
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
スタイル重視がもたらした予想外の影響
Z1‐Rのエンジン+フレームの基本構成は、開発ベースのZ1000と共通である。では、どうして7psものパワーアップを実現し、一方で操安性に問題が生じたかと言うと…。 前者に対する答えは至って簡単で、そもそもZ1000はパワーを控えめに設定していたのだ。
その背景には、当時のアメリカで大きな注目を集めていた、騒音・公害問題に対する配慮があったようだが、903ccの初代Z1で81psを叩き出した開発陣が、排気量を1015ccに拡大したエンジンで最高出力を90psに引き上げるのは、決して難しい作業ではなかったはずである。
ただし後者については、開発陣としては予想外の展開だったのかもしれない。Z1‐Rの安定性が今ひとつだった最大の原因は、18インチの前輪と言われているものの、ビキニカウルや集合マフラー、さらにフロントまわりに荷重がかかりやすいライディングポジションにより、本来の重量バランスが崩れたことも一因となった。
既存のZシリーズは前輪19インチが標準で、重量配分もフロントが軽く、リヤが重かったのだ。 もちろんそういった構成でも、車体の抜本的な見直しを行えば、十分な安定性を確保することは可能である。事実、同時代の欧州車の多くは前輪18インチを履きこなしていたし、近年のZカスタム界では前輪18インチのまま、Z1‐Rの安定性を高める手法が確立されているのだから。
そのあたりを考えると当時の開発陣は、スタイル重視で行った改革が操安性に及ぼす影響を、少し甘く見ていたのかもしれない。
ENGINE:吸排気系刷新で戦闘力が向上
DOHC2バルブ空冷並列4気筒エンジンは、開発ベースの’77~’78年型Z1000用をそのまま転用。70×66mmのボア×ストロークや8.7:1の圧縮比、バルブタイミングや点火時期などにも変更はない。なお’74年型以降のZシリーズのエンジン外観はアルミ地が標準となっていたものの、Z1-Rでは初代Z1に通じるブラックペイントが復活している。
専用設計の排気系は4-1式集合 フロントブレーキマスターはワイヤ作動 キックアームはシート裏面に収納
初期のZ1のクランクウェブが釣り鐘型だったのに対して、Z1000とZ1-Rは丸型。排気カムにギヤ+ワイヤを接続してエンジン回転数を検知するのは、’70年代のZシリーズ全車に共通。
スチール製ヘッドライト&ビキニカウルステーは、過剰と思えるほど頑丈な構成。コクピットをスッキリさせるため、フロントブレーキマスターはワイヤを介したリモート操作式とし、ヘッドライト下に配置される。
シートは当時としては珍しい脱着式で(他のZシリーズはヒンジを設けた横開き式)、開閉用のキーシリンダーはテールカウル上。美観を意識して撤去されたキックアームは、シートベース裏面に収納。
メーカーのロゴが入った合皮製のポーチは、既存のZシリーズの定番だった書類ケースの代替品だ。
FRAME & CHASSIS:ビッグバイクらしからぬ軽快感を追求した車体寸法
既存のZシリーズのキャスター/トレールが26度/90mmだったのに対して、Z1-Rはキャスターを変更することなく、トレールを85mmに短縮。
これらの数値には、ビッグバイクらしからぬ軽快感を構築しようという意図が表れているけれど、当時のライバル勢の平均値が27~28度/90~100mmだったことを考えると、Z1-Rはちょっと攻めすぎたようである。なおホイールベースは、‘77年型Z1000で1490→1505mmに延長され、Z1-Rもその数値を踏襲。
ステアリングヘッドを5本のパイプで後方から支持する、スチール製ダブルクレードルフレームの基本構成は’70年代のZシリーズ全車に共通。実測パイプ径は、32mm、28.7mm、26.7mmの3種類。
ハンドルはコンチタイプと言うべき形状で、大アップが標準だった既存のZシリーズと比較すると、グリップ位置はかなり低め。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ヤマハ・ハンドリングの真骨頂、パイプ構成では得られないデルタ形状アルミ鋼板フレーム! 1980年に2スト復活を世界にアピールしたヤマハRZ250の衝撃的なデビューに続き、1983年にはRZ250Rで可[…]
RZ250を上回る新テクノロジー満載! 1979年にホンダがリリースした、まさかの2ストローク50ccスポーツのMB50(広告なでの名称はMB-5)。 250ccやビッグバイクのスケールダウン・デザイ[…]
現在に続くミドルクラスの基盤は日本メーカーが作った ’70年代の2輪業界における最大のトピックと言ったら、日欧のメーカーが歩調を合わせるかのように、ナナハン以上のビッグバイクを発売したことだろう。もっ[…]
過激な初代からフレンドリーな後継モデルへ カワサキのビッグバイクと言えば、優れた資質を備える初期型をベースにして、2代目以降で徐々に動力性能を高めていくのが通例だ。だがマッハシリーズの場合は、初期型が[…]
ヤマハ・ハンドリングのこだわりを400レプリカ路線へ融合! 1980年にRZ250をリリース、レプリカの時代に先鞭をつけたヤマハも、4ストのスポーツバイクXJ400系ではツーリングユースを前提とした、[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
Z1100とZ1100 SEの国内販売を正式発表 先に欧州で発表されたスーパーネイキッド“Zシリーズ”の長兄たるZ1100 SEがジャパンモビリティショーで日本初公開され、国内販売画正式発表された。ス[…]
火の玉「SE」と「ブラックボールエディション」、ビキニカウルの「カフェ」が登場 ジャパンモビリティショー2025でカワサキが新型「Z900RS」シリーズを世界初公開した。主軸となる変更はエンジンまわり[…]
現在に続くミドルクラスの基盤は日本メーカーが作った ’70年代の2輪業界における最大のトピックと言ったら、日欧のメーカーが歩調を合わせるかのように、ナナハン以上のビッグバイクを発売したことだろう。もっ[…]
過激な初代からフレンドリーな後継モデルへ カワサキのビッグバイクと言えば、優れた資質を備える初期型をベースにして、2代目以降で徐々に動力性能を高めていくのが通例だ。だがマッハシリーズの場合は、初期型が[…]
2025モトクロス世界選手権チャンピオンが全日本に参戦! 株式会社カワサキモータースジャパンは、2025年11月1日(土)・2日(日)スポーツランドSUGO(宮城)で開催される第63回 MFJ-GP […]
人気記事ランキング(全体)
火の玉「SE」と「ブラックボールエディション」、ビキニカウルの「カフェ」が登場 ジャパンモビリティショー2025でカワサキが新型「Z900RS」シリーズを世界初公開した。主軸となる変更はエンジンまわり[…]
KATANAというバイク 一昨年のこと、キリンと同じ年齢になったことをキッカケにKATANA乗りになったYです。 ノーマルでも十分乗り易いKATANAですが、各部をカスタムすることで、よりカタナ(GS[…]
外観をスタイリッシュにリニューアルしたトリシティ125 前回のトリシティ300に続き、今回試乗を行うのも前2輪を持つLMWシリーズのトリシティ125。ちなみにLMWとは、リーニング・マルチ・ホイールの[…]
グランプリレースの黄金時代が甦る! 1970年代~80年代にかけて伝説的なアメリカンライダーのケニー・ロバーツ氏が走らせたYZR500は、イエローのストロボライン(ヤマハは現在スピードブロックと呼称)[…]
最新の投稿記事(全体)
オートバイの交通事故死傷者を減らす切り札 近年、交通事故における死傷者数は減少傾向にあるものの、オートバイ(自動二輪車)乗車中の死亡率は依然として高い水準で推移している。オートバイはクルマに比して車体[…]
フロントまわりの軽さも操縦しやすさに大きく貢献 猛暑が続いていても、やっぱりバイクに乗りたい…というわけで、今月はCB750 HORNETでプチツーリングしてきました! このバイクは、アドベンチャー系[…]
ドライグリップを最大化した公道用タイヤ 2020年の年初に発売され、各メーカーのスーパースポーツマシンにOEM装着されてきたレーシングストリートRS11に後継モデルが登場した。 新作のバトラックスレー[…]
気鋭のクルーザー専業ブランドによるカスタムクルーザー 以前に試乗記事などをお届けしたBENDA(ベンダ)がいよいよ本格上陸する。日本での輸入販売を手掛けるウイングフットより取り扱い開始が発表されたのだ[…]
Z1100とZ1100 SEの国内販売を正式発表 先に欧州で発表されたスーパーネイキッド“Zシリーズ”の長兄たるZ1100 SEがジャパンモビリティショーで日本初公開され、国内販売画正式発表された。ス[…]
- 1
- 2



















































 
   
   
   
   
   
  