新たなる伝説の誕生

スズキ「シン・ハヤブサ」完全解説【プロローグ:満を持して超熟成進化型”ハヤブサ3”発射!!】


●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●情報提供:スズキ

“新”にして”進”、さらには”深”や”真”。地上最速の翼を持つ猛禽が究極形態と化し、いま舞い降りる…。日欧での生産終了から2年、世界中のライダーが注目する中、第3世代「隼(ハヤブサ)」が満を持して発売された。

すべてを試し、あえて変えない英断から次の伝説が生まれた

熱量。むせ返るほどの凄まじい意地と執念と自信が、13年ぶりに全面刷新したこの1台に渦巻いている。開発者が次々と登場する動画を見ればわかる。彼らは、自らの苦労と成し遂げた成果を誇らしげに語るのだ…。

隼の魅力は数多い。俊敏なコーナリング性能と300km/hに迫る超高速域でのスタビリティの両立、豪快極まりないパワーフィール、唯一無二の有機的フォルムetc…。語るべき点が多い、破格の1台だ。

どこを磨き、据え置くか。取捨選択の困難さは想像を絶するが、スズキは実に勇気ある決断を下した。コンセプトは”アルティメットスポーツ”を継続。スタイルに関しては、”隼らしさ”を保ちつつ洗練し、さらなる空力性能の向上も果たした。万人がその進化をわかりやすく享受できる。

問題は中身だ。10年にわたり、ターボ/6気筒/大排気量化とあらゆるエンジンを隼に試した。フレームや各部も変更し、呆れるほどテストを繰り返した。時には社長自ら…。その結果導き出したのは、”先代の1340cc直4&車体という基本は変えない”こと。

すべてを試し、あえて”変えない”。前代未聞の大胆さだが、スズキは隼の本質を賢明に見抜いた。その上で、心臓部は全部品の見直しと電子制御でリファインし、最新の排ガス規制にも対応している。名作/傑作の改良に付きまとうジレンマに対し、新たな指標を第3世代の隼は提示したのだ。

その慧眼は最高出力にも表れている。従来型から7psダウンの190ps(輸出仕様)――。しかし、これは低中速域のトルクを増強した結果であり、実質的な速さは初代/2代目を凌駕する。さらにエンジンで重視したのは”耐久性”。先代と同様に見える部品も加工法を変え、ボルトの締め方まで検討した。

虚飾を廃し、実直に真面目に、ユーザー第一主義のマシンをつくり上げる。マーケティング的には”完全新設計”や威勢よく”200ps超!”などの惹句が踊った方が成功するのでは? と邪推してしまうが、勇気をもってスズキらしさ、隼らしさを貫いた。

日欧では2年前に販売終了したまま、ライダーはひたすら登場を待たされた格好だが、隼に懸ける開発陣の圧倒的な熱量を見れば、それも許せてしまう。骨の髄までスズキのスピリッツが結晶化したシン・ハヤブサ。その詳細を次ページから紐解いてゆく。

納得するまで市販化しない。その結果、エンジン内部パーツはほぼ全て手を入れるに至った。登場こそ遅れたが、スズキが持てる最高の技術とパッションを注いだ作品が世に放たれる。


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