![CB1000Fを待ちきれない!「“エフ”がいたから試験場に通いつめたんだ」俺達の“F”烈伝[1979-1983]](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2025/07/Legendary-CB-F.jpg?v=1753784387)
日本が空前のバイクブームで湧き立った1980年代前夜に、そのマシンは産声を上げた無敵艦隊と呼ばれたワークスマシンRCB1000譲りの強心臓を、流れるようなヨーロピアンスタイルが抱く『CB-F』峠や街角で目にした一瞬に、バイク漫画の主人公が駆る姿に、多くのライダーが“このバイクに乗りたい!”と憧れた時を経た今でも鮮明に蘇る、青春を彩った「特別な一台」たるCB-Fの軌跡を徹底紹介!
●文:伊藤康司 ●写真:YM Archives
RCBテクノロジーを継承し誕生したCB900F
CB750FOURの登場から10年ライバル車の追撃から復権するためホンダが選択したのは耐久レース常勝のワークスマシンRCB1000の心臓を持ち既存のバイクと一線を画した流れる様なフォルムのマシンだった。
「RCBレプリカ爆誕!」CB900Fz[1979年]記念すべきF第1号は、赤ベースに青ライン。ヨーロッパ耐久選手権のメインイベントであるボルドール24時間耐久レースにちなみ“ボルドールカラー”と呼ばれる配色。燃料タンクからテールに連なるデザインは革新的だった。
カタログはまるでRCBの公道版だった
表紙は’76~’78年の欧州耐久選手権で3連覇を遂げ“無敵艦隊”と呼ばれたワークスマシンRCB1000と並び、中面もRCBと900Fの正面や横走りの比較写真で構成する徹底ぶり。両車の関係性を強く打ち出した。
■空冷4ストローク並列4気筒DOHC4 バルブ 901.8cc 95ps/9000rpm 7.9kg-m/8000rpm ■車重232kg(乾) ■タイヤF=3.25V-19 R=4.00V-18 ■輸出車[欧州仕様]
RCBのバックボーンと革新的デザインの融合
世界最速を目指し、市販量産車初の750cc 4気筒エンジンでビッグバイクの歴史を塗り替えたホンダのドリームCB750FOURが誕生したのが1969年。しかし頂点に君臨する者は、追撃される立場にある。カワサキ900Super4ことZ1やスズキのGS1000などの登場により、ホンダの栄華は薄れた。
そんな状況を打破するべく、1979年に世に出たのがCB900Fだ。900ccの空冷4気筒DOHC4バルブエンジンは、ヨーロッパ耐久選手権で1976年から3連覇を達成したワークスマシンRCB1000の最終モデルである1978年の482A型と同時開発され、群を抜くパフォーマンスを発揮した。
ホンダ独自のコムスターホイールもRCBからのフィードバックで、トリプルディスクや減衰調整機構を持つリヤショックのFVQダンパーなど最新技術が余さず投入された。
スタイルも斬新で、既存のバイクが燃料タンク、サイドカバー、シートといったエクステリアのパーツが、それぞれ独立してデザインされていたのに対し、CB900Fはすべてが流れるように連続した“インテグレート・ストリームライン”を採用。
他にもジュラルミン製のセパレートハンドルやベースプレートを持つステップなど、現行バイクでは当然の装備やデザインも、CB900Fが先駆けとなったのは間違いない。
こうしてCBは、再びビックバイクの頂点に駆け上ったのだ。
歴代CB900F[欧州仕様]
CB900Fz[1979年]ライバルを突き放す動力性能
CB750A(エアラ)のクランク&ケースをベースに、DOHC4 バルブのシリンダーヘッドを組み合わせた新エンジン。5段オイルクーラーは900Fのみの装備。ホンダ独自のコムスターホイールに、タイヤは750より速度レンジの高いV 規格。外誌テストでゼロヨン11.75秒、最高速217km/hを記録。
CB900FA[1980年]裏コムスターとグラフィックが変化
ホイールのスポーク部を黒塗装とした通称“裏コムスター”を装備し、フロントフォークがセミエアタイプに。燃料タンクのストライプがグラデーションになり、テールカウルのグラフィックも変化。仕向け地によってサイドカバーに“BOLD’OR(ボルドール)”のペットネームが入る。
CB900FB[1981年]ブレーキを一新して足まわりを強化
前後ブレーキにデュアルピストンキャリパー(片押し2POT )を採用し、ディスクローターにスリットが入る。フロントフォーク径をφ35→37㎜に拡大し、セミエア加圧はイコライザ―チューブで左右フォークを連結。フロントフェンダーにスポイラーを装備。負圧式燃料コックに変更。
CB900FC[1982年]フレーム&足まわりを大幅に刷新
“ブーメラン・コムスター”に変更し、リム幅を拡大。前輪は19 →18インチに。フロントフォークがφ39㎜になり、4段調整のTRAC(アンチノーズダイブ機構)を装備。リヤショックがリザーバータンク付きに変更。フレームの肉厚が増し、エンジンをリジッドからラバーマウントに。
CB900FD[1983年]欧州900Fの最終モデル
基本的にFC のカラーチェンジで、変更点はフロントフェンダー(前側のみ穴開き)とステッププレートが肉抜きタイプになった。ちなみにブレーキ/チェンジペダルおよびペグ本体はFBまでがスチール製で、FC以降はジュラルミン製になる。テールカウルにグラブバーを装備する。
カウル付きも登場!!
CB900F2B[1981年]大型カウル装備でツーリング性能をアップ
フレームマウントのカウリングは、同年登場のCB1100RBと良く似たデザインのため英国で大人気! 国内のCB750Fインテグラと異なり、ヘッドライト部にライトグラス(透明な樹脂カバー)を装備。カウル内の左右に小物入れを装備し、オプションで電圧計とクォーツ時計を用意。車体のベースは同年のFB型で、フレームを赤塗装。車重が13kg増加し、空気抵抗によって最高速度が210→195km/hに低下。
CB900F2C[1982年]FCベースで走りをグレードアップ
一見するとF2Bと大差ないが、車体のベースがフレームや足まわりを大幅に進化させたFCになっているため、走りのパフォーマンスも向上。エンジンのカラーも異なる。仕向け地によって最高出力は95psと91psのモデルが存在。ドイツ仕様のみライトグラスが法律で禁止されたため外された。
CB900F2D[1983年]足着き性やタンデム快適性を追求
F2B/F2Cからカラーチェンジされ、フレームをブラックに変更。FD同様に肉抜きしたステッププレートや新型フロントフェンダー、グラブバーを装備する。マフラーは1100F同様のブラッククロームメッキ仕上げに。またFD/F2Dともにシート高がFCの815→795mmに下がった。
CBX[1978年]6気筒版も並行して開発
1969年発売のCB750FOURが世界的に大ヒットしたが、追撃するカワサキZ1/Z2等ライバル車に対抗するため、CB-Fと同時進行で6気筒のCBXを開発。注目を集めたが高価格と大きさ&重さでCBXはヒットせず、ツアラー指向にモデルチェンジ。
■空冷4ストローク並列6気筒DOHC4バルブ 1047cc 105ps/9000rpm 8.6kg-m/8000rpm ■車重247kg ■タイヤF=3.50V19 R=4.25V18 ■輸出車
CB900F[北米仕様]──アメリカ上陸は1981年から
CB900F[1981年]欧州から2年遅れで北米デビュー
欧州FB型と共通デザインの“裏コムスター”だがリム幅が異なる。フロントフォークはφ39mmのセミエア加圧で、リヤショックはリザーバータンク付き。ラバーマウントのエンジンや黒塗装のエンジン等も含め、欧州FC採用パーツを先取りする部分もアリ。
CB900F[1982年]憧れのスペンサーカラー!
当時アメリカは6気筒のCBXがスーパースポーツに位置付けられ、900Fが登場したのは’81年から。そしてAMAレースでのスペンサーの大活躍を契機に900F人気に火が着いた。
北米900はFBとFCのハイブリッド
タコとスピードメーターの間に警告灯とオド/トリップメーターを配置。パイプハンドルを固定するクランプ上にヒューズボックスが備わる。
1982年は750/900ともにAMAスーパーバイクでお馴染みのシルバーと、同じグラフィックデザインの黒×赤。ブレーキまわりは’81年(欧州FB)同様のデュアルピストンキャリパーで、TRACは非装備。メーターはCB750K用がベースでハンドルバはパイプバー、ステップ位置が前進しているのも北米仕様の特徴だ。
カスタムのお手本はスペンサーの実機
CB-Fといえば、なんといってもフレディ・スペンサーがAMAスーパーバイクで駆ったワークスマシン。カラーリングはもちろん足まわりの強化やエンジンチューンまで、カスタムのアイデアがテンコ盛りだ!
1982年の米国2輪誌に掲載されたCB900Fの見開き広告。市販モデルの写真は極めて小さく、スペンサーが駆るレーサーがメインなのが潔い!?
フレーム(ステアリングステム)から伸びるゼッケンのステーに、サーク製の13段オイルクーラーをセットする、お約束のディテール。
乾式クラッチはRSC(HRCの前身)製のCB750/900F用のキットパーツ。バスケット外周のクロモリ製リングなど、STDと大きく異なる。
名メカニック、マイク・ベラスコが手掛けたエキゾースト。集合部φ65mmの等長システムで、RSC製よりパワーアップを達成。
RCBから900Fが、そして900FからRS1000が生まれた
1966年の世界GP5クラス制覇を期にワークス活動から撤退していたホンダが、1976年から欧州耐久選手権でレースに復帰。ワークスマシンRCBはチャンピオンを獲得し、その技術を投入してCB900Fを開発。RCBプロジェクトは1978年に終了するがRSCが引き継ぎ、新たなTT-F1規定に対応するべくCB900Fのエンジンをベースに開発。キットパーツおよび市販レーサーとしてRS1000を作り上げた。
RCB1000[1977年]
76年の480Aのエンジンを踏襲し、シャシーを刷新・強化した481A。欧州耐久レース本戦を含め、出場した9レースで全勝する強さを発揮!
CB900F[1979年]
RCB1000で培ったDOHC4バルブや正確なバルブタイミングの2段掛けカムチェーン、1次伝達のハイボチェーンなど先進技術を投入。
RS1000[1981年]
CB900Fのエンジンをベースに開発。1979、1980年(1980年からは世界耐久選手権)も連勝し、1976年から5年連続でチャンピオン獲得。
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