キリンで夢見た世界観がまた新品で買える!

待望のSHOEI「ワイバーンØ」発売! ワイバーンIIのユーザーが新旧を実際に使って徹底比較してみた!

待望のSHOEI「ワイバーンØ」発売! ワイバーンIIのユーザーが新旧を実際に使って徹底比較してみた!

SHOEIが新開発のフルフェイスヘルメット『WYVERN Ø (ワイバーン ゼロ) 』を9月に発売(Sサイズのみ10月発売)。これを心待ちにしていたのは、旧「ワイバーンII」ユーザーの筆者だった。さっそくSHOEIから製品をお借りし、徹底比較してみたぞ!


●文:高橋祐介(ヤングマシン編集部) ●写真:山内潤也 ●外部リンク:SHOEI

念願のWYVERNシリーズ最新作の登場だ!

ついに復活を遂げて、新発売となったSHOEI「ワイバーンØ」。歴代ワイバーンシリーズを愛用してきた筆者としては、どんな進化を遂げたのが期待しかない。そこで、私物のワイバーンⅡと借用したワイバーンØで、新旧の違いを比較してみた。

まずは、ちょっとだけこの手のヘルメットで歴史のおさらいをしてみよう。

スクリーンの開閉機構部分や、チンバーデザインはワイバーンに近い形状をしている。

皆さんは、1996年にSHOEIから発売された「VYRCE(ヴァイルス)」というモデルをご存知だろうか?

このモデル。当時のウォンウォン系ドラッグレースブームの時に登場したモデルで、まさにマッスル感を強調されたモデルとして登場したフルフェイスヘルメット。

過去の資料の写真のため、画質が悪いのだが、この時、すでに今のWYVERNへと続く3本スリットと、チンバーデザインや首元のめくり部分など4輪レース用ヘルメットを意識したような独特の形状は、まさに始祖モデルとも言えるだろう。現行ネオクラシックシリーズの「EX-ZERO」にも近いデザインだ。

さらに97年、当時アメリカで人気の高かったドラッグレースの中で、重量感のあるカスタムマシンに合うヘルメットとして販売されたのが初代「WYVERN(ワイバーン)」。そして、内装のブラッシュアップを経て進化した「WYVERN II(ワイバーン ツー)」へと続いていったのだ。

初代WYVERNの当時の広告も、走り屋たちを刺激するものだった。

WYVERN ØはしっかりとWYVERNシリーズを継いで進化しているのか!?

さて、比較に入ってみよう。「WYVERN(2007年販売終了)」、「WYVERN II(2011年販売終了)」と愛用してきたこともあり、名残惜しいデザインを残したく内装などを含めリフレッシュした筆者の「WYVERN II」と、今回発売されたばかりの「WYVERN Ø」を実際に揃えてのテストだ。

ヘルメットはWYVERN ØとWYVERN II共にLサイズ。さっそく装着してみるとWYVERN Øの方が軽量で、前後のバランスが取れている。特にチンバー部分の軽さが際立った印象だ。また、シールドの開口面積が広く、左右の視界が広くなっている。これは防曇シートの装着や光学特性を考慮し、歪みを抑えたシールドへ進化もあり好印象だ。

ワイバーンⅡではSHOEI独自のデュアルライナーの採用や、正面からの風を上部や左右へとエアルートを設けていたが、WYVERN Øでは最適なデフロスターとして機能している。さらに内部にロアインテークシャッターレバーが装備されているので、シンプルな形状を維持できている。WYVERNシリーズへのSHOEIこだわりを感じる部分だ。

WYVERNØとWYVERN IIの外観を比較

WYVERN Ø(左/グレー)はチンバー部分をよりシャープな形状になり、WYVERN II(右/ホワイト)のような突き出したデザインは控えめな形状になっている。

WYVERN Øではシールド開閉部やエアインテークを集約された。従来よりもシールド上下の面積が大きくなっている。

WYVERN ØとWYVERN IIではシールドロックシステムが刷新されている。シールドの厚みも増した。

首元までを巻きこむようなWYVERN Øのチンバーに対し、WYVERN IIはくびれた形状をしている。

エアアウトレットの位置が変更され、WYVERN Øは上部に新設された。

シルエットはほぼ変わらないが、首元にかけて絞られている形状はWYVERN IIの方がややきつめ。

サイドのスリットからの風抜けは、WYVERN Ø はスムージングされ、WYVERN IIのようなエアロ形状はなくなっている。

WYVERN Øのヘルメットサイドでは、インカムを装着しやすい平面部が広くシンプルな造形だ。

走行目線では、首周りに巻き込む風がWYVERN Øの方が少なく、WYVERN IIではチンカーテンがないと巻き込み風が入ってくる状態だった。

WYVERN Øは風切音を軽減させる工夫がスゴイ!

外観の形状が大きく違うことはわかった。次は内装やディテールもチェックしてみよう。近年のSHOEIではほぼすべてシールドシステムを採用しているため、シールドの密閉性が高くなっている。以前のWYVERNシリーズはネジ固定の無段階開閉であり、シールドロックもアナログなものだった。

これはこれで曇りそうな場合に少しだけ開けておく、なんてことも可能だったが、WYVERN Øにはシールドの気密性を調整できるレバーも追加されたので心配無用だ。走行中の調整は難しいが1mm程の範囲で動かせる。そして、旧WYVERNシリーズ最大の残念ポイントだった風切音の問題も、WYVERN Øではボーテックスジェネレーターをシールドサイドに装着し軽減されている。もともと突起物がほぼ皆無なWYVERNなので、シールド部のスキマが減ることでかなり改善された。インカムを装着してもスピーカー音がしっかり聞こえるのは感動モノだ。

WYVERN Øに採用されたボーテックスジェネレーター。このシールドサイドの小さい突起で、かなり音の軽減になっている。

WYVERN Øではロアインテークはデフロスターとして機能している。センターロック仕様だが、ここは賛否が分かれている模様。グローブでも開閉しやすく、均等に開くのは気持ちがいい。

WYVERN II(左/ホワイト)とWYVERN Ø(右/グレー)はコンセプトは同じなだけに共通項も多い。

WYVERN II(左/ホワイト)とWYVERN Ø(右/グレー)。

WYVERN II(左/ホワイト)とWYVERN Ø(右/グレー)。

WYVERN Ø(左/グレー)とWYVERN II(右/ホワイト)。シールド上部のエアルートも風の流れを考えた形状に変更されている

WYVERN Øは段階固定ができるが、WYVERN IIでは無段階。シンプルが好きなライダーはWYVERN IIのような無骨な仕様を望むかもしれない。

エアインテークも風洞試験により最適化されている。WYVERN IIでは風切音が鳴りやすかったクリアパーツだと通気孔が丸見えだ。

わかりにくいが、左がWYVERN Øで右がWYVERN II。エマージェンシークイックリリースの採用によって、首周りの内装はすべて取り外し可能になっている。インカムなどを装着しやすい構造だ。

新型はイヤースペースもあるため、スピーカーの設置も容易になっている。WYVERN IIでは反響音が響き渡っていた。

内装を比較してみたが、大きな違いはないが、WYVERN Ø(左)の方がチーク側のクッションは厚みがあり、生地感も起毛生地になっている。

WYVERNシリーズだけが持つ独特の世界観は健在だった!

装着した時の高揚感はWYVERNシリーズ共通。公道を自由に駆け回る楽しさを味あわせてくれる。

WYVERN ØとWYVERN IIを比較すると、ヘルメットデザインの進化にとどまらず、旧WYVERNでのネガだった「風切音」や「重量」の問題がしっかりと対策されていた。風切音に関して許容範囲は人それぞれだと思うが、筆者はWYVERN IIでは高速走行で鳴り続けるのが耳障りに感じていたのでとても助かる。1日被り続けた時の疲れなども少ないので、ツーリングでの使用でも問題ないだろう。

そして、なによりそのデザインで故・東本昌平氏の漫画「キリン」に憧れた筆者としては、またWYVERNを被れることの喜びでいっぱいだ。初心者からベテランでも被りやすく、個性が光る現代に蘇ったWYVERN Øで新たなバイクライフをスタートしてもらいたい。

SHOEI WYVERN Ø 主要スペックと価格

●価格:5万9400円 ●サイズ:S(55cm)、M(57cm)、L(59cm)、XL(61cm)、XXL(63cm) ●色:白、パール黒、つや消し黒、つや消し灰、濃灰、灰 ●規格:JIS ●構造:AIM+(Advanced Integrated Matrix Plus Multi-Fiber) ●付属品:布袋、ブレスガード、チンカーテン、シリコンオイル、防曇シート、スペア防曇シート用ピン、SHOEIロゴステッカー ●2025年9月発売予定(Sサイズのみ10月発売)

WYVERN Øのディテール補足解説と写真ギャラリー

旧モデルはサイドロックだったが、Øからはセンターロックシステムを採用する。シールドのたわみが抑えられ、気密性も向上した。

チンバーデザインをシンプルにするために、ロアインテークシャッターレバーは内部に装着されている。グローブでも操作可能だ。

内装は取り外し可能とし、首周りのフィット感が高く、緊急用ヘルメット取り出しシステム「E.Q.R.S」に対応している。

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