
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発
GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと言っても、2スト専業メーカーからの脱却を念頭に置いて、スズキが初めて手がけた4ストロードスポーツ・GSシリーズの生い立ちは、400を抜きには語れないのだから。
もっとも’68~’70年に行った基礎研究を経て、’74年初頭から4ストロードスポーツの本格的な開発に着手したスズキは、当初は並列4気筒のGX960を旗艦とし、750/500ccフォアと250/350ccツインで4ストのラインナップ構築を検討していたのである。
そして半年が経過する頃には、GX960の基本設計を転用した480ccツインが計画に加わり、500は550に格上げ。一方でGX960の開発に注力するためか、750フォアはいったん保留となった。
しかし、日本の2輪免許制度変更、中型限定免許の導入(施行は’75年10月)という情報を’74年11月に入手したスズキは、計画を大幅に変更。以後は日本の需要に適した400ccツインが最優先機種になり、400ccツインと生産設備が共用しやすいという理由から、いったんは保留にした750フォアが復活。
また、あまりにイッキに4ストの開発を進めることに不安を感じたのか、GX960と250/350ccツインは途中で中止された。
3台態勢となったGSシリーズのプロジェクトは、’75年1月:400ツイン、’75年4月:750フォア、’75年6月:550フォアという順序で設計がスタート。ただし400ツインは、不等間隔爆発の180度クランクを選択したことで、スムーズな特性が構築できず、開発は大いに難航。
そのためGS400の量産開始は、750より1ヶ月遅れの’76年7月になった(550は’77年1月)。いずれにしてもGSシリーズは、750ありきで始まったわけではないし、400は750のスケールダウン仕様ではなかったのだ。
前述したように、日本の中型限定免許を念頭に置いて生まれたGS400だが、海外では軽快なスポーツモデル、あるいは利便性に優れるコミューターとして認知され、結果的に世界中で好セールスを記録。
750や1000ほど大きなインパクトはなかったものの、GS400は〝4ストのスズキ〞の魅力を、世界中の多くのライダーに知らしめたモデルだったのである。
1976 SUZUKI GS400 DETAIL
昨今の中古車市場では、100万円以上の価格が珍しくないGS400。もっとも、400ccクラスの主役が並列4気筒になった’80年代前半の日本では、並列2気筒のGS400はあっという間に時代遅れのモデルになっていたのだ。
そんな中でこの車両の人気が再燃するきっかけを作ったのは、’82~’87年に少年キングで連載された吉田聡の“湘南爆走族”で、主人公の江口洋介がGS400に乗っていたことのようである。
現代の目で見れば特筆すべき要素はないけれど、中型限定免許が施行された’70年代中盤~後半の日本では、クラス唯一のDOHCヘッドを採用するGS400は、救世主的な存在だった。なお撮影車は北米仕様だが、基本構成は日本仕様も同じ。
ブレーキ/クラッチレバーのエンドに備わるゴム製カバーは、’70年代のスズキとホンダの特徴で、ヤマハとカワサキは追随しなかった。
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