
警察官やパトカーを見かけると、安全運転をしていてもドキッとするときがある。そのぐらい、警察というのは抑止力として機能しているが、ネズミ捕りと呼ばれる交通取締りとなると、なぜか逆に姿を隠していたりする。これはなぜなのだろうか? その答えを元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。
●文:宅島奈津子(ヤングマシン編集部)
重点的な交通取締り場所は決まっている
安全運転を心がけていても、パトカーや白バイの姿を目にすると、必要以上にドキッとしたり、速度メーターを確認したりするといった経験がある、ドライバーやライダーは少なくないのではないでしょうか。現役の警察官でさえ、プライベートで運転する際は、そういった気持ちになるものです。それにしても、警察官はどういったところで交通取締りを行っているのでしょうか。
言うまでもなく、警察官は、交通事故の削減や交通違反の防止を目指しているわけです。必然的に交通事故や交通違反の多いところで、重点的に取締まりを行っているということになります。他に、速度を上げやすいところでもよく見かけますね。
それは単に、「取締りがやりやすいから」とか「違反者を捕まえやすいから」といった理由からではありません。違反の対象となり得るドライバーやライダーからすると、そういった気持ちになるのも無理はありませんが、前述したように、一番の目的は交通事故の削減のためなのです。
ネズミ捕りは警察用語じゃなかった!?
そもそもなぜ、「ネズミ捕り」と言われているのでしょうか。じつはこれ、警察用語ではなく、警察官が業務中に口にする言葉でもありません。あくまで俗語。速度を測定する機器が、ネズミを捕獲する罠のようにたとえられるようになったのが由来だと言われています。
どうして隠れて取締りをするの?
パトカーや白バイ、警察官の姿は、交通違反の抑止力です。「それなのに隠れてしまったら元も子もないじゃないか!」といった意見はもっともなのですが、きちんと理由はあります。それは、悪質な違反者を捕まえるためです。
なぜなら悪質な違反者は、捕まらないための運転をしています。彼らは警察官がいないところ、見ていないところであれば、違反してもいいと思っているわけです。要するに、警察官がいるところでは安全運転をするということですね。
こういった違反者を捕まえるために、警察官は姿を見せずに取締りを行っています。交通事故削減のために、交通違反防止のためにこうしたスタイルで行われているのです。
実際、違反者側の言い分には、「警察官がいたら停止したのに」、「気を付けたのに」といった声が多いです。これは逆に言えば、「警察官がいないから停止しない」ということ。これらの交通違反は、警察官が「違反しそうだ」と未然に防げるものではありません。
捕まらないためにではなく、事故に遭わないために
「取締りに合わないためにはどうしたらいい?」といった質問を受ける度に、「安全運転すればいいだけじゃないの⁉」と言いたくなるのですが、あえてアドバイスするなら、交通事故や交通違反が多いとされているところや、速度を出しやすいところを意識してみてください。前述したように、取締りが行われていることが多いので、いつもより気を付けて運転するとよいでしょう。
私たちが運転できるのは、運転免許を保有しているからです。それに、運転しているすべての人が、運転免許を取得するために、道路交通法を学んできました。法令順守することは当然、交通ルールや交通マナーを守ることです。日頃からそういったルールやマナーを守っていれば、ネズミ捕りに限らず、パトカーや白バイを警戒する必要はないかと思います。
「ネズミ捕りがこわい」と感じたり、パトカーや白バイの姿にドキッとするのであれば、一度ご自身の運転マナーを見直してみてください。誰に見られても恥ずかしくない運転をしていれば、痛くない腹を探られることはないですよ。
捕まらないために、ではなく、交通事故を起こさないために、交通事故に巻き込まれないために、交通ルールを守っていただけたらなと思います。
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