/230kg)は、従来の同社の旗艦だったGT750(67ps/215kg)を上回ることができなかったのである。

ENGINE:独自の改善策で耐久性を確保

目的が世界最速なら、ローター数は2、排気量は750㏄以上にしたいところだが、新しい内燃機関を手がけるにあたって、スズキは1ローター/497㏄という堅実な構成を選択。少々中途半端な排気量は、日本でロータリーエンジンに課せられる換算係数・1.5を掛けて750㏄以下に収めるため。当時のスズキはナナハン規制が存在する日本でもRE-5を販売するつもりだったのだ。

エンジン左側には、オルタネーターとオイルタンクを設置。ロータリーエンジンの要となるハウジングは3分割式で、17本のボルトを用いて結合。

主役のハウジング+オムスビ型ローターが埋没してしまうほど、RE-5のパワーユニットは左右に補器類を満載。1次減速はスズキ車では珍しいチェーンで、点火はポイント式CDI。

【2つの通路を備えるキャブ】ミクニ製キャブレターは2バレル2ステージ式。スロットル操作と連動するバタフライバルブは両バレルに備わるが、セカンダリー側にはダイヤフラムで作動するバルブも存在。

ロータリーの弱点を克服する、万全の発熱対策

巨大なラジエターの下に見えるのはオイルクーラー。GT750では不要と判断され、’73年型で廃止された電動ファンは、RE-5では標準装備となった。

エンジンから出て来た排気ガスは、フィンが刻まれたアルミ製マニホールドを経由して、強制冷却式のラムエアシステムを内蔵する左右の排気管に導かれる。

FRAME & CHASSIS:GT750をベースに最適化

スイングアームピボット周辺に違いはあるものの、ダブルクレードルフレームはGT750とよく似た構成で、2本のタンクレールがそのままシートレールになる点もGT750と同様。ただしキャスター27°/トレール108㎜/軸間距離1500㎜という車体寸法はGT750より安定性重視。同時代の日本車のエアボックスがシート下前半を占拠していたのに対して、キャブをエンジン左側面に設置したRE-5はミッション上部だけで十分な容量を確保。

【背骨の前部はプレス材】ヘッドパイプ後方にはプレス材を使用。そのプレス材を貫通する形でラジエタークーラントの注入口が上部に顔を出すこともGT750と同様だ。パワーユニットのマウントは6点リジッド。

【軽量化を意識してアルミリムを採用】アルミリムのスポークホイールや前後ショックユニット、フロントフェンダーなどは専用設計。φ296㎜ディスク+対向式2ピストン/φ200㎜ドラムのブレーキは同時代のGT750と共通。

ステップバーは固定式。“らしさ”を強調するためか、クラッチ/レリーズアームカバーにはロータリーエンジンのエンブレムを設置。

ヒンジ式のシートはこの時代のスズキならではの左開き。シート下には大容量バッテリーと分離給油用のオイルタンクが設置されている。

左右出しの排気系はステンレス製で、全長はかなり長め。エンド部にはラムエアからの冷却風の流れを促進するエジェクターが備わる。

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