
インドのロイヤルエンフィールドから登場するのは648㏄の空冷パラレルツインエンジンを搭載したショットガン650。クルーザースタイルのスーパーメテオ650がベースとのことだが、なかなかクセのある面白バイクだったのだ。
●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド
クルーザーベースなのに意外にスポーツ性高し!
ロイヤルエンフィールドの日本国内ラインナップには、このショットガン650のほかに648ccの空冷パラレルツインエンジンを搭載するモデルが3機種ある。カフェレーサースタイルのコンチネンタルGT650に、クラシカルなINT650、クルーザースタイルのスーパーメテオ650だ。
今回紹介するショットガン650は、スーパーメテオ650のエンジンやメインフレーム&スイングアームをベースに、前後のホイールサイズや軸間距離を変更したバリエーションモデルである。
寝かし気味のフロントフォークに長めのトレールと、クルーザーテイスト全開だったスーパーメテオ650に比べると、随分とスリムでスポーティにキャラクター変更した感がある。
細かく見ていくと、フロントフォークの全長を30mm短縮したり、フォークオフセットを変更してステアリングステムを新調したりと、結構手が加えられている。最低地上高までアップしていることもあって、クルーザー的な雰囲気は完全に払拭されている。
実際に走らせてみてもその印象は変わらない。クルーザーによくあるような、どっしりとした安定感のある走りではなく、思いのほか車体の動きは軽快。むしろ交差点やワインディングではヒラヒラと寝かしていけるスポーティな味付けになっていることに驚かされたくらいだ。
そんな軽快なコーナリング性能に身を任せていると、ついついスロットルも大きく開けたくなるのだが、並列2気筒エンジンもなかなか味わい深い。
コンチネンタルGT650、INT650、スーパーメテオ650にも搭載されるこの270度クランクのパラレルツインは、クランクの慣性マスがやや重めな印象。決して高回転側がよく伸びるようなエンジンではないのだが、その分中低速域でのトルクは太めで、270度パラツインらしいエンジンパルスがしっかり味わえるようになっている。
そんなテイスティなエンジンと程よい軽快感のある車体の組み合わせのおかげで、ついついスロットルを開けたくなる……というワケなのだが、バンク角は意外と少なく、コーナーの脱出で気持ちよくスロットルを開けたところで、ステップのバンクセンサーが“ガガッ!”と路面に接触。決してコーナーを攻めるタイプのキャラクターではないことはわかっているのだが、ついついスロットルを開けたくなる楽しさがこのショットガン650にはあるのだ。
クルーザーであるスーパーメテオ650をベースとしているものの、ミッドコントロールでそのキャラクターはややスポーツ寄り。
【TESTER 谷田貝 洋暁】初心者向けバイク雑誌の編集長を経てフリー化したライター。“無理”、“無茶”、“無謀”の3無い運動を信条としており、本誌ではガチテストやオフロード系の“土モノ”を担当することが多い。
選べる後部シート仕様で幅広いユーザーをショット!
そんなショットガン650に乗っていると、ついつい頭の中で比較してしまう車両があることに気がついた。ハーレーダビッドソンの空冷時代のスポーツスターシリーズにカワサキのW800といった車両たちだ。
特に交差点やワインディングで右へ左へヒラヒラとマシンを寝かせていると、883のスポーツスターのフィーリングがちょくちょく頭をよぎる。ミッドコントロールのフットペグにやや前傾する上半身といったポジション設定が空冷スポーツスターのそれとよく似ているのだ。ハンドリングに関しても、空冷スポーツスターはフロント19インチ、ショットガン650はフロント18インチなのだが、適度な軽快感があるあたりは非常に似通うところがある。
現代のハーレーダビッドソンのスポーツスターシリーズは排気量アップ&水冷化したことで随分雰囲気が変わったが、空冷時代のスポーツスターのキャラクターが好みであれば、このショットガン650のキャラクターがばっちりハマるに違いない。トラディショナルな“空冷エンジン”のテイストもショットガン650ならしっかり味わえる。
ひらひらと舞うような軽快感があるショットガン650。INT650やコンチネンタルGTといった同系エンジンを積むモデルに比べても中低速での軽快感が際立っている。
その一方で、このショットガン650はカスタムベース車として相当なこだわりが詰め込まれている。
今回のショットガン650試乗会では、インド本社の開発陣によるオンラインでのブリーフィングも行われたのだが、その説明はデザインとカスタムベースとしての可能性の高さに終始。こだわりのハンドル回りの造形や、エンジンガードなど純正アクセサリーパーツの豊富さなども説明されたが、白眉はなんと言ってもボルトオン構造でステーごと簡単に取り外すことができるパッセンジャーシートだろう。
試乗車には、わざわざシングルシート仕様とダブルシート仕様が用意されていたのだが、言われなければ“最初からそういう仕様のバイク”と勘違いしてしまうほど完成度が高い。元々付いているパッセンジャーシートやステーを外せばベースプレートや取り付け穴といったシングルシート化の痕跡は何かしら残りそうなものだ。だが、ショットガン650にはそれがいっさい残らないのである。あえて書くとすればそうだとわかる痕跡はタンデムステップの取り付け穴くらい。ここまで完成度が高ければ、“購入時からシングルシート仕様化して乗りたい”なんていうライダーも多いのではなかろうか?
いずれにせよ、どちらか一方でなく、選べるということはユーザーにとっては嬉しいこと。少なくとも空冷スポーツスターのシングルシート仕様に二の足を踏んだライダーにはこの“選べるシングルシート仕様”はとても魅力的に映るはずだ。
795mmと800mmを切るシート高数値だが、踵が数cm浮く足着き性。ミッドコントロールのステップポジションと、やや前傾する上半身のポジションが程よいスポーティキャラクターを醸し出している。純然たるクラシックでもスポーツでもないところがちょうどいい。【身長172cm/体重75kg】
ショットガン650/スーパーメテオ650のスペックを比較
| 車種 | SHOTGUN 650 | SUPER METEOR 650 (STD) |
| 全長×全幅×全高 | 2200×820×1105mm | 2300×890×1155mm |
| 最低地上高 | 140mm | 135mm |
| 軸距 | 1465mm | 1500mm |
| キャスター&トレール | 25.3°/101.4mm | 27.6°/118.5mm |
| シート高 | 795mm | 740mm |
| 車重 | 240kg | 241kg |
| 排気量 | 648cc | ← |
| エンジン種類 | 空冷4ストローク 並列2気筒SOHC4バルブ | ← |
| クランクレイアウト | 270度 | ← |
| ボア×ストローク | 78×67.8mm | ← |
| 最高出力 | 47ps/7250rpm | ← |
| 最大トルク | 5.3kg-m/5650rpm | ← |
| 燃料タンク容量 | 13.8L(ハイオク) | 15.7L(ハイオク) |
| ブレーキ前 | φ320mmディスク | ← |
| ブレーキ後 | φ300mmディスク | ← |
| タイヤサイズ前 | 100/90-18 | 100/90-19 |
| タイヤサイズ後 | 150/70R17 | 150/80-16 |
| 価格 | 97万4600円~101万5300円 | 97万9000円~103万9500円 |
ベースモデルはクルーザーの
スーパーメテオ650
エンジン&メインフレームといった部分はクルーザースタイルのスーパーメテオ650と共用。ホイールの18 インチ化やフォーク角変更、ミッドコントロールのフットポジションを採用。空冷時代のスポーツスター的な位置付けか?
ROYAL ENFIELD SHOTGUN 650
本来、つるしの販売状態はダブルシート仕様だが、シングルシートの方がデザイン的な完成度が高い。サイドカバーを囲うようにレイアウトされたフレームは、50年以上のロングセラーで“新車で買える旧車”と云われた先代のブリットシリーズへのオマージュだ。
【カラーバリエーション】左から Drill Green(99万5000円)、Plasma Blue(99万5000円)、Sheet Metal Grey(97万4600円)
ショットガンの名前に相応しく、上から見るとサイレンサーが末広がりに伸びている。センタースタンドもあり、バンク角はそれほど深くない。
シングルシート化も簡単!
カスタムベース車としてしっかり作り込まれているショットガン650。パッセンジャーシートはベース含めてボルトオン構造となっており、タンデムステップも外してしまえば、完全なひとり乗り仕様となる(試乗テストはシングルシート仕様で実施)。カスタム目的でショットガン650を選び、パッセンジャーシートを絶対に取り付けないのであれば購入時に一人乗り登録してしまった方が車検時に煩わしくなくていいだろう。
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