各社各様だった中型限定免許への対応:スズキGS400【1976~1980】を巡る歴史

各社各様だった中型限定免許への対応:スズキGS400【1976~1980】を巡る歴史

ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU

国産4社の400cc4ストツインの系譜

排気量上限が400cc以下の普通2輪免許、一昔前の言葉で言うなら中型限定免許は、日本独自の制度である。もっとも欧州では大昔から、排気量が400cc前後のロードスポーツが販売されていたし、’60年代以前の日本では、300~350ccが各社の旗艦を務めた時代が存在した。

ただし、’70年前後に世界的なビッグバイクブームが巻き起こると、2ストはさておき、4スト400ccクラスの存在意義は徐々に変化していく。

具体的には、運動性能や独自性を強調したモデルではなく、利便性や経済性を意識したコミューター的な並列2気筒車が登場し、そんな状況下で、’75年10月から日本で施行されたのが、中型限定免許だったのだ。

当時の日本の2輪事情を振り返ってみると、中型限定免許で購入できる400ccクラスの新車は、2ストではRD350/400、GT380、KH400という選択肢があったものの、4ストに関しては、’73年にデビューしたホンダCB360Tと、’74年から発売が始まったカワサキ400RSのみ。

そして保守的な構成を採用していたこの2台からは、メーカーの気合が今ひとつ感じられず、若者の購買意欲をそそるモデルではなかった。だからこそ、スズキが総力を結集して生み出し、’76年から販売を開始したGS400は、大人気を獲得したのである。

ちなみに、ヤマハが’76年から世に送り出したXS360/GX400は、CB360TやZ400RSよりは前向きな姿勢を感じるモデルだったが、同時期のヤマハが販売していたTX/GX500と比較すれば、コストがかかっていないことは明らかだった。

さて、ここまでに挙げた4台を、日本の中型限定免許に適合する4スト400ccツインの第一世代とするなら、第二世代をリードしたのは、独創的なOHC3バルブヘッドが話題を呼んだ’77年型CB400TホークII、そしてDOHC4バルブヘッドの’80年型GSX400Eだろう。

また、当時のアメリカンブームに便乗する形で、CM400T、XS400スペシャル、GS/GSX400L、Z400LTDなど、プルバックハンドルや段付きシート、ショートメガホンマフラーを装備する派生機種が登場したことも、’80年前後の4スト400ccツインを語るうえでは欠かせない要素だ。

紆余曲折を経て復活した400cc並列2気筒

’72~’76年にホンダが販売した、CB350/400フォアという例外はあったけれど、’70年代以前の400ccクラスの主役は4スト並列2気筒だった。だが’79年にカワサキがZ400FXを発売すると、状況は一変。

以後の400ccクラスでは、4スト並列4気筒が販売台数ランキングの上位を独占することとなり、ホンダとヤマハがVツインに力を入れ始めたこともあって、4スト並列2気筒は時代遅れという見方をされることが増えていった。

と言っても、それは日本だけの話で、海外ではXS400シリーズやGSX400E、Z400RSの後継に当たるZ440などが、実用性に優れるモデルとして、堅実な人気を獲得していた。

そういった状況をふまえて生まれたのが、第三世代の4スト並列2気筒車となる、’86年型GPZ500S、’88年型GS500E、’93年型CB500Fで、カワサキとスズキは日本市場専用車として、GPZと新生GSの400cc仕様を開発したのだが…。

3台すべてがロングセラーになった欧米とは異なり、日本に投入された2台の売れ行きはさっぱりだった。もちろん中には、第三世代に進化した4スト並列2気筒の美点を享受するライダーもいたのだが、’80~’90年代の日本ではあらゆるクラスで、並列4気筒至上主義がまかり通っていたのである。

そんな状況に変化が訪れたのは、今から’10年代のこと。きっかけを作ったのは、カワサキがニンジャ650R/ER‐6nの日本仕様として、’11年から発売したニンジャ400R/ER‐4n(現行モデルでは、ニンジャ400/Z400)。

世界的な景気低迷やバイク人口減少が話題になる中、久しぶりの400cc4スト並列2気筒車として登場したカワサキの兄弟車は、長きにわたって日本のライダーから絶大な支持を集めてきた、並列4気筒のCB400SFを凌駕する人気を獲得することとなる。

そして以後の日本では、海外仕様のCBR500RがベースのCBR400R、YZF‐R25/MT‐25のボアアップ仕様となるYZF‐R3/MT‐03などが発売され、400ccクラスに第四世代の4スト並列2気筒の波が押し寄せているのだが、現状のスズキはこのジャンルを静観している。

4ストのスズキの基盤を作ったGSシリーズ

企画段階では多種多様な排気量と気筒数を検討したものの、初の4ストロードスポーツを生み出すにあたって、スズキが選択したのは750/550cc並列4気筒と400cc並列2気筒。’78年からはGS750の排気量拡大仕様となるGS1000が追加された。

【SUZUKI GS750】

【SUZUKI GS550】

【SUZUKI GS1000】

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