
屹立したシリンダーのヘッドから連なる4本のエキゾーストパイプ。いつの時代もライダーの心を熱くする“カワサキの直4”。打倒ホンダを誓って世界に羽ばたいたZ1こと900super4に始まり、兄貴たち憧れのゼッツーに、AMAで大活躍したローソン・レプリカ、世界のミドルと日本の400を牽引したザッパー&FX、そして新たな時代を切り開いたニンジャの水冷直4たち…。一度は乗っておきたいカワサキ直4を紹介する本特集。今回はZ1後期系をお届け。
●文:伊藤康司(ヤングマシン編集部) ●写真:YM Archives
ライムグリーンのローソン・レプリカが人気を独占
カワサキはZ1からZ1000Mk.IIまで進化を重ねたが、1980年代に入ると大排気量スポーツのライバル車が台頭。そこでZ1系のエンジンとシャシーを刷新した第2世代の空冷直4「Z1000J」を開発。
エンジンの基本レイアウトはZ1系を踏襲するが、ウィークポイントの克服とともに、カムシャフトの駆動を静粛性と正確性に優れたハイボ式カムチェーンを採用。また吸排気ともにバルブ径を拡大しキャブレターはVMから負圧式のBSに変更して大口径化を図った。
ボアをZ1000系の70.0mmから69.4mmに縮小して、排気量を1015ccから998ccに変更したのが大きな特徴で、これは当時のAMAレースのレギュレーションに合わせるための措置。こうして新型直4の最高出力はZ1000Mk.IIの93psから102psに増強。またキックアームを廃し、エンジン単体で7kg近く軽量化した。
フレームも基本レイアウトはZ1系を踏襲するが、ステアリングステム周辺を中心に刷新し、パワーアップに対応すべく補強パイプやガセット板も多数追加。Jシリーズは視覚的にコンパクトに感じるが、実際には車格的にはZ1系よりわずかに大きくなっているが、ブレーキやサスペンション等のコンポーネントを刷新することで、エンジンも含めて車両全体では15kg近くも軽量化しているのだ。
1981 Z1000J
クランクシャフトのウェブ形状をZ1000Mk.IIの丸型+釣鐘型(写真左)から、Z1000J/Rでは釣鐘型のセミレーシングタイプ(写真右)に変更し、約17kgから14.3kgに軽量化。
【1982 Z1000J2】J1からカラー変更のみ。Z1000R(R1)のベースモデル。
【1983 Z1000J3】Jシリーズの最終型。角型メーターはRやGP系と共通化。
AMAで闘うパフォーマンス
そしてカワサキは、このZ1000Jをベースに仕上げたレーサーでAMAスーパーバイクレースに参戦し、エディ・ローソンによって1981年チャンピオンを獲得。それを記念して限定販売(約900台)されたのが1982年のZ1000R。カワサキ初のレーサーレプリカであり、いまやイメージカラーとして浸透したライムグリーンを、大排気量ロードスポーツ車で初めて導入したのもこのマシンだ。
1982年発売のR1型は、ビキニカウルやKERKER製の集合マフラーに、リザーバータンク付きの専用リヤショックやオイルクーラーを装備(スペックはJと同じ)。1983年のR2型では専用カムやキャブレターの設定変更で104psに向上。さらに84年には排気量を1089ccに拡大して114psを発揮するZ1100Rを販売した。
1982 Z1000R
【1983 Z1000R2】専用カムを採用し、キャブの設定も変更。メーターが角型に。
【1984 Z1100R】欧州主体で販売。前輪18インチを採用。マフラーは左右2本出し。
空冷直4の極致
第2世代の空冷直4では、このRシリーズが絶大なる人気を誇った。しかし主軸はJシリーズであり、並行して販売した排気量アップ+燃料噴射装置を採用した108馬力のZ1100GP(B1)だった。翌82年には燃料噴射装置をKEFIから新開発のDFIに変更して109馬力にアップし、Rシリーズと同じビキニカウルを装備したB2型を販売している。
そして1983年、ついに空冷直4最強にして最後のGPz1100が登場。AMAレースで培った秘術を投入したエンジンは120psを発揮。シャシーには82年の耐久王者KR1000同様のユニトラック式リヤサスペンションを装備。航空機も製造するカワサキならではの空力に優れたフレームマウントのカウリングも装着した。──こうしてZ1から連なる珠玉の空冷直4は、1983年のA3型まで生産されたGPz1100を持って幕を閉じた。
1981 Z1100GP
防風効果を持たせた角型のメーターボックス。ハンドル部にZ1000J1/2同様の独立した積算距離計を装備。
【1982 Z1100GP(B2)】燃料噴射装置がDFIに変更。Rシリーズと同形状のビキニカウルを装備した。
1983 GPz1100
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
中型限定免許で楽しめるDOHC ライバル勢のモデルチェンジに合わせたためか、2バルブGSシリーズの主力機種は意外に短命で、750と1000も’80年代初頭に販売が終了している。ただしツアラーのGやアメ[…]
R90Sから受けた影響とXLCRとの意外な共通点 Z1‐Rに対するイメージを聞かれたら、多くの人が”カフェレーサー”と答えるだろう。ただしカフェレーサーは車両のオーナーやチューナーが作るもので、原点は[…]
国産4社の400cc4ストツインの系譜 排気量上限が400cc以下の普通2輪免許、一昔前の言葉で言うなら中型限定免許は、日本独自の制度である。もっとも欧州では大昔から、排気量が400cc前後のロードス[…]
幻のモペット「ホンダホリディ」 昭和の時代、ホンダが開発したモペット「ホリディ」の正式名称は「ホンダホリディ」、型式はPZ50。1973年頃「ブーンバイク」というアイデアを基に、ホンダ社内のアイデアコ[…]
スタイル重視がもたらした予想外の影響 Z1‐Rのエンジン+フレームの基本構成は、開発ベースのZ1000と共通である。では、どうして7psものパワーアップを実現し、一方で操安性に問題が生じたかと言うと…[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
2025年 秋冬新作アパレルタブロイド を公開 株式会社カワサキモータースジャパンは、全国のカワサキプラザで取り扱うオリジナルアイテムが掲載された、2025年秋冬新作アパレルタブロイド「Kawasak[…]
R90Sから受けた影響とXLCRとの意外な共通点 Z1‐Rに対するイメージを聞かれたら、多くの人が”カフェレーサー”と答えるだろう。ただしカフェレーサーは車両のオーナーやチューナーが作るもので、原点は[…]
カワサキの“今”と“これから”を伝えていくメディアサイト 『Kawasaki Good Times』は、カワサキの製品/技術/ブランドの思いを、より多くの方にわかりやすく、そして楽しく届けるために開設[…]
スタイル重視がもたらした予想外の影響 Z1‐Rのエンジン+フレームの基本構成は、開発ベースのZ1000と共通である。では、どうして7psものパワーアップを実現し、一方で操安性に問題が生じたかと言うと…[…]
W230/MEGURO S1 デビュー応援キャンペーン 株式会社カワサキモータースジャパンが、2025年9月1日(月)より、全国のカワサキプラザにおいて「W230」および「MEGURO S1」の新車([…]
人気記事ランキング(全体)
新設計の4気筒・502ccエンジンにEクラッチを搭載! ホンダは、中国で開催中の重慶モーターサイクルショーにて新型モデル「CB500スーパーフォア(CB500 SUPER FOUR)」を世界初公開した[…]
レースで勝つために進化を重ねたトップパフォーマー 「GSX-Rの40年」ではまず、”アルミフレーム+カウリング+4スト最強水冷4気筒”のGSX-R(400)を紹介。 1980年代初頭に始まった空前のバ[…]
その姿、まるでハンターカブ×ミニトレ?! タイ仕様は新型に切り替わるとともにカラーバリエーション変更&グラフィックが変更された。 一方ベトナム仕様は、従来モデルを標準仕様として併売。この標準モデルはカ[…]
ダークカラーに往年のオマージュカラーを乗せて 特別仕様車の製作を定期的に行うカブハウスは、1970年代のダックスをオマージュしたような限定仕様「DAX Royal Limited Edition」を発[…]
国産4社の400cc4ストツインの系譜 排気量上限が400cc以下の普通2輪免許、一昔前の言葉で言うなら中型限定免許は、日本独自の制度である。もっとも欧州では大昔から、排気量が400cc前後のロードス[…]
最新の投稿記事(全体)
MCショーで公開された「オフロードカスタマイズコンセプト」の回答か ヤマハは、今春に開催された大阪モーターサイクルショーにて「オフロードカスタマイズコンセプト」なる謎のコンセプトモデルをサプライズ展示[…]
2025年 秋冬新作アパレルタブロイド を公開 株式会社カワサキモータースジャパンは、全国のカワサキプラザで取り扱うオリジナルアイテムが掲載された、2025年秋冬新作アパレルタブロイド「Kawasak[…]
高い安全性とMotoGPレベルの空力性能、快適性を実現 アルパインスターズは、2019年に発売したオフロード向けヘルメット「スーパーテックM10」に続き、オンロード向けのフルフェイスヘルメット「スーパ[…]
足つき性の不安を解消し、さらに走る楽しさを最大限に引き出す サスペンションを交換する理由はさまざまです。 純正サスに不満がある 純正サスがオイル漏れを起こし、交換が必要になった レースや走行会でタイム[…]
安心の国内ブランドが放つ、戦略的スマートモニター バイク乗りにとって、スマートフォンのナビや音楽はもはやツーリングに欠かせない相棒だ。しかし、グローブをした手での操作のしにくさや、マウントからの脱落、[…]
- 1
- 2