欧州で販売中のTRAILMAX RAIDと似ているようで異なるコンセプトタイヤ

【モビショーで初公開】アドベンチャーバイク専用のダンロップ製ごっついタイヤはここが違う!

【モビショーで初公開】アドベンチャーバイク専用のダンロップ製ごっついタイヤはここが違う!

その昔は「ビッグ・オフ」などと呼ばれていたが、今ではオン・オフを問わず駆け抜けるツアラーは「アドベンチャーバイク」とカテゴライズされ世界中で人気を集めている。しかし万能が故にタイヤの選択で迷うことも多かった。そんなアドベンチャーバイクユーザーに福音となりそうなアドベンチャーバイク専用のコンセプトタイヤがJMS2025のダンロップブースでお目見えした!


●文&写真:ヤングマシン編集部 ●外部リンク:ダンロップ

JMS2025のダンロップブースに出現

世界中で人気のアドベンチャーバイクだが、地域によって走行シチュエーションは異なり、日本国内ではほとんどオンロード専用ツアラーのように振る舞っているのに対し、欧米ではオフロード走行の割合も高いという。

そして欧米のアドベンチャーバイク乗りから高評価を得ているタイヤのひとつに、ダンロップのTRAILMAX RAID(トレールマックス レイド)がある。大型のブロックパターンからしていかにもオフロードグリップに特化しているように見えるが、存外ターマックでの乗り心地も良いらしい。

しかし欧米豪のダンロップブランドはグッドイヤーが所有していた兼ね合いもあり、日本への導入はされずにきた。そんな情勢が、2025年のグッドイヤーによる住友ゴム工業へのダンロップブランド完全売却によって覆る。RAIDの国内展開が可能になったのである。

JMS2025のダンロップブースにディスプレイされたBMW R1300 GSアドベンチャーには、アドベンチャーバイク専用に設計された「アグレッシブアドベンチャータイヤ」が装着されていた。サイズは前120/70R19、後170/60R17。

オフに強いアドベンチャーバイク専用タイヤ

コンセプトタイヤとして商品化はおろか名称さえ確定していないこのタイヤは、ダンロップブースにディスプレイされるにあたって便宜的に「アグレッシブアドベンチャータイヤ」と表記されていた。

というのも、前述したように欧州を中心に展開しているRAID(TRAILMAX RAID)とは、トレッド面のブロック形状や配置はこの「アグレッシブアドベンチャータイヤ」と似ているものの、投入されているタイヤテクノロジーが異なる。

「アグレッシブアドベンチャータイヤ」には3つのテクノロジー、プログレッシブ・コーナリング・ブロック・テクノロジー・アドバンスド(PCBT ADVANCED)/レインフォースド・スクープ・テクノロジー(Reinforced Scoop Technology)/ハイシリカ・エックス(High Filling Silica X)という、オフロード性能を飛躍的に高める技術が備わっている。

現在はコンセプトタイヤであり製品化も未定であるためか商品名も無く、便宜的に「アグレッシブアドベンチャータイヤ」と表記されていた。欧州を中心に販売されているRAID(TRAILMAX RAID)と性格は近い。

グリップ性能と接地感を向上するPCBT ADVANCED

しなやかなブロックによって得られるスライドコントロール性と、エッジ効果の増大によるコーナーグリップ性を同時に向上させる、2段ステップブロック形状のPCBT(プログレッシブ・コーナリング・ブロック・テクノロジー)を更に進化させたPCBT ADVANCED。

PCBTの回転方向エッジ量を増やすことで旋回中のグリップを向上させ、同時にPCBTの形状を貫通溝形状にすることによってブロックが路面に当たった時のブロック表面のしなり量を増やし、接地感を向上させるというもの。そもそもモトクロス競技専用タイヤに採用された技術だ。

ブロックに貫通溝形状を施すことでブロック表面のしなり量を増やして接地感を向上するPCBT ADVANCED。オフロード性能を高めるとともに、ビジュアル面でもユニークな演出になっている。

地面を強力に掻きむしるレインフォースド・スクープ・テクノロジー

砂地や泥濘地などを走行する際、背の高いブロック形状は地面を掻きむしるとともに、トレッド面の泥捌け効果を発揮するが、レインフォースド・スクープ・テクノロジーはその効果をブロックの形状により強化。

タイヤの転がり方向に向けてブロックがオーバーハング形状で配置され、まるで鍬で畑を耕すときのように地面を強力に掻く。これによりオフロードでもさらにトラクションを高めることが可能になり、アドベンチャーバイクでも安心して不整地に飛び込めることだろう。

タイヤを横方向から見て、写真向かって右方向が進行方向。ブロック右側の形状がオーバーハングしているのが見て取れる。この形状によって鍬のように路面を強力に掴み、掻きむしる。

補強材のほとんどをシリカで構成するハイシリカ・エックス

低温でも柔軟性のあるシリカの充填量を高めることで、温度依存度の少ない安定したグリップ特性とウエット性能を実現するダンロップの基幹技術、ハイシリカ(高充填シリカ)。

優れた補強性により耐摩耗性も向上するこのハイシリカの充填比率をさらに高め、補強剤のほとんどをシリカで構成することに成功したのがハイシリカ・エックスだ。

シリカの分散性を向上させる製法によりコンパウンドの柔軟性と腰のあるグリップ感が向上し、路面との密着性を高めてウエットグリップを向上させている。

シリカの充填量と分散性の向上により、路面との密着性が高まり安定したグリップ力を発揮するシリカ・エックスをコンパウンドに採用。オフロードはもちろん、オンロードでも効果を発揮する。

市場導入は?

アドベンチャーバイクユーザーが多いこの日本でも歓迎されそうな「アグレッシブアドベンチャータイヤ」だが、現在はあくまでもコンセプトタイヤという立ち位置。

砂漠や荒涼とした大地が広がる欧州や北南米、豪州大陸と比べ、アドベンチャーバイクで走行できるオフロード・シチュエーションは日本には少なく、住友ゴム工業でもニーズを調査のうえで導入の可否を決めていきたいという。今後の展開に期待したい。

オンロードはもちろん、オフロードの走破性を高めたダンロップの「アグレッシブアドベンチャータイヤ」だが、国内導入は現在のところ未定。

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