前回レポートでは、’21年度1回目の埼玉県南部地域での講習会と新たに改善された点について紹介した。今回も引き続き、埼玉県教育委員会(以降、県教委)主催による「令和3年度高校生の自動二輪車等の交通安全講習」の模様をお届けしつつ、気になった点を2つ書き記したい。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
代替講習の多くが中止に
まずは、新型コロナ禍における本講習への取組みと代替講習における課題について。第2回(8月2日・県西部)、第3回(8月9日・県東部)、第4回(8月23日・県北部)と、延期や中止になることもなく本講習は順調に続いている。こうした姿勢について、県教委は「命を守るための大事な講習として開催する」という意義を開講式で必ず説明している。しかし一方で、本講習を受けられなかった生徒が代替講習として受けられるグッドライダーミーティング埼玉などの講習会は中止となるケースが目立っている。
新型コロナ禍において、感染対策としても生活の足であるバイク活用が見直されていることを考えれば、判を押したように中止とすることには疑問だ。感染対策をした上で講習会を開催し、日々の生活でバイクを安全に利用してもらうことは、経験の少ない高校生にとってはとても大切で、重要な視点ではないだろうか。
また、第2回県西部講習/第3回県東部講習はそれぞれ天候不良に見舞われた。西部講習の午後組みでは運転講習中に雨が降り出して講習時間を短縮、東部講習では早朝から降り続いていた雨が止まず、運転講習はまるまるカットせざるを得なかった。こうした場合は、運転講習を通して知る、気付くべきポイントに関して座学の中で教わることになるが、個人としての運転アドバイスをもらうといったことは当然できない。新型コロナウイルスのパンデミック収束が不透明な状況のなか、代替手段となる講習会が中止となるのであれば、これに代わる学びの機会、場づくりも検討すべきなのかもしれない。
現場を保護者に見てほしい
もうひとつ気になった点は、本講習に関する情報発信をもう少し積極的にすべきではないかという点だ。県教委主催ということで、何の心配もなく粛々と行われている感じを受けるが、県内各地域で年に1回しか行われない講習であり、もったいない。埼玉県二輪車普及安全協会/埼玉県交通安全協会/埼玉県警察本部/埼玉県高等学校安全教育研究会/埼玉県交通安全対策協議会といった、そうそうたる関係団体が協力/サポートしており、その講習内容は高校生向けとしては国内トップレベルにあることは疑いようがない。
三ない運動は、もともと”我が子を思う親心”から生まれたものだ。三ない運動から交通安全教育に転換する過程において検討委員会でも議論されたように、「バイクで死なせたくない」という思いを受け継いでいる本講習は、教育現場に留まらず、もっとリアルタイムかつオープンに保護者や家庭に届けていくべきではないか。バイクに乗っていれば交通事故で死亡する生徒も出るかもしれない。それでも、そうならないために全力を尽くしている。そうした教育現場の姿を届け、保護者も講習の現場に訪れるような、そんな開かれた学びの場であってほしい。本講習を見続けて、新型コロナ禍で閉塞的な今だからこそ、現場に立って、より感じるのだ。
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