3気筒×前後片持ちなんていう異端のマシンも

異端のエルフ、最後の2ストVツイン、最初のMotoGPレーサーに昂ぶる‼ “二輪世界グランプリ Garage Collection”

モビリティリゾートもてぎ内のホンダコレクションホールでは、2023年7月22日からMotoGP日本グランプリの決勝レース日となる10月1日まで、「二輪世界グランプリ Garage Collection」を開催している。今回はその特別展示の中から、elf2/5、RS250RW、RC211Vを紹介しよう。


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:ホンダコレクションホール

前後片持ち式を採用したフランス製レーサー

1985~1988年の世界GP500で大きな注目を集めたelf2~5は、フランスの巨大石油企業であるelfの支援を受け、と言うよりelfの意向に従う形で、フランス人のセルジュ・ロセ率いるROC:Racing Organisation Courseが製作したレーサー。2と3はNS500用のV型3気筒、4と5はNSR500用のV型4気筒を搭載していた。1986~1988年のエースライダーは、1982~1985年にホンダブリテンと契約してNR500/NS500/NSR500を走らせていたロン・ハスラム。

1986 elf2

1986年のelfの主力は3(取材時のコレクションホールでは一般スペースに展示)だったが、開幕戦では2の発展仕様もテスト。前後ホイールには使い込まれた感があるものの、このマシンは実戦を走っていない。

構造的にセパレート式が装着できなかったため、ハンドルはバー式を選択。3本のワイヤーが接続されるスロットルホルダーは、NS500用V型3気筒を搭載する証。

フロントのダブルスイングアームは初期のelfの特徴。フロントブレーキはカーボン製シングルディスク+対向式4ピストンキャリパー×2。

1988 elf5 ロン・ハスラム

elf2以前のフロントサスが4輪のダブルウィッシュボーン的だったのに対して、3以降はマクファーソンストラットを思わせる構成。パッと見ではシングルに見えるが、フロントブレーキは強引な手法でダブルディスク化。

フロントサス用と操舵用のブラケットが配置されたステアリングまわりは、かなり複雑な構成。ハンドルはセパレート式だが、フォークにクランプする通常のタイプではない。

前後ホイールを片持ち式とするのはelfシリーズ全モデルに共通。リアの構造は、VFR/RVFシリーズが採用するプロアームの規範になった。

有終の美を飾ったRS250RW

2001年で第一線から退いたNSR250に代わって、以後の世界GP250でホンダの主役を務めたのは、市販レーサーRS250Rのワークス仕様となるRS250RW。そして2004/2005年はホンダワークス系チームのダニ・ペドロサがシリーズを制したものの、2007年でRS250RWの実質的な開発は終了。にも関わらず、世界GP250最終年となった2009年は、圧倒的なパワーを誇るアプリリア勢を抑えて、堅実にして老獪な走りの青山博一+RS250RWがチャンピオンを獲得した。

2007 RS250RW(NJBJ) アンドレア・ドビツィオーゾ

最終型NSR250のエンジンが2軸110度Vツインだったのに対して、RS250RWはRS250Rと共通にして先祖返りと言うべき1軸75度Vツインを搭載。ただし、アンドレア・ドビツィオーゾがシリーズランキング2位を獲得した2006/2007年型の最高出力は、100ps前後に到達していた。

2009 RS250RW(NJBK) 青山博一

2009年に青山博一が駆ったRS250RWは、2008年にスコットレーシングに在籍した高橋裕紀が使用した車両で、基本構成は2007年型と同様だった模様。それで全17戦中6勝を挙げて王座を獲得したのだから、とてつもない偉業である。

圧倒的な強さを誇ったRC211V

2002年以降のロードレース世界選手権の最高峰クラスは、2スト500ccが主役のGP500から、4スト990ccがメインのMotoGPに変更。そして当初のMotoGPでダントツの強さを発揮したのが、オフロード車を意識して開発したシャシーに、過去に前例がないV型5気筒エンジン(最高出力は220ps以上)を搭載する、RC211Vだった。中でも、ディフェンディングチャンピオンとしてMotoGPに臨んだバレンティーノ・ロッシ+RC211Vの速さは圧倒的で、2002年は全16戦中11勝、2003年は全16戦9勝を挙げ、2年連続(2001年を含めると3年連続)で王座を獲得。

2001 RC211V プロトタイプ

2001年の鈴鹿8耐予選日にミック・ドゥーハンがデモランを行い、鈴鹿8耐後にバレンティーノ・ロッシや宇川 徹、コーリン・エドワーズがテストしたRC211Vのプロトタイプ。意外なことに、ワークスレーサー特有の手作り感は希薄で、各部の仕上がりは量産車を思わせる雰囲気。

2002 RC211V(NV5A) バレンティーノ・ロッシ

形式は既存のホンダ製GPマシンと同じアルミツインチューブだが、RC211Vのフレームは2001年型NSR500と比較すると、ねじれ剛性がかなり高く、横剛性はやや低く設定されていた。リアサスはフレームから独立したユニットプロリンク式。

2005 RC211V(NV5D) 玉田 誠

2003~2006年のMotoGPには、玉田 誠がRC211Vでフル参戦。2004年の活躍(2度の優勝を飾り、シリーズランキング6位を獲得)が認められ、2005/2006年はコニカミノルタがメインスポンサーに就任。

二輪世界グランプリ Garage Collection 開催概要

開催日時2023年7/22(土)~10/1(日)
開催場所ホンダコレクションホール 2階・3階中央エリア(モビリティリゾートもてぎ内)
開館時間9:30~18:00(季節や曜日によって異なる場合があります)
料金無料(モビリティリゾートもてぎの入場料・駐車料は別途かかります)
 

モビリティリゾートもてぎ ■〒321-3597 栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1 ■Tel: 0285-64-0001(代表)

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