トライアンフは2月8日、電動スポーツバイク『TE-1』のプロトタイプが、フェーズ4となる実車試験段階へ移行することを明らかにした。今後6カ月にわたってトライアンフが所有する最先端施設でのテストが行われ、今年夏に予定されているサーキットでのデモンストレーション走行とメディア公開に向けた最終開発が進んでいる。
●文: 山下剛 ●外部リンク: Triumph モーターサイクル
トライアンフを中心とした5企業と政府機関が開発を進める電動スポーツバイク
このたび公開されたTE-1は、近代トライアンフのアイコンともいえる2灯式ヘッドライトを備え、マッシブなボディラインを特徴とするスポーツネイキッド、あるいはストリートファイターだ。
その姿はスピードトリプルを思わせるが、これまでのトライアンフともっとも違うのは、バッテリーとモーターを搭載した電動スポーツバイクであることだ。そしてこの電動バイク開発はトライアンフにとって初めての挑戦であると同時に、イギリスの威信をかけた一大プロジェクトでもある。
TE-1プロジェクトは、トライアンフをプロジェクトのまとめ役とし、
『ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング』(バッテリー)
『インテグラル・パワートレイン』(モーターとインバーター)
『ウォーリック大学』(コントロールユニット開発、電動バイクのマーケティング調査)
『イノベートUK』(資金調達)
『OZEV』(イギリス運輸省下部組織のゼロ・エミッション車局)
と、イギリス国内の5企業に政府機関を加えた複合体によって進められている。
プロジェクトは明確な3点の目標を掲げ、TE-1はこれらの実現に向けて順調に開発が進んでいるという。
- 排出量削減を掲げる英国の方針に沿い、環境への影響が少ない乗り物を求める顧客ニーズに合った電動バイクを開発する
- 英国内のメーカーおよびサプライチェーンとの間で、商業的に実行可能で持続可能かつ強固なパートナーシップを確立する
- 専門的な知識や技術を英国内で構築することで将来につながる雇用と人材を創出し、英国の力を世界に示す
計画は2年という短期で技術開発と性能向上を目標に掲げて進められ、最終段階といえるフェーズ4に入った。トライアンフによれば、フェーズ4では、このプロトタイプ車の開発をさらに押し進めるとともに、参画組織の最先端技術をトライアンフの知識と技術で最終的にひとつにまとめ上げ、トライアンフの電動化戦略の柱となるような結果を得ることを目指すという。
OZEVのR&D責任者、ジョン・ブレイ氏はこうコメントしている。
「ゼロエミッション車の設計、製造、使用において英国が世界をリードするためには研究開発への投資が不可欠です。我々はゼロエミッション車関連の技術をサポートすることによって、道路交通で発生する二酸化炭素排出量をゼロに近づけることに加え、英国全土の経済活動の安定化を図り、パンデミック後の『グリーンリカバリー』を促進することを目指しています」
モーターを開発したインテグラル・パワートレインのEドライブ部門によれば、搭載されるモーターとインバーター(モーター制御装置)は統合された構造のためそれぞれを接続するケーブルや端子を持たない。また、冷却装置も不要のため、非常にコンパクトに設計されている。また、拡張性に優れた設計であることも特徴だという。
TE-1の車重や出力、フル充電時間や航続距離などについては詳細が明らかにされていないが、モーターのピークパワー密度は13kW/kg、連続パワー密度は9kW/kgとしている。パワー密度とは、力を生み出す物体(この場合はモーター)の体積当たりの出力を示す単位で、イギリスのAPC(脱炭素化モビリティの発展進化のため資金提供機構)が定めたロードマップの2025年目標値を約60%上回っている。
駆動方式にはベルトドライブが採用されており、回生ブレーキやABS、トラクションコントロールといった電子制御技術も専用で開発が進められたという。
また、車両の開発と同時にウォーリック大学は、電動バイク用充電ネットワークの構築、イギリス国内でのリサイクルやバッテリーサプライチェーンの必要性の調査を行った。さらにトライアンフが将来的に電動バイクを設計、開発、製造、販売するための方向性をリサーチしている。
今夏に公開予定という最終バージョンのTE-1が、どのような走行性能を身につけて登場るのか。次世代のスポーツバイクの在り方を占う重要な場面となりそうだ。
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