’80年代を通じて過熱し続けたレーサーレプリカブーム。このスペック至上主義の時代には、わずか1馬力の差がマシンの命運を分けることもままあった。本記事では、ワークスマシンを思わせる銀色の極太フレームが特徴的なヤマハFZR400を取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
現行R1まで続く可変排気バルブ”EXUP”初搭載〈ヤマハ FZR400〉
ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。
’86年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ750やFZ250フェーザーと同様、GENESIS(ジェネシス)と呼ばれる開発思想を採用。「創世記」を意味し、エンジンから車体まで全てをトータル性能のために集約して設計するという、当時では革新的な手法だった。
45度に前傾した水冷直4エンジンは、5バルブの採用こそ見送られたが、FZ400Rとはボア×ストロークの異なる専用設計ユニットを獲得。キャブレターはダウンドラフト型で、デジタル点火方式と合わせてパワフルかつスムーズな特性が与えられている。
極めつけは銀色に輝く極太のアルミフレーム。TZR250と同様のアルミデルタボックス構造を採用するが、太さはまるで違い、まさにワークスレーサーの趣を湛えていた。さらに樹脂カバーで覆われた燃料タンクや、前後ラジアルタイヤ、小ぶりなタンデムシートもサーキット走行を重視したスパルタンな性格を表している。
その戦闘力は高く、’88年に国際F3のタイトルを奪還。8耐で平忠彦が駆ったFZR750の姿にFZRを重ねるライダーも多かった。以降もモデルチェンジを繰り返し、事実上の最終型である’90まで進化を続けた。
ヤマハ FZR400の系譜
’87 ヤマハ FZR400R
限定車として投入された「R」バージョンは、低速トルクを補うEXUP(エグザップ)を市販車初採用。クロスミッションやアルミ製タンクカバーも備えた。販売マニュアルにはライセンス取得者やベテランに勧めるよう記されていた。
’88 ヤマハ FZR400
’89 ヤマハ FZR400
’90 ヤマハ FZR400RR
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