ホンダは、HRC(ホンダレーシング)の契約ライダーで、2004年にはFIMトライアル世界選手権で日本人として史上唯一のチャンピオンを獲得した藤波貴久選手が、今シーズン限りで引退することを発表した。
●外部リンク: ホンダレーシング
全モータースポーツでただひとり、最高峰クラスの王者になった日本人
41歳の生ける伝説が引退する……! 二輪/四輪を問わず、トップカテゴリーと言われる世界選手権の最高峰クラス(または無差別クラス)で年間チャンピオンを獲得した唯一の日本人であり、2021年開幕戦イタリアGPでは5年ぶりの優勝をもぎ取っていた藤波貴久選手が、世界選手権における26年間のキャリアに終止符を打つことが発表された。
スロットルを豪快に開けるスタイルから“フジガス”の愛称を付けられた藤波貴久選手は、1980年三重県生まれの41歳。3歳からモトクロスを始め、自転車トライアルなども経験した後、1993年には13歳で全日本トライアル選手権に参戦し、1995年には最年少の15歳でタイトルを獲得している。
1996年からは世界選手権に参戦を開始。1997年のドイツ大会では史上最年少の17歳237日で初優勝を果たし、翌1998年には世界選手権ランキング5位を獲得すると、1999年から2003年まで5年連続で世界選手権ランキング2位を獲得し続け、2004年にはついに日本人初となるチャンピオンに輝いたのだ。
その後も2017年まで21年連続でランキングトップ5入りという大記録を樹立してきただけでなく、今シーズンは開幕戦イタリア大会の2日目に、自身5年ぶりの優勝を41歳151日の最年長優勝記録で飾っている。今週末に開催されるポルトガル大会が、藤波選手にとっての通算355戦目であり、最後のトライアル世界選手権への参戦となる。
当WEBサイトでコラムを連載する、1993年ロードレース世界選手権(WGP)250ccクラスチャンピオンの原田哲也さんをして、「日本人でバイクに乗るのが一番うまいのは藤波選手」と言わしめるレジェンドは、乗りなれないはずのモトGPマシンRC213Vに試乗したとき、すぐにいいペース走って周囲を驚かせるなど、超越的なテクニックを持っている。
また、明るい性格と温かいファンサービスでも知られ、ヤングマシン誌の企画で原田哲也さんと読者が日本GPを訪ねた際にも、笑顔で写真に収まり、表彰式の合い間にも応対するなどして、その人柄をうかがわせた。
歴代チームメイトには、一時代を築いたドギー・ランプキン選手や、14年連続でインドア&アウトドアの世界タイトルを28個も獲得中(2021年シーズンもアウトドア15連覇が目前)のトニー・ボウ選手がおり、これら最強すぎるライダーたちとしのぎを削りながらのチャンピオン獲得は、今も色あせない金字塔といえるだろう。
ちなみに1996年のトライアル世界選手権初参戦から、チャンピオン1回(2004年)、ランキング2位×7回、ランキング3位×7回、ランキング4位×1回、ランキング5位×6回、ランキング6位×1回、ランキング7位×2回の堂々たる成績。そして今シーズンは最終戦を残してランキング5位につけている。
本当に、夢と感動をありがとう! としか言えない。2021トライアル世界選手権最終戦Rd.6 ポルトガルGPは、2021年9月18日に開幕する。我々も心から応援したい。
レプソル・ホンダ・チーム 藤波 貴久選手
「26年間、トライアル世界選手権で戦い続け、今こそキャリアに幕を閉じる時が来たと確信しています。長きに渡り応援してくださった人たちのおかげで、トライアルのプロとして戦うことができ、25年以上にわたって想像を超える戦績を残すことができました。ありがとうございます。
とても幸せな26年間でした。最初からサポートしてくれた家族、チームスタッフ、HondaならびにHRC、そしてスポンサーの皆様にも感謝しております。また、ずっと応援してくれたファンの一人一人にありがとう、と伝えたいと思います。
16歳の時にHRCとMontesa-Hondaが世界選手権に参戦するバイクを提供してくれて以来、最後までプライドを持ってチームとともに戦うことができました。世界選手権にデビューした時の観客の応援と拍手を今でも鮮明に覚えています。初優勝のドイツ戦、その後の苦しく難しい数年間、そして2004年にチャンピオンシップを獲得した時の喜び、どれも昔のことですが、自分にとっては一生の宝です。特に思い出深いのは2000年から始まったツインリンクもてぎでの大会で、毎年とても情熱的なファンの皆さんが応援に来てくれました。本当にありがとうございました。
これからどうするかは、まだ分かりません。ライダーを引退してからどうするかまだ決めていませんが、何らかの形でトライアルに関わり続けようと思います。新たな人生も、きっと全てうまくいくと信じています」
株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 若林 慎也氏
「藤波貴久選手、トライアル世界選手権における26年間の選手生活お疲れ様でした。長年にわたりトライアル世界選手権の最高峰クラスで、常にHondaの代表、日本の代表としてトップレベルで戦い続け、輝かしい戦績を残してくれた藤波選手には感謝の言葉しかありません。世界の頂点で闘い続けるために、常に自分と向き合い人並み以上の努力を積み重ねてきたことと思います。またけがによって自分のパフォーマンスを発揮できずに、苦しんだことが何度もあったことも知っています。彼が世界中の誰よりもトライアルが好きだからこそ、逆境を跳ね除けて長年にわたり戦い続けられたのだと思います。最後になりましたが、これまで藤波選手のレース活動を支えてくれたチームスタッフ、ご支援いただいた多くのスポンサー様、藤波選手を応援し続けていただいたファンの皆様、全ての皆さまに感謝申し上げます」
藤波貴久のプロフィール
生年月日: 1980年1月13日(41歳)
出身地: 日本(三重県)
トライアル世界選手権での記録
出場数:354戦(歴代1位)
優勝回数:34勝(歴代5位)
累計獲得ポイント:4722ポイント(歴代1位)
最年少優勝記録:17歳237日
最年長優勝記録:41歳151日(2021年9月15日現在)
主な戦歴
1993年 全日本トライアル選手権 国際B級に参戦 2位
1994年 全日本トライアル選手権 国際A級に昇格 2位
1995年 全日本トライアル選手権 国際A級 チャンピオン
1996年 トライアル世界選手権に初参戦 7位
/全日本トライアル選手権 国際A級 6位
1997年 トライアル世界選手権 5位
/全日本トライアル選手権 国際A級 4位
1998年 トライアル世界選手権 4位
/全日本トライアル選手権 IAS チャンピオン
1999年 トライアル世界選手権 2位
/全日本トライアル選手権 IAS チャンピオン
2000年 トライアル世界選手権 2位
/全日本トライアル選手権 IAS チャンピオン
2001年 トライアル世界選手権 2位
/全日本トライアル選手権 IAS チャンピオン
2002年 トライアル世界選手権 2位
/全日本トライアル選手権 IAS 5位
2003年 トライアル世界選手権 2位
2004年 トライアル世界選手権 チャンピオン
2005年 トライアル世界選手権 2位
2006年 トライアル世界選手権 2位
2007年 トライアル世界選手権 3位
2008年 トライアル世界選手権 3位
2009年 トライアル世界選手権 3位
2010年 トライアル世界選手権 3位
2011年 トライアル世界選手権 3位
2012年 トライアル世界選手権 5位
2013年 トライアル世界選手権 5位
2014年 トライアル世界選手権 5位
2015年 トライアル世界選手権 5位
2016年 トライアル世界選手権 3位
2017年 トライアル世界選手権 5位
2018年 トライアル世界選手権 6位
2019年 トライアル世界選手権 3位
2020年 トライアル世界選手権 7位
2021年 トライアル世界選手権 5位(2021年9月15日現在)
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