
大型バイクを颯爽と操り、公道の安全を守る白バイ隊員たち。その姿に憧れたなら、気になるのは”どうやってなるか”や、”なるために必要なこと”だろう。その実際を元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。
●文:宅島奈津子(ヤングマシン編集部)
白バイ隊員になるには
白バイに乗るためには、あたり前のことですが大型自動二輪免許の取得が必要です。とはいえ、警察官になる時点で取得していないとダメかといえば、そうではありません。後から取得する手間が減るというくらいです。
では白バイ隊員になるために必要な準備は一体なにかといえば、私自身はなによりも強靭な精神力と体力を身につけることなんじゃないかなと思います。
交通機動隊への配属
白バイ隊員になるべく交通機動隊への配属を希望したとしても、競争率が高く、そう簡単にはなれるものではありません。まず警察官としての実績を積み、直属の上司や交通機動隊の先輩からの推薦とともに、自ら志願することで、基本訓練を受ける資格をやっと手に入れることができます。
ですが、その訓練に参加することができたからと言って、必ずしも白バイ隊員になれるわけではありません。訓練参加の人数も限られているため、その段階からすでに狭き門なのです。この訓練に参加することができ、そこでの適正試験をクリアし、正式に交通機動隊への辞令を受けることができて初めて、白バイ隊員になることができるのです。
待ち受けているのは過酷な訓練
白バイの総重量は装備品等合わせると300kg近くにもなります。そんな大型バイクを颯爽と乗り回しているイメージを皆さんが持たれているように、ただ乗れるというだけでなく、高度な運転技術を要求されるため、白バイ隊員になってからも、常に訓練を行っています。始業時間が朝9時なのに6時から自主練なんて日もよくありました。
白バイ隊員として配属された直後の1ヶ月間は、新隊員訓練という過酷な日々が待ち受けていました。この1ヶ月間はとにかく白バイに慣れることに重点が置かれます。
それこそ、朝から晩までひたすらバイクに乗っていました。いくらオートバイが好きでも嫌になりそうなくらい、バイクに触れていられる期間です。
私が新任地で上司に交通機動隊に行きたいという話をした際に、言われました。「バイクが好きなら趣味程度で乗るぐらいが楽しいぞ!」と。そのときは理解できなかったけれど、新隊員訓練を受ける中でその言葉の意味がよくわかりました。
約300kgの鉄の塊を倒しては起こしを繰り返す
私が一番苦戦したのは、白バイの引き起こしです。なにせ約300kgの鉄の塊。教習所同様にこれができないと乗車させてももらえません。訓練用の白バイを倒しては起こし、倒しては起こし・・・という訓練が私にとっては本当に苦痛でした。
男性隊員は難なく起こしている中、私は2~3分かけてやっとという状況。1日目でなんとかできたものの、これではつらい。それ以来、毎日の食事の量を増やしたり、筋トレを計画的にこなして体力と筋力の増進に努めました。
乗車訓練が許可されると、まずは八の字走行やUターン、低速走行、立ち乗り等の練習をします。写真のように車体を傾けて乗れるようになるまで、個人差もありますが、相当な時間を費やします。
これがある程度できるようになったら、長めのコースを作って走ります。何度も転ぶし、その度に怪我をします。私は怪我して痛い思いをすることよりも、そのあと、倒れたバイクを起こすことが本当に嫌で転びたくないというのが当時の本音でした。それぐらい本当に重く、これに慣れなければ白バイ警官としてのスタート地点にも立てません。
泥だらけになり怪我も増えたトライアル車での訓練
訓練はコンクリートの路上でだけ、行われるわけではありません。山岳救助を想定したでこぼこの崖や山道、泥水の上を走ることだってあります。全身泥だらけになります。当然、怪我する頻度も上がります。顔面強打し、前歯が折れて、30代で入れ歯の先輩もいたくらい訓練はハード。
ここでも痛感したのは、なによりも体力と筋力の必要性です。訓練を始めた頃よりも走る距離や、セット数を増やすなど、より筋力トレーニングに打ち込むようになりました。技術は体ができてこそ身につくものですから。
過酷な訓練なくして白バイ警官はない
こうした過酷な新隊員訓練を終えると待ちに待った公道走行が始まります。その日のことはいまでも忘れられないくらい本当に嬉しかったです。引き起こしで感じたくやしさや、これまでの人生で感じたことのないほどの筋肉痛等、つらかった訓練の日々を乗り越えられてよかったと達成感を感じました。この瞬間のために頑張ってきたんだとさえ思えた瞬間でした。
はじめのうちは、先輩隊員が少し前に出て併走してくれます。少し間隔をあけてついていくイメージです。それは、逃走する違反者を追跡したり、悪質な違反の取締りを行ったりするために必要不可欠なことなのです。白バイ隊員は殉職率も高いため、自分の命を守ることはもちろん、人命に関わる事故を絶対に防ぐといった信念のもと、常に運転技術の向上に努めなければなりません。
訓練を受けていた当時の私は正直、指導してくれていた先輩隊員のことを鬼だと思っていましたが、そのおかげで運転技術を身に付けることができた、ということは私にとって本当に大きな財産です。白バイ隊員は二輪車だけに乗るわけではありません。
雨天時には四輪車、つまりパトカーに乗って取締りを行います。そのため、四輪車の訓練もあるわけです。私が無事故無違反でいられるのはこのときのおかげだとも思っています。
警察24時等のテレビ番組で、白バイ隊員の訓練の様子をご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。あれは決してやらせでも大袈裟なものでもありません。オートバイが好きだからという理由だけで白バイに乗りたい、白バイ隊員になりたいと白バイ隊員を目指すことはあまりおすすめできませんが、前述してきた訓練に耐えられる覚悟があるならばぜひ目指していただきたいなと思います。
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