
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様
Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、既存の丸みを帯びたスタイルと決別し、後世につながるカワサキ独自のデザイン基盤を構築したという意味では、ものすごく大きな役割を果たした機種と言えるだろう。
また、吸排気系の全面刷新で得た90psという最高出力(ベース車のZ1000は83ps)は、デビューからすでに5年が経過した空冷2バルブZシリーズが、まだまだ一線級の戦闘力を備えていることの証明となった。ただしその一方で、デザイン偏重の開発を行った結果、Z1‐Rは利便性や操安性に問題を抱えていた。
市場からは燃料タンク容量の少なさ(Z1000より3.5L少ない13L)やセンタースタンドのかけづらさに不満が上がった。欧州の2輪誌は前輪の19インチから18インチ化を主因とする安定性不足を指摘している。つまりZ1‐Rは、既存Zシリーズのような王道&万能車ではなかったのだが…。
斬新なスタイルとパワフルさが支持されたのだろう、Z1‐Rは初年度に1万5000台以上の好セールスを記録することとなった。
とはいえ、高価(北米市場での価格は、Z1000+約800ドルとなる3695ドル)が災いしてか、’79年に前述の問題点を解消したマイナーチェンジモデル・Z1R‐IIが登場した時点でも、市場には初代の在庫が残っていた。
そこで各国のディーラーは独自のモディファイを加えた初代ベースの特別仕様車を製作した。具体的には、北米がターボを装着したZ1‐R TC、フランスは大容量タンク+左右連結式グラブバーを装備するZ2R、西ドイツでは大容量タンク+4本出しマフラーを採用したZ1000Sなどが販売されたが、これは当時としては異例のことと言えるだろう。
そんなわけで、成功作とも失敗作とも言い切れないZ1‐Rだが、’80年代末からZシリーズの再評価が始まると、このモデルの人気も徐々に上昇し、昨今では初期のZ1やZ1000MkII、Z1000Rなどと同等の人気を獲得している。
なお、希少価値で考えるなら、緻密な改善が行われたにもかかわらず、生産台数が3500台以下だった’79~’80年型Z1‐RIIのほうがマニア心をくすぐりそうだけれど、このモデルの愛好者の多くは”多少の不便さや難しさがあろうとも、初代こそが真のZ1‐R”と感じているようだ。
細部にまで及んだデザインのこだわり
既存のZシリーズとZ1-Rのわかりやすい相違点は、角型基調のビキニカウル/ガソリンタンク/サイドカバー/シートカウル。ただし、シート下左右に他の外装部品と同色のカバーを設置したり、ブラックボディの角型ウインカーを専用設計したり、キックアームを廃したりと、デザインに対するこだわりは細部にまで及んでいた。
丸みを帯びたスタイルが王道だった2輪業界で、角型が流行の兆しを見せ始めたのは’70年代中盤から。とはいえ、Z1-Rほど角型をモノにできた車両は、他に存在しないだろう。
メーターパネル上部に並ぶ計器は燃料計と電流計。撮影車は北米仕様で、タコメーター内には3種類の警告灯が設置されている。
右側スイッチボックスは既存のZシリーズと同様だが、左側はZ1-R専用品で、上部右側にハザードとウインカー操作の切り替え用レバー(M:マニュアル、A:オートキャンセル)が備わる。
四角いテールランプはZ1‐R専用品と思えるけれど、このデザインの原点は’76年型Z900で、’77/’78年型Z1000も同形状。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化! 1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。 なぜ衝撃的だったかとい[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
ハイエンドユーザーに向けたスーパーフラッグシップは何と乗りやすく調教済み! 1980年代に入ると、ホンダが切り札としていたV型4気筒は世界のレースで圧倒的な強みを発揮、それまでの主流だった並列(インラ[…]
昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得 ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’8[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化! 1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。 なぜ衝撃的だったかとい[…]
粘り強い100mmボアビッグシングルと23Lタンク KLR650の心臓部は、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンだ。排気量は652ccで、ボア径はなんと100mmにも達する超ビッグシングルと[…]
昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得 ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’8[…]
勝つための合理性と最新テクノロジーが辿り着いたパラレルツイン! レーシングマシンは勝つためを最優先に開発される。だから優位なテクノロジーなら躊躇せず採用する斬新で個性の集合体のように思われがち。 とこ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
人気記事ランキング(全体)
きっかけは編集部内でのたわいのない会話から 「ところで、バイクってパーキングメーターに停めていいの?」 「バイクが停まっているところは見たことがないなぁ。ってことはダメなんじゃない?」 私用はもちろん[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
Nプロジェクトを彷彿とさせる魅力的なデザイン スクエアX125最大の魅力は、その名の通り「スクエア(四角)」を体現した、垂直の箱型ボディだ。空気抵抗を減らすカウルを持つことが主流の現代のスクーターデザ[…]
バニャイアにとって「新しいモノはいいモノ」じゃなかった MotoGPマシンがあまりにも速くなりすぎたこともあって、再来年にはレギュレーションが大きく改定されることになった。 エンジンは850ccに、空[…]
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
最新の投稿記事(全体)
13台しか作られなかった964モデルのうちの1台 ポルシェのカスタムと聞いて、世代の違いで思い浮かべるファクトリーが変わってくるかと思います。ベテラン勢ならば、クレーマー、ルーフ、あるいはDPやアンデ[…]
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化! 1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。 なぜ衝撃的だったかとい[…]
6/30:スズキの謎ティーザー、正体判明! スズキが公開した謎のティーザー、その正体が遂に判明したことを報じたのは6月30日のこと。ビリヤードの8番玉を写した予告画像は、やはりヤングマシンが以前からス[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
- 1
- 2










































