
2025年6月30日に刊行された『ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選』より、なつかしの50ccをまとめてみた。単なるモデル紹介ではなく、当時のライダーにとってそれぞれがどんな存在だったのか、文化や時代性を含めて振り返ろう。スポーツモデルを中心に、オフやクルーザーも登場だ。
●文:ヤングマシン編集部
- 1 ゼロハンが一番熱かった夏
- 2 本格ミニスポーツ:1971 HONDA BENLY CB50
- 3 1979 HONDA MB50
- 4 ツーリングも楽しめるゆったりスポーツ:1982 HONDA MBX50
- 5 本格フルサイズ水冷2ストスポーツ:1981 YAMAHA RZ50
- 6 1981 KAWASAKI AR50
- 7 チャンピオンマシンの技術を投入:1982 SUZUKI RG50Г
- 8 跨がった瞬間スペンサー気分に:1987 HONDA NSR50
- 9 元祖ミニバイク版フルカウルマシン:1986 SUZUKI GAG
- 10 隠れた市街地最速マシン:1988 YAMAHA TDR50
- 11 ミニレプリカのジャンルを確立:1986 YAMAHA YSR50
- 12 オフロードの入門に最適:1971 SUZUKI HUSTLER
- 13 世界中で愛されたトレッキングバイク:1981 HONDA CT110
- 14 1980 YAMAHA RX50 Special
- 15 1980 HONDA RACOON
- 16 1983 KAWASAKI AV50
ゼロハンが一番熱かった夏
多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。
それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか手が届かず、決してスポーティとは言えない原付を各自工夫してスポーツバイクのように乗り回していた。
そんな若者の心を捉え、1970年代の末になって本格的な原付スポーツが続々と登場してきた。中でも衝撃だったのは、7.2psの水冷エンジンを搭載したRZ50の登場だろう。
鋼管ダブルクレードルの車体にモノクロスサスペンション、6速ミッションといった能書きもさることながら、なによりその速さこそ、多くの原付ライダーが求めていた“スポーツバイク”であった。
後にこのRZの対抗馬としてホンダのMBXとスズキRG-Γがリリース。3メーカーの顔が揃ったことで、ゼロハンスポーツは大いに盛り上がりを見せ、1980年代には峠にレーシングスーツに身を包んだ若者が集まり一大ブームを形成。気の合う仲間とサーキットのレースに出ることが、手の届く最高の“遊び”であった。
本格ミニスポーツ:1971 HONDA BENLY CB50
このクラスでは珍しいタコメーターや、CB750と同じカムシャフトホルダーを採用。入門バイクにとどまらない本格ミニスポーツ。
【1971 HONDA BENLY CB50】主要諸元■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 49cc 6.0ps/10500rpm 0.41kg-m/8500rpm 車重74kg(乾)
1973 BENLY CB50/JX
タンク形状をよりスポーティに変更するとともにフロントブレーキにメカニカルディスクブレーキを採用する「JX」を発売。
【1973 BENLY CB50/JX】主要諸元■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 49cc 6.0ps/10500rpm 0.41kg-m/8500rpm 車重74kg(乾)
1979 HONDA MB50
一軸一次バランサー搭載の50ccエンジンをX型バックボーンフレームに搭載。足回りには ホンダ得意のコムスターホイールを履く。
【1979 HONDA MB50】主要諸元■空冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.0ps/9000rpm 0.56kg-m/8000rpm 車重78kg(乾)
ツーリングも楽しめるゆったりスポーツ:1982 HONDA MBX50
新設計の水冷エンジンを採用したことで、最高出力は自主規制上限値の7.2psを達成。大径29mmフォークにプロリンクサスペンションの足回りに、ゆったりとしたライディングポジションの組み合わせで長距離ツーリングも快適にこなす、懐の深いスポーツバイクに仕上がった。
【1982 HONDA MBX50】主要諸元■水冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.2ps/8500rpm 0.65kg-m/7500rpm 車重79kg(乾)
本格フルサイズ水冷2ストスポーツ:1981 YAMAHA RZ50
ナナハンキラーとして有名なRZシリーズの最小排気量モデル。兄弟譲りの高剛性のダブルクレードルフレームとハイパワーの2ストエンジンの組み合わせに、吸気量を適正化するYEISを市販車として初採用。スポーツバイクの魅力を存分に味わえる一台。
【1981 YAMAHA RZ50】主要諸元■水冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.2ps/9000rpm 0.62kg-m/8000rpm 車重75kg(乾)
1981 KAWASAKI AR50
ライバルが水冷エンジンを採用する中、最後まであえて空冷にこだわり続けたカワサキらしい硬派な2ストスポーツ。
【1981 KAWASAKI AR50】主要諸元■空冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.2ps/9000rpm 0.62kg-m/8000rpm 車重72kg(乾)
チャンピオンマシンの技術を投入:1982 SUZUKI RG50Г
1982年のロードレース世界選手権最高峰クラスを制したRGΓの技術を投入。クラス最軽量のダブルクレードルフレームに、放熱性に優れたアルミシリンダーを採用する7.2馬力水冷エンジンを搭載。足回りもANDFを始めとするレース技術が盛り込まれる。
【1982 SUZUKI RG50Г】主要諸元■水冷2スト単気筒パワーリードバルブ 49cc 7.2ps/8000rpm 0.66kg-m/7500rpm 車重69kg(乾)
跨がった瞬間スペンサー気分に:1987 HONDA NSR50
自主規制上限いっぱいの7.2psを発揮する水冷2ストロークエンジンに、軽量&高剛性のツインチューブフレーム、前後ディスクブレーキに6速ミッションとミニレプリカの決定版として登場したのがこのNSR50。エンジンの振動を低減する一軸バランサーも備え、長時間のライディングにも配慮。
【1987 HONDA NSR50】主要諸元■水冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.2ps/10000rpm 0.65 kg-m/7500rpm 車重76kg(乾) ■タイヤF=100/90-12 R 120/80-12
元祖ミニバイク版フルカウルマシン:1986 SUZUKI GAG
本格的なダブルバックボーンフレームにレジャーバイク的な4スト単気筒エンジンを搭載。10インチタイヤを履くフォルムは見事な完成度で、ミニバイクスポーツというジャンルを開拓した歴史的な一台。
【1986 SUZUKI GAG】主要諸元■水4冷スト単気筒SOHC2バルブ 49cc 5.2ps/7000rpm 0.57kg-m/6000rpm 車重64kg(乾)
隠れた市街地最速マシン:1988 YAMAHA TDR50
クラス上限いっぱいの7.2psを発揮する水冷2ストエンジンを、オンオフ問わずに走れる軽量な車体の搭載。小回りの効くクイックな走りで、ストップ&ゴーの多い市街地では無類の速さを誇った。
【1988 YAMAHA TDR50】主要諸元■水冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.2ps/10000rpm 0.58kg-m/8000rpm 車重80kg(乾)
ミニレプリカのジャンルを確立:1986 YAMAHA YSR50
スズキ・GAGの登場からわずかに遅れ同年デビューした。2ストロークエンジンに前後12インチタイヤを履くミニレプリカ。水冷のライバルには一歩及ばないものの、YZR500をデフォルメしたスタイルは雰囲気十分。コンパクトな車体はミニサーキットで威力を発揮。
【1986 YAMAHA YSR50】主要諸元■空冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.0ps/8800rpm 0.59kg-m/8500rpm 車重75kg(乾)
オフロードの入門に最適:1971 SUZUKI HUSTLER
スポーツではないが、スズキのオフロードモデルとして高い人気を得ていたシリーズの末弟も紹介しよう。50ccながら前後17インチのフルサイズの車体と、高出力のエンジンでオフロードの入門モデルとして高い評価を得た。
【1971 SUZUKI HUSTLER】主要諸元■空冷2スト単気筒ロータリーバルブ 49cc 6ps/8500rpm 0.52kg-m/7500rpm 車重75kg(乾)
世界中で愛されたトレッキングバイク:1981 HONDA CT110
オフ繋がりでこちらの名車も。同じくホンダの名車スーパーカブをベースに、オフロードタイヤや前後キャリア、アップタイプマフラーを装備したトレッキングバイク。その信頼性の高さと走破性の高さから、不整地走行も想定した旅バイクとして有名。海外における「ハンターカブ」のペットネームでも知られている。
【1981 HONDA CT110】主要諸元■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 105cc 7.6ps/7500rpm 0.85kg-m/6000rpm 車重87kg(乾)
1980 YAMAHA RX50 Special
ヤマハ初の50ccアメリカンは、最高出力7psを発揮する強心臓を備えた隠れたゼロハンドラッガーだ。
【1980 YAMAHA RX50 Special】主要諸元■空冷2スト単気筒ピストンリードバルブ 49cc 7.0ps/9000rpm 0.57kg-m/8000rpm 車重75kg(乾)
1980 HONDA RACOON
ゆったり座れる大型シートを低く構えた車体にMB50のエンジンを搭載するクルーザー。リヤのキャリアは標準装備。
【1980 HONDA RACOON】主要諸元■空冷2スト単気筒SOHC2バルブ 49cc 6.0ps/7000rpm 0.62kg-m/6500rpm 車重75kg(乾)
1983 KAWASAKI AV50
大きく跳ね上がったハンドルに、ダブルシート風のサドルシートを組み合わせたレジャーチョッパー。
【1983 KAWASAKI AV50】主要諸元■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 49cc 5.0ps/9500rpm 0.40kg-m/7000rpm 車重69.5kg(乾)
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
Zを知り尽くしたエンジニアならではの勘ドコロを押えた絶品設計! 1989年のゼファー(400)が巻き起こしたネイキッド・ブーム。 カワサキはこの勢いをビッグバイクでもと、1990年にゼファー750と1[…]
ザッパーシリーズの多種多様な展開 トータルでの歴史は30年以上に及ぶザッパーシリーズだが、その存在意義は’80年代以前と’90年代以降で大きく異なっている。まず’80年代以前の主力機種は、クラストップ[…]
ヤマハ・ハンドリングの真骨頂、パイプ構成では得られないデルタ形状アルミ鋼板フレーム! 1980年に2スト復活を世界にアピールしたヤマハRZ250の衝撃的なデビューに続き、1983年にはRZ250Rで可[…]
RZ250を上回る新テクノロジー満載! 1979年にホンダがリリースした、まさかの2ストローク50ccスポーツのMB50(広告なでの名称はMB-5)。 250ccやビッグバイクのスケールダウン・デザイ[…]
現在に続くミドルクラスの基盤は日本メーカーが作った ’70年代の2輪業界における最大のトピックと言ったら、日欧のメーカーが歩調を合わせるかのように、ナナハン以上のビッグバイクを発売したことだろう。もっ[…]
最新の関連記事(原付一種 [50cc以下]/新基準原付)
原付免許で乗れる『新しい区分の原付バイク』にHondaが4モデルを投入! 新たな排ガス規制の適用に伴い2025年10月末をもってHondaの50cc車両は生産を終了しますが、2025年4月1日に行われ[…]
メカもライテクもこの1台に教わった 原付というジャンルが、若者にとって比較的手軽にモータースポーツを楽しむ道具として浸透していく中、別の意味で趣味性の高いアイテムとして発展したのがレジャーバイクと呼ば[…]
3.7kWのパワートレインに14インチホイールやコンビブレーキを組み合わせる ホンダが新基準原付モデルを一挙発表。10月末をもって生産できなくなる現行50cc原付を代替するモデルとして、市民の足を担っ[…]
前輪にディスクブレーキ+ABSを採用、前後キャストホイールなど通常版110に準じた装備 ホンダが新基準原付モデルを一挙発表。10月末をもって生産できなくなる現行50cc原付を代替するモデルとして、市民[…]
原付でエンジンがかからない主な原因 「原付 エンジン かからない 原因」とネット検索する方が多いように、バッテリー上がりやプラグの劣化、燃料不足など、複数の原因によってエンジンを始動できなくなるケース[…]
人気記事ランキング(全体)
気鋭のクルーザー専業ブランドによるカスタムクルーザー 以前に試乗記事などをお届けしたBENDA(ベンダ)がいよいよ本格上陸する。日本での輸入販売を手掛けるウイングフットより取り扱い開始が発表されたのだ[…]
Z1100とZ1100 SEの国内販売を正式発表 先に欧州で発表されたスーパーネイキッド“Zシリーズ”の長兄たるZ1100 SEがジャパンモビリティショーで日本初公開され、国内販売画正式発表された。ス[…]
火の玉「SE」と「ブラックボールエディション」、ビキニカウルの「カフェ」が登場 ジャパンモビリティショー2025でカワサキが新型「Z900RS」シリーズを世界初公開した。主軸となる変更はエンジンまわり[…]
KATANAというバイク 一昨年のこと、キリンと同じ年齢になったことをキッカケにKATANA乗りになったYです。 ノーマルでも十分乗り易いKATANAですが、各部をカスタムすることで、よりカタナ(GS[…]
RZ250を上回る新テクノロジー満載! 1979年にホンダがリリースした、まさかの2ストローク50ccスポーツのMB50(広告なでの名称はMB-5)。 250ccやビッグバイクのスケールダウン・デザイ[…]
最新の投稿記事(全体)
1位:【俺たちのヨンフォア復活】ホンダ「CB400SF」まとめ 生産終了となっていたホンダ4気筒の名車、CB400 SUPER FOURの復活が確実となった。重慶モーターサイクルショーで世界初公開され[…]
高い耐久性、IP65防水性能がライダーのギアを守る ミルウォーキーツールが誇るツールボックス、PACKOUTシリーズの最大の特長は、その「高い耐久性・防水性・防塵性」を備えているという点。ガレージや作[…]
補助金を段階的に上げて暫定税率廃止へと繋ぐというが、年末までに無理なく実施できる? このコラムでも何度も取り上げてきたガソリンの暫定税率が、ついに廃止される見通しとなりました。 自民、日本維新の会、立[…]
バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」。今回はヤマハの「MT-09」を洗車します! スポーツネイキッドシリーズMTファミリーの代表作とも言えるM[…]
Screenshot シュアラスターから新商品登場! 愛車のツヤ出し作業にピッタリなアイテムがシュアラスターから新登場! ワックスやコーティングの塗り伸ばし作業が今まで以上にラクになるアプリケーター。[…]
- 1
- 2





















































