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Z1に負けない! 一度味わったら病みつきになる痛快ダッシュ力だったカワサキ「Z750TWIN」[1976-]【柏 秀樹の昭和〜平成 カタログ蔵出しコラム Vol.27】

Z1に負けない! 一度味わったら病みつきになる痛快ダッシュ力だったカワサキ「Z750TWIN」[1976-]【柏 秀樹の昭和〜平成 カタログ蔵出しコラム Vol.27】

ライディングスクール講師、モータージャーナリストとして業界に貢献してきた柏秀樹さん、実は無数の蔵書を持つカタログマニアというもう一つの顔を持っています。昭和~平成と熱き時代のカタログを眺ていると、ついつい時間が過ぎ去っていき……。そんな“あの時代”を共有する連載です。第27回は、華やかな4気筒Zの陰に隠れながらも実は乗り味に優れていたZ750TWINのお話。


●文/カタログ画像提供:柏秀樹 ●外部リンク:柏秀樹ライディングスクール(KRS)

意欲的なメカニズムが地味なイメージに?

1972年に登場して一世を風靡したカワサキ初の4気筒バイク900ccのZ1。その弟分として1973年に750ccのZ2(正式名750RS)が日本市場に登場しました。

先行デビューしていたCB750フォアの爆発的なヒット作とその弟分のCB500フォアに劣らぬ人気により、CBシリーズそしてZ1、Z2の代表4機種が「主流は日本製4気筒にあり!」と思わせるに十分な高性能と圧倒的な存在感をアピールしました。

好調な販売を国内外で記録していくカワサキは新たなナナハンを投入。それが1976年登場の2気筒のZ750TWIN(Z750ツイン)でした。

エンジンは360度クランクとバランサーを装備する空冷4ストロークDOHC2バルブ並列2気筒745ccというもの。4気筒のナナハンがすでに70馬力前後をアピールしている中で、わずか55馬力という低い数値に誰もが驚きました。

一方のトルクは他のナナハンと同等の6.0kg-mという高い数値(同時期のZ2は5.6kg-m)を提示。しかし、わずか3000回転で発生するという奇想天外な設定に2度びっくり。過去にそんな低い回転域で最大トルク発生のバイクは存在しなかったのです。

それゆえの不幸というか残念というべきでしょうか。世の大半は馬力数値しか見ていなかったか、あるいはZ2よりもデザイン的に劣ると見られたのか、高性能ステータスの象徴となった4本マフラーが2本だからか、Z750ツインは発売直後からほとんど見かけることのないレアな存在だったのです。

しかし、バイクはカタログで乗り味がわかるわけではありません。実際に乗ってこその世界です。見ると乗るとでは大違いでした! ちょっとアクセルを開けただけでZ750ツインはロケットのように発進するのです。同時期のZ2(Z750フォア)より20kg軽量でしかも3000回転というアクセルちょいひねりだけ。モタモタした感じはゼロ。つまり速く走ろうとせず、普通に走るだけで超速の世界へとライダーを誘ってくれたのです。

多分、100km/hまでならZ1より速い国内最速のナナハンだったのではないか。もちろんエキスパートの運転ならZ1が速いのでしょうけれど、エンジンを高回転まで回さなくて良いから誰でも発進で失敗せず俊足ぶりが堪能できてしまう、という意味で最速なのです。

当時からカワサキのショップはジムカーナファンが多く、あえてZ750ツインを選択するライダーがいましたが、ターンを終えた直後のダッシュ力は見事というほかありませんでした。4気筒だとエンジンの低回転での粘りはあるけれど押し出しも強くない。中高回転まで回してナンボ。なのでギヤレシオをショートにして楽しむライダーが少なくなかったのですが、Z750ツインは改造なしでエキスパートのダッシュ力が誰でも楽しめたというわけです。

メイン市場とした北米ではZ1の人気に遠く及ばなかったものの、専門誌の評価はそれほど悪くはなかったと記憶しています。それは1960年代から常識だった「シグナルGPで速いバイクが偉い!」からだったかもしれません。

北米向けのカタログでは、“歯の詰め物が取れるほど”と評された激しい振動という問題を抱えていた英国製モデルに対し、カワサキが用意した答えは逆回転するバランスウェイトをエンジン内に設置することで振動の大幅な低減だとアピール。「日本で最もパワフルなバーチカルツイン」「5速ギヤに入れたまま時速35マイルから加速できる」「ビッグバイクとしては異例なほど軽快」といった文言が並ぶ。車体色は“ルミナスダークグリーン”と“ルミナスダークレッド”の2色がラインナップされた。

ストリートで気楽に乗れる軽量スリムなナナハンで足つき性も優れ、しかも高価格ではない。第1次、第2次オイルショックの余波でガソリン価格の高騰があり、低燃費なナナハンとしても一定の支持者がいました。

実際に私もZ750ツインでツーリングに出かけましたが、おとなしい走りをするとカタログ数値に迫るリッター30km/L以上を何度も経験しました。

そして乗り味です。それまでの空冷2気筒500ccを超えるカワサキ車はW1系という旧来のモデルのみでしたが、W系のドドドッとくる排気音と鼓動感は子のZ750ツインにはありません。

バランサーが見事に低振動の役割を果たして4気筒に劣らぬ滑らかさを見せつけたのです。

振動=鼓動を是としたらZ750ツインは明らかに否定されるでしょうが、実際にストリートを走り、フリーウエイを流したら、低振動がどれだけ心地良いかわかります。

そうです、カワサキは情緒と決別して欧米の走行実態に合わせて快適性を選択したのです。

メグロ~Wシリーズの血統から新たなDOHCへ

決別はそれだけではありません。英国車BSAを範として生まれたW1はメグロを吸収して生まれたバイク。Z1、Z2を生み出したカワサキにしてみれば世界をリードする日本車へと完全に脱却していく時期にあったのです。既存のスタイルや乗り味から抜け出して、新しい価値観を日本の新しいパワーとしてアピールしたかったのです。

そんな決別を果たし、強烈なダッシュ力バイクではありましたが、さすがに高荷重がかかるハイスピードコーナリングでは車体系がおぼつかなくなります。サーキットなどの3桁の速度域ではやはりZ750フォアに及ばなかったのも事実です。

1970年代後期にサーキットへ頻繁に出向くライダーはむしろ稀ですから実質的なハンデなどないナナハンだったわけですが、大型二輪免許取得が非常に難しい日本のライダー環境では400ccまでのミドルクラスが主流となり、ナナハンを手に入れるライダーは少数派。その少数派の中であえてツインを選択するライダーがいたかと言えば、ほとんどゼロでした。圧倒的に4気筒バイクを選択する時代だったのです。

今でも乗りたくなるレア車

Z750ツインは開発時のニックネームでもユニークな名称が使われました。

肝入りのZ1には堂々として美味しい「ニューヨークステーキ」が使われました。市販化直前でお蔵入りとなった2ストローク・スクエアフォアの750はちょっとクセのある独自の世界観として「タルタルステーキ」を。

定番モデルとして支持されていたホンダCB350に対して、個性重視のカワサキがオーソドックスを絵に描いたような入門用400cc2気筒のZ400にはヒラメを意味する「HALIBUTステーキ」。そしてZ750ツインは割安ながら味わい深い「T-BONEステーキ」と呼んでいました。

馬力数値よりも3000回転で最大トルク! という骨のあるコンセプトを貫いたT-BONEステーキは1979年のB4型で生産終了となりましたが、カワサキは4気筒エンジンのクルーザーモデルだけでなく、同様にZ750ツインのエンジンを使ったクルーザーZ750LTDをリリース。駆動系をケブラーで構成するベルトドライブ式としてさらなる静粛性とメンテナンスフリー化を推進しました。

Z750LTD

ちなみにZ750ツインの1977年B2型はカラーリング&グラフィック変更とフロントブレーキマスターシリンダー、スターターロックアウトスイッチなどを変更。

1977年[B2]のブルー。

1978年B3型はカラーリングとグラフィック変更のほか、フロントブレーキキャリパーをフォークアウタチューブ後方へ移動、ジェネレーターも変更。

1978年[B3]のグリーン。

1979年B4型はカラーリングとグラフィック変更のほかタンクエンブレムがKAWASAKIからKawasakiへ、という流れでした。

1979年[B4]のレッド。

国内販売したZ750ツインは非常にレアですが、50年経過した今でも健在だとしたら是非とも走り出してみたい。当時のバイクを今乗ると拍子抜けすることが大半ですが、このバイクの最初のスロットルオンは多分、今でも気持ち良いはずです。

いつの時代も本当は乗りやすさこそが楽しさの原点であることを、このZ750ツインは教えてくれると思います。

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